軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

414.悪の大魔法使い

「いよいよだね……っ!」

メイはドキドキに尻尾をブンブンさせながら、大ホールへと向かう。

高く広い半球体の天井には、一面のステンドグラス。

「本当に魔法学校は、雰囲気あるわねぇ……」

「すごいー」

魔法灯が作り出すどこか妖しい雰囲気は、クインフォードの最後の戦いを飾るにふさわしい。

「くっ」

突然、青バラのリリーネが体勢を崩した。

そのままホールの出入り口前に座り込んでしまう。

「少し、力を使い過ぎてしまったようです」

「最後の戦いは、プレイヤーだけでってことかしら」

「前哨戦を助けてくれたということは……」

「プレイヤーに色々温存させておきたいくらいの相手なんでしょうね」

オーブル戦で見事な戦いぶりをみせたリリーネは、ここで離脱。

攻略組が広いホールへ足を進めると、中心には鈍く輝く魔法陣。

そしてその真ん中には豪奢なイスと、封印の紋様が描かれたオルゴールのような箱。

近づくと紋様がほどけ出し、厳重に閉じられていた箱がフタを開いた。

「「「ッ!?」」」

解き放たれた大量の黒煙が荒れ狂い、付近を駆けめぐる。

思わず足を引き、息を飲む攻略組。

黒い魔力の奔流はやがて、イスに腰かけていた『素体』に収束し……爆発。

雷鳴のような音と共に、暴風が吹き荒れる。

「……ほう」

聞こえてきたのは、低く重たい声。

「悪くない……この身体であれば我が力を存分に発揮できそうだ」

静かに立ち上がったのは、男女どちらともとれる姿の青年。

背は高く、揺れる白髪は肩にかかるほど。

美しい造りの人形だが、その悪しき魂によって眼だけが蛇のように鋭い。

まとった金意匠の黒ローブも、その邪悪なオーラに削られ穴が開いていく。

錬金術教授フラムが作った素体に乗り移った悪の大魔法使いは、静かに視線を上げた。

「……我が復活を祝うには、あまりに小物」

メイたちを見て、ただ一言そうつぶやく。

「せめて、多量の鮮血で飾るとしよう」

「そんなことはさせませんっ!」

ビシッと指を差して宣言するメイ。

メルーナもこくりとうなずく。

するとアーデンバルドは、まるで虫でも見るかのような冷めた視線を向けてきた。

そしてゆっくりと、攻略組の方に拳を向ける。

「……なんだ?」

杖も持たず、ただ拳を上げるという動きに首を傾げる攻略組。

アーデンバルドが、手についた水を払うように拳を開くと――。

「「「ッ!?」」」

無数の魔力弾が飛び散った。

「「「ぐああああーっ!?」」」

それだけで3割近いHPを持っていかれた後衛組が驚愕と共に吹き飛ぶと、アーデンバルドは人差し指を向ける。

「【散れ】」

足元が、突然輝き出した。

「よ、避けろぉぉぉぉーっ!!」

慌てて跳び退く後衛組。

足元に生まれた輝きが爆発し、魔力の炎をまき散らす。

するとアーデンバルドは再び、優雅に指を差し向ける。

「【加速】!」

「【バンビステップ】!」

もちろんこのまま続けさせたりはしない。

ツバメとメイは、高速移動でアーデンバルドとの距離を詰めていく。

「【追え】」

すると空中に生まれた十の炎弾が、ツバメに襲い掛かる。

「【リブースト】!」

移動の角度を変えることでこれを回避するツバメだが、炎弾も軌道を曲げてきた。

「ッ!! 【跳躍】!」

まさかの誘導に、ツバメは回避を優先。

対してメイは、この隙を利用して一気に距離を縮める。

「【ソードバッシュ】!」

「【守れ】」

だがアーデンバルドは、タイミングを合わせて使用することで大幅にダメージをカットできる【黒光のマント】を呼び出し身を守る。

そしてそのまま、足元の影に沈んで移動。

前衛組から距離を取ると、今度は開いた手を軽く払ってみせた。

「【ひれ伏せ】」

合わせて波紋状に広がる魔力の刃。

「しゃがんでくださーいっ!」

とっさにメイが叫ぶ。

生まれた魔力の波紋は速く、どこまでも広がっていく。

「「「うおおおおーっ!?」」」

皆慌ててその場に伏せるが、波紋に気づくのが遅れた後方組の頭部をかすめ、それだけで2割強のHPを奪われた。

「高速【連続魔法】【誘導弾】【フレアアロー】!」

反撃はレンから。

高速の炎矢たちが、軌道を曲げながらアーデンバルドのもとへと飛んで行く。

これを影に沈むことでかわすと、その時間を使ってメイとツバメが距離を詰めに行く。

「【ソードバッシュ】!」

真正面から放つ衝撃波を再び、【黒光のマント】を使って身を守る。

「【リブースト】【跳躍】!」

するとメイの背を飛び越えて、ツバメが空中から攻撃を仕掛けていく。

「【四連剣舞】!」

やや軌道の高いツバメの跳躍。

剣舞の一撃目が当たる直前に、アーデンバルドは低空飛行でわずかに下がってこれを避けた。

「【失せろ】」

振り払う手に合わせて生まれた衝撃波が、付近を薙ぎ払う。

「くっ! ああああっ!」

ツバメは着地と同時に防御をするも2割のダメージを取られ、後方に転がった。

ここに割り込んでいくのはレン。

杖を掲げ、【コンセントレイト】でためていた魔力を解き放つ。

「【氷塊落とし】!」

頭上に生まれた大型の氷塊が、アーデンバルドに向けて落下する。

しかしこれも、発生から落下までのわずかな時間がカギとなった。

「くだらぬ」

アーデンバルドは一言つぶやき、再び影に沈んで回避。

離れたところに、余裕をもって浮かび上がる。

「まだまだっ! 【バンビステップ】からの【ゴリラアーム】!」

ここでメイが動いた。

氷塊落としは敵に当てなければ、10秒ほどだがその場にオブジェクトとして残り、壁にするといった使い方もできる魔法スキル。

「それぇぇぇぇ――――っ!!」

これを軽々と持ち上げたメイは、弾丸のような勢いで放り投げる。

轟音を響かせながら飛んだ氷塊は見事直撃。

ダメージこそ衝突に過ぎないが、アーデンバルドの体勢を大きく崩すことに成功した。

「今です! 【加速】【リブースト】【電光石火】!」

メイが氷塊に手を伸ばした瞬間、すでに動き出していたツバメが斬り抜ける。

「【アクアストライク】!」

「【ファイアシェル】!」

「【ウィンドストライク】!」

魔法学校住人たちも後に続き、ようやく与えた連携ダメージ。

「なるほど、大人数で戦うことが前提のHPね……!」

だがその減少は1割にも届かず、アーデンバルドは揺るがない。

その手を優雅に掲げると――。

「【ゆけ、我が臣下ども】」

その言葉に、次々と現れる炎の獣たち。

鳥、四足獣、爬虫類とその種類は様々だ。

アーデンバルドの背後を埋めるほどにまで数を増やした炎獣たちは、一斉に体当たりを仕掛けてくる。

「くっ! うおおおっ!!」

響き渡る悲鳴。

鳥型に目を奪われれば、足元を駆けてくる爬虫類型に体当たりを許してしまう。

そんな各々動きの違う炎獣たちの攻勢に、魔法学校住人たちは次々にHPを奪われていく。

「とにかく数を減らしましょう! 【フリーズブラスト】!」

「【アクアグレネード】!」

これにレンとメルーナは、弱点属性で対抗する。

「【ウィンドストーム】!」

それを見て魔法学校住人たちも続く。

だが、アーデンバルドは攻勢をとどめない。

「【ひれ伏せ】」

「ここで……くるのかよ……っ!!」

必死に炎獣たちに立ち向かう攻略組を狙い、広がる波紋状の魔力刃。

「【跳躍】!」

そんな中、迫る炎猪の攻撃も同時に避けようと跳んだツバメは、【連続投擲】で反撃を試みるが――。

「【散れ】」

指さしと同時に、ツバメの身体の表面に『標的』のように浮かぶ輝き。

「ああああ――っ!!」

跳躍による回避は認めない。

指さし爆破によってツバメは大きく吹き飛ばされ、3割のダメージを受けた。

「こんな怒涛の魔法攻撃、どうしろっていうんだよ……っ!」

「強すぎる……!」

魔法学校の大クエスト。

メイたちの選んできた流れは、完璧だった。

それゆえに敵は『完全体』となり、多くのハイレベルプレイヤーでしっかりと作戦を立てて戦うべき強さになっていた。

「【加速】」

そんな中、遠く吹き飛ばされたことで炎獣のターゲットから外れたツバメ。

この劣勢を変えるため、アーデンバルドのもとへと走り出す。

「【ソードバッシュ】!」

それに気づいたメイが道を作る。

駆ける衝撃波が多数の炎獣を吹き飛ばし、ツバメは一直線に距離を詰めていく。

「【リブースト】!」

だが見えたアーデンバルドの手は、【失せろ】のモーションに入るところ。

「【紫電】」

イチかバチかで放った雷光は、この位置からではギリギリ届かない。

「【アクアグレネード】!」

しかし次の瞬間、炎獣たちの間をすり抜けて飛んで来た水の爆弾がさく裂し、【紫電】の効果範囲をつなげてみせた。

「きゃあああーっ!」

ムリな体勢からの魔法は見事に連携を成功させるも、直後に炎の烏が真横から直撃。

爆破による3割のダメージと共に、メルーナは弾き飛ばされた。

「メルーナちゃんっ!」

二人が必死に生み出した隙を、逃すわけにはいかない。

メイは右手を突き上げる。

突っ込んできた炎獣たちの体当たりをその身で受けながら、【召喚の指輪】を発動。

「――――よろしくお願い申し上げますっ!」

メイの後方に生まれた魔法陣から飛び上がる、巨大なクジラ。

大量の水飛沫と共に宙を舞い、動けずにいるアーデンバルドに直撃。

石床を転がるほどの勢いで弾き飛ばし、巻き起こった波が炎獣をも飲み込んだ。

「助……かった」

ようやく場が落ち着き、安堵の息をつく攻略組の面々。

一方アーデンバルドの残りHPは、7割ほど。

「……貴様たちには、その命をもって派手に、そして無残に散ることで我が復活を祝う義務がある」

それでも、その圧倒的な余裕は変わらない。

「あがけ、生贄ども」

そう命令して黒い魔力を大きく立ち昇らせたアーデンバルドは、その口端に薄く笑みを浮かべた。