軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

407.野生児と闇の使徒

「グオオオオオオオオ――――ッ!!」

いまだ8割のHPを残す魔法獅子。

咆哮と共に、フロア内にいくつもの魔法陣が生まれ出る。

「これ、何の魔法陣かしら?」

宙に描かれた魔法陣は、妖しい光を放っている。

駆け出した獅子は魔法陣を通り抜け、そのままメイに突撃してきた。

「わあ! 燃えてるーっ!」

陣をくぐることで身体に炎をまとわせた獅子は、高速で体当たり。

そこから爆炎を高々と吹き出す。

「うわっとー!」

メイは大急ぎの跳び込み前転で、横にゴロゴロ転がって回避した。

「火の輪くぐりで炎上して、そのまま爆発炎上って感じね!」

「あはははは、そうかもっ!」

魔法獅子は止まらない。

高速移動で新たな魔法陣に飛び込むと、再びメイ目がけて飛び掛かって来る。

「【ラビットジャンプ】!」

これをメイが跳躍でかわすと、獅子の着地した先に氷剣が突き上がり氷嵐が辺りを駆けめぐった。

「【連続魔法】【ファイアボルト】!」

すぐさまレンが魔法で狙うが、魔法獅子の足は止まらない。

爆発的な加速で炎弾をかわし、目前の魔法陣をくぐると着地際のメイに再度体当たりをしかける。

「【裸足の女神】ッ!!」

全身に雷光をまとった体当たりを、超高速移動でかわすメイ。

直後、地を駆ける稲光が激しい雷鳴を鳴らした。

両者は再び向かい合う。

爪の振り回しから生まれる光の斬撃を軽やかなステップでかわすと、獅子は高く跳躍。

空中に生まれた魔法陣を通過することで、再び爆炎をまとって襲い来る。

「あぶなーい!」

噴き上がる爆炎を、メイは転がって回避。

振り返ったところに――。

「「ッ!?」」

強烈な【フラッシュ】

わずかな事前モーションと共に、獅子は魔力光を白く輝かせた。

「状態異常!?」

魔法獅子を直視してしまった二人の視界が暗転。

初見の攻撃に対する驚きと、この状況下で攻撃を仕掛けられるという最悪の事態に戦慄する。

フラッシュの範囲外にいた連絡係たちも、ピンチを悟って杖を取った。しかし。

ここで狙いをメイにしたのが失敗だった。

「【アクロバット】!」

飛び掛かってきた獅子の爪の振り降ろしを、メイはバク転で回避。

「【ラビットジャンプ】【アクロバット】!」

続く尾による振り払いも、後方への跳躍でかわす。

大きな音と共におとずれる、一瞬の静寂。

メイは【聴覚向上】でそれを、『跳躍した』と判断。

「【裸足の女神】!」

あえて前方への超高速移動で、魔法陣くぐりによる体当たりの下を駆け抜けたところで視界が戻った。

「ドキドキしちゃったよー!」

「てへへ」と笑いながら即座にターン。

着地と共に爆炎を起こした獅子へ向け、走り出す。

振り返った時、すでにメイは目前にいた。

「【フルスイング】!」

見事なカウンターがさく裂。

叩き付ける豪快な一撃が獅子を弾き飛ばし、残りHPは5割となった。

「一体……どうなってんだ!?」

普段の回避ぶりを知る者が見れば大まかだと分かるが、連絡係たちにはメイが『見えている』ようにしか思えない。

状態異常を背負いながら見せた奇跡のような回避に、完全に目を奪われていた。

「グォォォォォォォォ――――ッ!!」

残りHPが半分を切った魔法獅子が、あげる咆哮。

その身体に宿る魔力光の白炎を、さらにごうごうと激しく燃焼させる。

「勢いを上げてきたわっ!」

「っ!」

獅子は白炎をまとったままメイに突進、回避されたところで前足を起点に身体を反転。

目前の魔法陣をくぐり、続けざまの飛び掛かり。

雷光が地面を駆ける。

これを高い跳躍で回避すると、今度は振り返りと共に尾で魔法陣を叩いてみせた。

「「ッ!!」」

吹き荒れる冷気の嵐に、レンも慌ててバックステップで距離を取る。

すると魔法獅子は、大きく尾を振り払った。

「ここからは魔力光も使うの!?」

付近一帯に広がる、白い魔力光の輝き。

大慌てて逃げ出すレンを、誘爆が追いかける。

決死の飛び込みでこれをどうにか回避すると、獅子は再びその尾で魔法陣を叩いた。

「【浮遊】っ!」

地を駆けてくる雷を、身体を浮かすことで回避。

すると魔法獅子はさらに、猛烈な咆哮をあげた。

「「ッ!?」」

一斉に空中の魔法陣たちが共鳴し、魔力光を解き放つ。

「冗談じゃないわっ!」

【浮遊】を解いて大慌てで逃げるレン。

しかしその勢いはすさまじく、全ての回避は難しい。

「マズっ!」

自身に向けて放たれる魔力光に、慌てて防御に回ったところで――。

「失礼いたしますっ!」

猛スピードで飛び込んできたメイが、レンを抱きしめクルっと一回転。

社交ダンスのような華麗な動きで、魔力光を回避した。

「【ラビットジャンプ】【アクロバット】!」

さらに大きな跳躍で、続く魔力光も見事に回避。

「ありがとメイ! やられっぱなしなのも悔しいから……このまま全力でぶつけちゃって!」

「りょうかいですっ! 【ゴリラアーム】!」

レンを抱えたまま着地したメイは、その場で大きく回転。

「それぇぇぇぇぇぇ――――っ!!」

魔法獅子に向けて、レンを放り投げた。

「「「ッ!?」」」

後衛をボスモンスターに投じるというあり得ない状況に、驚きふためく連絡パーティ。

「【浮遊】っ!」

投げられている最中に【浮遊】を使っても、減速することはない。

大量に浮かんでいる魔法陣の隙間を高速低空飛行で突き進むレンは、空中でしっかり姿勢を整えると――。

「ゼロ距離からってのも……めずらしくていいでしょう!?」

そのまま杖を魔法獅子の胸元に突きつけた。

「――――【フレアバースト】ォォォォ!」

弾ける猛烈な爆炎に、魔法獅子が吹き飛ぶ。

「きゃあっ」

しかしレン側の判定も衝突。

大きく後方へ弾き飛ばされる。

「よいしょっ!」

「ありがとうメイ。距離ゼロからの魔法攻撃はこっちも弾き飛ばされるのね」

しっかりレンの身体を受け止めたメイに、ちょっと照れながら笑いかけるレン。

これで魔法獅子の残りHPは3割といったところだ。

「それじゃあそろそろ、決めにいきましょうか」

「りょうかいですっ!」

起き上がった魔法獅子は、即座に咆哮を響かせる。

空中の魔法陣から、次々に放たれる魔力光。

「本当にとんでもない攻勢ね!」

二人は迫る魔力光の乱舞から、決死の回避を続ける。

すると再び輝く、強烈な輝き。

「それはもう効きませんっ!」

「それはもう効かないわっ!」

二人が【フラッシュ】に顔を背けると、生まれるひと際大きな魔法陣。

猛然と駆けてきた魔法獅子は巨大な魔法陣を通り抜け、そのまま突撃してくる。

凄まじい勢いで吹き出す白炎を身にまとい、身体の魔法石を強烈に輝かせながら。

それを見たメイは足を止め、獅子の突撃に正面から向き合う。

そして、右手を足元に。

「突撃ばかりになってしまったのは、失敗だったわね」

ド派手なエフェクトを巻き上げながら迫る、魔法獅子。

その奥義が、目の前まで来たところで――――。

「大きくなーれ!」

ロマリアの植物学者からもらった【豊樹の種】を一斉に発芽させる。

【密林の巫女】によって生まれた木々の壁は、白炎を巻き散らす魔法獅子を弾き返した。

獅子の必殺スキルを見事に打ち破ったメイは、レンと共に木々の隙間を抜けていく。

そして二人横並びのまま、足を止めた。

一度笑い合った後、メイは剣を突き上げ、レンは杖を掲げる。

「いきますっ!」

「これが必殺の」

再び白炎を燃やし、猛スピードで走り出す魔法獅子。

二人は、真正面から突撃してくる獅子を見据えると――――。

「――――【ソードバッシュ】だぁぁぁぁ!」

「――――【フレアバースト】ォォォォォ!」

同時に得物を振り降ろした。

猛進する爆炎が身体を焼き、駆け抜ける衝撃波が問答無用で消し飛ばす。

灼熱の炎をまき散らしながら、ド派手なバウンドを見せた魔法獅子はそのまま壁に激突。

魔力光の輝きがスーッと消え去った後、ガレキのように崩れ去った。

「レンちゃーん!」

「おつかれさま!」

二人は笑い合いながらハイタッチ。

メイはそのままレンに抱き着いた。

「楽しかったねー!」

「前衛後衛一人ずつだと、スリルもあってドキドキするわね」

レンもメイを抱えたまま、うれしそうに笑い返す。

「……なあ」

「なんだ?」

「この戦いの映像、もう一度どこかで見れたりしないの?」

味方を放り投げたり、ゼロ距離で上級魔法を叩き込んだり、木を生やして敵の攻撃を弾き返したり。

何より終始、楽しそう。

見たこともない戦い方に、夢中になってしまっていた連絡係プレイヤー。

その高揚感に、思わずそんなことを口走ったのだった。