作品タイトル不明
406.久しぶりの二人
「んーっ!」
ツバメたちの戦いが始まる前。
旧研究塔5階フロアにたどり着いたメイとレンは、階段の仕掛けを起動する。
「レンちゃんと二人でボス戦って久しぶりだねぇ」
メイは一度大きく伸びをすると、そう言って笑いかける。
「言われてみればそうね」
「それにリベンジ戦なんて初めてかもっ」
「こういう形式のクエストも初めてだものね。それじゃそろそろ、いってみましょうか」
「はいっ!」
暗い隠しフロアに鎮座する、大きな魔法獅子。
早くも楽しそうなメイが先行して足を踏み入れると、静かに動き出した。
煌々と輝き出す目、たてがみと尾が魔力の白炎で燃え始め、爪の魔法石にも光が灯っていく。
「グオオオオオオオオ――――ッ!!」
響く咆哮。
猛烈な勢いで駆け出した魔法獅子は、真っすぐこちらへ向かってくる。
そして勢いのままに跳躍し、メイに前足を叩きつけてきた。
「【アクロバット】!」
これをバク転でかわすと、足元に走る光。
地面から突き上がる光の刃は、もう二度目。
隙間にしっかり身体を添わせることで、余裕を持って回避する。
続く前足の振り降ろしは、魔法石製の爪から放たれた白光が斬撃となって迫りくる。
「よいしょっ」
これをメイは、床を転がることで回避。
「【ソードバッシュ】!」
起き上がりと同時に放った衝撃波の一撃が、獅子を弾く。
与えたダメージは、やはりゼロ。
魔法獅子が吠えると、魔力光をまとった波紋のような強風が巻き起こり、付近を薙ぎ払う形で爆発。
強風で体勢を崩し、爆発でダメージを与えた上に転倒まで奪うその一撃。
嫌らしいスキルだが、すでにメイは大きな跳躍で魔法獅子の頭上高くを飛び越えていた。
「【バンビステップ】!」
着地と同時に駆け出したメイは、魔法獅子を引き連れ駆ける。
「おねがいしますっ! 【ラビットジャンプ】!」
そして飛びかかりを、大きな跳躍でかわしたところで――。
「はいそこ! 解放っ!」
【設置魔法】【フレアバースト】が火を吹き、獅子は爆炎に吹き飛ばされた。
「……すげえな」
「二人なのに、いい勝負してる」
連絡係としてついてきたパーティが、感心の声を上げる。
「ていうか、マジでHPが減ってないぞ」
連携による攻撃も、やはり魔法獅子にダメージはなし。
しかし、ここで様相が変わる。
これまで灰色だった魔法獅子のHPゲージ。その色味が変わった。
「ツバメ、うまくやってくれたみたいね!」
結晶石の破壊によって、外部に逃がしていた『本体』が霧散。
魔法獅子は動きを止め、ダメージ無効のギミックも崩れ去った。
しかし今度は、その目に埋め込まれた魔法石が強烈に輝き出す。
「まあ、そりゃそうよね。結晶石を割られた時は予備電源で動くみたいな感じかしら」
この規模のクエスト。
ギミック破壊だけでボスを倒せるはずがないと、レンは再び杖を構える。
「でも今度はちゃんとダメージが入りそうだわ。こっちも……肩慣らしは終わりにしましょうか」
「りょうかいですっ!」
そう言って、あらためて獅子に向き合うメイたち。
「……ここまでは、準備運動だってのか?」
連絡係としてやってきた魔法学校住人たちも、その言葉に驚きを隠せない。
継ぎはぎの身体に魔力の白い炎を燃やす、大型の魔法獅子。
大きく鋭い魔法石製の爪と、尾に灯る光が輝きを増していく。
本当の戦いはここからだ。
「グオオオオオオオオ――――ッ!!」
魔法獅子は、地響きを鳴らして飛びかかってきた。
舞い上がる砂ぼこりと光のエフェクトは、爪の【魔法石】によるもの。
魔力を乗せた移動の速さは、かなりのものだ。
「よっ! それっ!」
だが速いというだけでダメージを受けたりはしない。
メイは魔法石爪による斬り付けを避けて、避けて、跳躍で後方へ。
すると魔法獅子は、【魔光突進】で追ってきた。
背後にレンを背負ったメイは、白い光をまとって爆進してくる敵を、しっかり引き付けたところで――。
「レンちゃんお願いしますっ! がおおおおおお――――っ!!」
「私っ!?」
【雄たけび】による強制停止。
慌てて走り出したレンは、その手に【魔剣の御柄】を取って【フリーズブラスト】を使用。
「はあっ!」
いざという時には『近接もできる』闇の魔導士として練習した剣の振りで、魔法獅子を切り裂いた。
「解放!」
そしてそのまま、氷嵐で吹き飛ばす。
「さっすがレンちゃん!」
「ちょっとヒヤッとするけど、たまの近距離戦は楽しいわね!」
近接パーティみたいなコンビネーションに、思わず笑みがこぼれるレン。
「【バンビステップ】!」
メイは楽しそうな笑みを浮かべながら、距離を詰めていく。
対して速い立て直しを見せた魔法獅子が振るうのは、その長い尾だ。
「うわっと!」
尾の先で燃える白い魔力光が伸び、斬撃に変わる。
「うわっとと!」
これをしゃがんでかわすと、続け様にもう一発返しの尾撃を放った。
これも横っ飛びで回避すると、魔法獅子はそのまま身体を一回転。
「わあ! きれいな攻撃っ!」
付近一帯に、魔力光の球体が一斉に飛び散った。
その範囲は思ったより広く、メイが周りを囲まれたのはもちろん、レンの目前にまで広がっている。
「メイ! これ絶対爆発するやつ!」
「りょうかいですっ!」
魔力光は最初の一つ目の爆発につられる形で誘爆を続け、あっという間に付近一帯をまばゆい輝きで埋め尽くした。
メイは輝く魔力光の中を踊るような足の運びで駆け、程よい隙間へと退避。
「あっぶな!」
一方どうにか誘爆の波が届く直前にその範囲を転がり出たレンも、安堵の息をつく。
「レンちゃんないすーっ!」
「お返しはきっちりさせてもらうわ! 【フレアストライク】!」
ぴょんぴょん跳ねて喜ぶメイに杖を上げて応えつつ、獅子に向ける杖。
放つは炎の砲弾。
これを魔法獅子は、大きな跳躍で飛び越え回避した。しかし。
「【バンビステップ】!」
すでに駆け出していたメイは、この状況を予想して魔法獅子の背後へ進路を変えていた。
「【装備変更】っ!」
そしてその手に、剣に変わって【魔断の棍棒】を握る。
「追いついたーっ! 【フルスイング】!」
跳び上がりによってかわされたはずの【フレアストライク】を、メイはなんとそのまま空中へと打ち上げる。
打ち上げ花火のように飛んで行った炎の砲弾は見事、魔法獅子の側腹部に直撃した。
爆発と共に、盛大に舞い散る火の粉。
跳躍中に炎砲弾を叩き込まれた獅子は、そのまま大きく弾き飛ばされて転がった。
「あはははは! 今のすごかったわね! 外れた私の魔法を打って当てるなんてさすがに思わなかったわ!」
これには思わず笑ってしまうレン。
「えへへ! 間に合ったよー!」
爆発によって、レンの後方に落ちた魔法獅子。
二人は前衛後衛の入れ替えに動きながら、すれ違い際にハイタッチ。
笑顔を向け合う。
「……なんだ、今のコンビネーション」
「ていうか、こんな派手なボス相手なのに楽しそうだなぁ……」
戦いはまだ序盤。
何かあった際には、すぐにでも戦えるようにと構えていた連絡パーティ。
強敵相手でも終始楽しそうなメイとレンのコンビネーションに、感嘆してしまうのだった。