作品タイトル不明
420.王国と調査船団
「魔法学校、楽しかったなぁ……!」
報酬の受け取りも終わり、メイたちはいつもの港町ラフテリアに戻ってきた。
「メルーナも楽しそうだったわね」
「魔法学校を駆け回っていましたね」
魔法学校住人たちも新たなクエストの登場に、皆うれしそうにしていた。
魔法学校の闇と、復活の大魔法使い。
そんなクエストを見事に駆け抜けたメイたちの帰り際には、戦いを共にした住人たちが見送りに集まったほどだ。
クインフォード掲示板でも魔法学校特別版の広報誌を見ながら「メイちゃんたち、このまま住んでくれればいいのに!」という書き込みで盛り上がっていた。
「また来てくれー!」と乞われながら、クインフォード魔法学校をあとにした三人。
すっかり見慣れた港町を歩きながら、思い出話に花を咲かせる。
するとレンは不意に、通りがかったギルドの壁に貼られたイベント告知に目を留めた。
「そういえば……またイベントがあるって言っていたわね」
「イベント!」
「私も聞きました。ヤマト以来の対戦型イベントだとか」
「大型の対戦イベント。ちょっとどんな内容なのか見てみましょうか」
「さんせいですっ!」
三人はさっそく、ギルドの掲示板に貼られたイベント告知のビラに目を向ける。
「場所は西方のフロンテラ王国港。初めて聞く街ね」
「イベントの内容は……大型調査船団に参加して新大陸の発見。そして探査だそうです」
「フロンテラ王国で船に乗り込んで、現地でクエストをこなすって感じなのかしら」
「そのような流れで対戦になるのでしょうか」
「気になるところねぇ」
「調査船に乗り込んで皆で新大陸に向かうなんて、ワクワクしちゃうよ……っ」
メイは早くも尻尾をブンブンさせながら、新たな世界に思いをはせる。
ぴょんぴょんしてクルクルして「どんな冒険になるんだろう……っ」と楽しそうだ。
そしてそんなメイの表情を見てしまったら、ツバメはもちろんレンもつられないはずがない。
「ちょうどいいタイミングだし、このまま軽く見に行ってみましょうか」
「うんっ!」
さっそくレンとツバメの手を引き、駆け出すメイ。
そのまま元気よくラフテリアの中央通りを走り抜けたところで、急停止。
「どうしたの?」
「……どこに行けばいいんだっけ?」
勢いのままに走り出したメイ。
「てへへ」と、ちょっと恥ずかしそうに振り返る姿に、レンは思わず笑ってしまうのだった。
◆
ポータルによる移動で、メイたちは西方の王国フロンテラへ。
普段居ついている白壁の貿易港ラフテリアとはまた違い、そこは石積みの軍港といった雰囲気だ。
西洋の街並みを思わせる建物の並びの中心にあるのは、勇壮なフロンテラ城。
そして港へ出ると――。
「わあーっ! すごーい!!」
そこには、一面に広がるガレオン船の数々。
そして新たなイベントのオープニングに集まった、無数のプレイヤーたち。
港湾部分には見送りに集まった観客NPCも多く、これまでのイベントとは違った派手なスタートを切ることになりそうだ。
「新大陸への調査船に乗る冒険者の皆さんは、こちらになります!」
オープニングイベントに参加するプレイヤーたちは、ここで船に乗り込んで新大陸の調査団として派遣されるようだ。
王国兵NPCたちが道案内する先には、船へと続く木製のボーディングブリッジ。
『――――フロンテラ大調査船団イベントへ参加しますか』
ここでアナウンスメッセージが提示された。
「どうする? ここで決めなくても、しばらくの間は別枠からイベント参加できるみたいだけど……」
言いかけて、やめる。
すでにメイの目は「わあー!」とキラキラに輝いている。
「ふふ、聞くまでもなかったわね」
「そのようですね。私もせっかくなのでこのまま乗船して、オープニングに参加してみたいです」
三人はそのまま、大調査船団イベントへの参加を決定。
さっそくボーディングブリッジを使って、大型ガレオン船に乗り込んだ。
「マストだー!」
張られた大きな四本のマストは、その迫力でメイの心をわしづかみにする。
真っ白な帆布が陽光を弾く光景は、まぶしさに目を細めてしまうほどだ。
「せっかくだし、ちょっと登ってみちゃいましょうか」
レンもテンションは高め、ここでならマストに登っても怒られることはない。
「【浮遊】」
「私も行きます【壁走り】」
「【モンキークライム】!」
ツバメとメイもあとを追うようにマストを上がる。
「すごーい!」
メイはさっそく、あっちの船をキョロキョロ、こっちの船をキョロキョロ。
「ちゃんと少しずつ違うんだね! 20隻向こうの船はカッコいい色使いになってるよ!」
「ふふ、私にはそこまで遠くは見えないわね」
腕に抱き着いて「見て見てー!」とはしゃぐメイに、レンも楽しそうに笑う。
「レンさん、こういう時はメイさんが楽しんでいる姿を見るんです」
「それはそれでどうなのよ。また満足そうな顔しちゃって……」
居並ぶ船を見てワクワクするメイと、そんなメイを見て満足そうなツバメ。
二人の姿にくすくすと笑うレン。
「――――それではただ今より、フロンテラ大調査船団出航の式典を開始いたします!」
するとさっそく、新イベントのオープニングが始まった。