作品タイトル不明
419.中央塔最上層へ向かいます!
悪の大魔法使いを打倒し、広報誌が増刊されるほどの活躍を見せたメイたち。
今日の待ち合わせは、クインフォード魔法学校の中央塔前。
三人並んで、ホールへと足を進める。
魔法学校は賑わっていた。
同じローブを着て歩くパーティが、そこら中に見られる。
「メイちゃん! 悪の大魔法使い戦、最高だったぜ!」
さっそくメイたちの姿を見つけた魔法学校住人が手を振る。
「こちらこそ! ありがとうございましたっ!」
そして新規入学勢も、メイたちを見てささやき出す。
「メイちゃんだ……! かわいいー!」
「アサシンちゃんも小さくて可愛いなぁ……」
「お、おい、あれはもしや…………闇の大魔法使い殿か?」
「もしかして私のこと!?」
一人だけ反応が悪の大物を前にしているかのような感じで、思わず声を上げるレン。
異例の二冊連続刊行によって配布数を増やした広報誌は、文句なしの一番となった。
その上で圧倒的迫力を持った『ベルゼブブ』召喚の動画公開。
元気、最強、野生的なメイに誰もが歓喜の声を上げる中、レンには「ほう、ヤツが噂の……」といった手合いが怪しげな笑みを浮かべている。
増刊号の方は『闇の使徒』たちを始めとした『そっち』のプレイヤーたちにも、強烈な支持を得たようだ。
「メイ、レン! ツバメー!」
そんな中、メイたちを見つけてうれしそうな声を上げたのはメルーナ。
三人のもとに、飼い主を見つけた犬のような勢いで駆けてくる。
「忙しそうですね」
ツバメがそう言うと、メルーナは目を輝かせる。
「しばらくはのんびりかと思ったらー、また新しい展開が出てきたー!」
「へえ、どんな話なの?」
「魔法学校長には弟がいてー、かつてクインフォードのトップの座をかけて争ったんだ。その際、闇に落ちた弟はその強大な力を振るって『禁術』にも手を出して、多くの犠牲を出したみたいなんだよー」
「またダークな展開ねぇ」
「結局力におぼれた弟は敗れて、魔法監獄に収監されていたけど……仲間と共に脱獄したっていう話」
「それも面白くなりそうね」
「魔法学校住人たちもー、駆け回ってるところ。新たな危機が魔法学校に迫るシナリオが出てきたのもー、メイたちとの戦いがあったから。それに広報誌の影響で魔法学校に興味を持ってくれたプレイヤーがたくさん来てるー」
うれしそうなメルーナ。
それでなくても最高の雰囲気を持った魔法学校に、メイたちが来たことで面白さが際立った。
その魅力を余すことなく、最高の形で見せられれば人が集まるのも当然だろう。
「特に召喚クエストは誰でもできるしー、まだまだ未知の領域が大きいから大人気」
「そうなのね」
「みんな、レンのやり方をマネしてるー」
レン、白目をむく。
その召喚時の節回しや読み上げ方、ポーズなどは『基本にして最終形』のような扱いになっているようだ。
「そういえば……闇の使徒っていう人たちも来てたー」
「その人たちには会わないように、すぐに最上階へ行きましょう」
突然早足になったレンを先頭に、四人は並んで中央塔のエレベーターに乗る。
それは魔法石によって円盤状の足場を上下させる作りのもので、普段は選べない最上階のボタンを押すと、足場が上昇を始めた。
「そういえばー、錬金術教授だけが見つかってないことが話題になってるんだ」
「錬金術教授……すっかり忘れてた。消えたっていう話だったわね」
「新しく、消えた錬金術師を探せっていうクエストが出てきたんだよー」
「それなら旧研究塔の人形部屋を調べてみたらいいんじゃないかしら」
「あの隠し部屋のことー?」
「錬金術教授が何かしらの形で生存してるなら……人形に魂を移していたって形だと思うのよ」
「そういえば一つ、もぞもぞと動いた人形がありましたね」
「あった! ビックリしたからわたしも覚えてるよ!」
「別の素体に魂を移して復活っていうクエストになりそうじゃない?」
「すごいー、あとでさっそく調べてみるー!」
四人が新たなクエストについて話していると、エレベーターが最上階にたどり着いた。
「わあー! すごい眺めだよーっ!」
さっそく尻尾をブンブンさせながら、遠くを眺めるメイ。
「本当ねぇ」
「これは見事です」
屋根だけで窓のない作りの部屋は、遥か遠くまで一望できる。
木々や湖、遠く並ぶ山々。
青空を飛んでいく鳥たちと、広がる雄大な光景には思わず目を見張る。
毛足の長い絨毯に、瀟洒な木製のデスク。
そんな最上階で待っていたのは、魔法学校長だ。
「よくぞ来てくれたな……我が校が誇る英雄たちよ」
いつもの穏やかな笑みで、メイたちを迎え入れる。
「君たちのおかげでクインフォードは、世界は、未曽有の危機を脱することができた」
その言葉にレンは「弟さんがもう魔法学校に攻めてきてるみたいよ」と苦笑い。
「その勇敢さ、優秀さを評して。お礼の品を贈らせてもらいたい」
学校長が手を上げると、煙と共に現れる三つの宝箱。
「ありがとうございますっ!」
そして四つ目。
最後の一つを持ってきたのは、青バラのリリーネだった。
「私からも、お礼をさせていただきます」
「最後には青バラ嬢まで……うれしいー」
歓喜に目を輝かせるメルーナと共に、さっそくメイたちは中身を確かめる。
【ペネトレーション】:魔法がオブジェクトやモンスター、プレイヤーを突き抜けて後方にも判定を伸ばす。
「青バラのスキル! これが使えるようになるのはうれしいわね……!」
「おおーっ! レンちゃんのゼロ距離魔法ってどうなるのかな?」
「それも試す価値ありね!」
【境界死線】:HPが瀕死に近いほど攻撃力を上げる短剣。二刀流時にはもう一方の武器にも効果を付属する。攻撃力50
「いいじゃない、戦闘時の攻勢を強化してくれそう!」
「これはワクワクします」
「カッコいい武器だーっ!」
そして最後はメイ。
【使い魔の鈴】:動物や魔獣を一体だけ、使い魔として常滞させることができる。成功率、成長率は仲の良さによって変動する。
「おおーっ!」
「従魔使いとは違った感じなのかしら。でも面白そうね!」
「はい、これは楽しくなりそうです!」
見ればメルーナも水系の上級魔法を手に入れたらしく、さっそく説明文を読み込んでいる。
一定量の水を、様々な形状に変えて撃てるというスキルの特殊性に早くも夢中だ。
楽しい時間に、四人わいわいと盛り上がる。
「……これからもその卓越した才能を研鑽し、世界に羽ばたく魔導士となるのじゃぞ」
そんなメイたちを前に、満足したような笑みを浮かべる魔法学校長。
「――――此度の戦い、実に見事じゃった! クインフォード魔法学校が誇る、勇敢にして優秀な生徒たちよ!」
最後は古木製の長杖を掲げて、物語の終わりを告げる。
「……い、一応、ローブ着ておいてよかったわね」
絶対に固定であっただろう学校長の決めゼリフ。
しっかりと『生徒たち』の状態で終えられたことに、レンは安堵の笑みを見せたのだった。