作品タイトル不明
405.結晶組の戦い!
突然現れた、二体目のガーゴイル。
魔導士型の攻撃から後衛を守ってみせたのは、学帽を乗せた一匹のスライムだった。
「スライムがしゃべった!?」と言いたくなるのを我慢して、すぐさま下がって陣を整える魔法学校住人たち。
「……二体同時ですか」
「最悪の増援だなぁ。やっぱり後衛組の一部を前に出して魔導士型と戦うしかないか?」
普通に考えれば、二体同時攻略は一気に難易度が上がる。
ならば前衛もできないことはない魔導士たちが、前に出て戦う形でどうにかするかと思案する。
「では……全力で二体を引き付けます」
「「「え……!?」」」
まさかの言葉に、その場の全員が驚く。
「いきます――――【疾風迅雷】」
そう言って、前に出たツバメ。
跳び掛かってきた剣士型の叩き付け二連を、左右にかわす。
すると続く攻撃もまた叩きつけ。
これも問題なくかわしたところで、剣を振り上げる剣士型ガーゴイル。
「【加速】」
その剣が天を差したところで【加速】で回避を図る。
しかし、来ない。
「ディレイかよ!」
思わず叫ぶ魔法学校住人。
前回は単純な三連撃だった攻撃が、一拍空けることで『回避後の隙を叩く攻撃』に変わる。
「【加速】」
しかし【疾風迅雷】には関係なし。
ワンテンポ遅れの叩きつけも、連続【加速】で問題なく回避した。
「【加速】 【電光石火】!」
叩きつけで弾け飛んだ石片もかわして隙を突き、剣士型の後方へと斬り抜ける。
するとここで、魔導士ガーゴイルの放った爆炎の魔法が迫ってきた。
「【リブースト】【跳躍】!」
しかし範囲が広いだけの攻撃魔法は、ツバメには脅威となりえない。
大きな跳躍で炎もかわしてみせた。
「……すごい」
二体を相手に回避を見せるツバメに、目を奪われる後衛の少女魔導士。
「お、おいっ!」
しかし、このわずかな遅れがアダとなる。
後衛狙いで飛び込んできた剣士型が、放つ振り払い。
まさかの直接攻撃に、魔導士少女は退避が遅れてしまっていた。
「【加速】【リブースト】!」
その危機にツバメが飛び込んで行く。
少女魔導士の両肩をつかんで体勢を落とし、二人そろって剣を回避してみせた。
「うまい!」と、思わず叫びそうになるのを我慢して、メルーナたちは剣士型に杖を向ける。
「【アクアストライク】!」
「【スプリットボム】!」
「【ファイアシェル】!」
そして魔法攻撃で剣士型のHPを薄く削って体勢を崩すと、二人が退避する時間を作り出した。
「「ありがとうございます!」」
助けられた少女と、ツバメの声が重なる。
狙われた魔導士少女をツバメが助け、ツバメが作った隙を別の魔導士たちが撃って、退避を助ける。
見事な連携だ。
そしてこの隙を突き、後衛組を狙いにきた魔導士ガーゴイルには――。
「【連続投擲】!」
すぐさまブレードをぶつけて、再びターゲットを自分に引き付ける。
前衛ツバメに隙はなし。
「【投擲】でターゲットを奪い返すとか、すごいなおい……っ!」
いよいよ我慢できず、住人がもらすつぶやき。
「……そろそろ一体、倒しておきたいところですね」
「大きな隙がー、欲しいかも」
「わかりました」
メルーナの言葉に、うなずくツバメ。
再び【加速】で距離を詰め、魔導士型の目前へ。
すると掲げた杖の先から、溶岩のような赤熱液が噴き出した。
降って来る溶岩を、ツバメは速いステップでかわす。
すると魔導士型はそのまま杖の先に氷結の輝きを灯し、足元のツバメに叩きつけにきた。
「【リブースト】【跳躍】!」
突き上がる氷剣の山と吹き荒れる雪風は、魔導士型の大技。
「ここっ!」
これをツバメがギリギリの後方跳躍でかわしたところで、メルーナが高く杖を掲げる。
すると夜の中央塔ホール中に、白い輝きが生まれていく。
それは一つから二つ、四つ、八つと増え続け、半球状の天井ホールを星空のように変えていく。
「――――【スターダスト】!」
その魔法は、大好きな魔法学校で手に入れた上級スキル。
杖を振り降ろすと、空中に浮かんだ無数の輝きが一斉に落下を始める。さらに。
「【コレクト】!」
それはメルーナが持つスキルの中でも、変則の一手。
付近の攻撃魔法を敵一体に集約するという、かなりの変わり種だ。
しかし広範囲攻撃である【スターダスト】と組み合わせると、大きな意味を持つ。
落ちる魔力光の軌道は全て、魔導士型ガーゴイルに集束していく。
「……すごい魔法です」
流星群がそのまま敵一体に降り注ぐような光景に、思わず声を上げるツバメ。
集約された魔法はなんと、魔導士型ガーゴイルのHPを3割強にまで削ってみせた。
「【加速】【跳躍】!」
ツバメはこの隙を突きに行く。
魔導士型は『物理耐性』あり。
速い立ち直りからの反撃を見越して、動き出す魔法学校住人たち。
しかし、ツバメの手にはすでに物理攻撃を突き通す武器【デッドライン】
「【エアリアル】【七連剣舞】!」
魔導士型ガーゴイルを切り裂く七連のダガー攻撃で、バランスを崩させた。
「マジか!!」
フォローするつもりだった魔法学校住人たちの準備は、これによって隙を突く攻撃に変わる。
「【ファイアシェル】!」
「【スプリットボム】!」
「【ウィンドストライク】!」
立て続けにさく裂する魔法。
スライムもここぞとばかりに【弾丸跳躍】で飛び掛かっていく。
この集中砲火によって、ガーゴイルがヒザから崩れ落ちる。
怒涛の攻勢は見事、魔導士型を打ち倒すことに成功した。
「やったー!」
「やりました」
杖を掲げてみせるメルーナに、ツバメもほほ笑みで応える。
「どうにか役に立てたっぽいな」
「優秀な前衛ってヤバいな。ここまで戦いが鮮やかになるものなのか」
メルーナが普段なかなか使えていない上級魔法を見て、感嘆する魔法学校住人たち。しかし。
魔導士型が倒れたことで、剣士型ガーゴイルが怒りと共に剣を振り上げた。
「……来ます」
飛び込みと同時の踏みつけ。
これをツバメがバックステップでかわすと、放たれる蹴り。
駆け抜ける衝撃波を回避すると、ガーゴイルは剣を引く。
「【跳躍】!」
少ない挙動からの突きを、ジャンプでかわして後方へ。
ガーゴイルは剣を掲げ、連続で放つ振り下ろしは魔力光の斬撃を放つ。
「【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】!」
これをジグザク走行で切り抜けて、そのまま反撃へ。
「【リブースト】【電光石火】!」
高速の切り抜けから、振り返り際の連撃を叩き込んだ。
「撃て! とにかく撃てーっ!」
ここで魔法学校住人たちが、一斉の魔法攻撃。
敵が一体に絞られたことで、全員が持てる魔法をひたすらに撃ちまくる。
巻き起こる爆発はホールのインテリアを吹き飛ばし、焼き、ひび割れさせていく。
派手な魔法の攻勢によって、広がった煙。
やがて視界が澄んでくると――――そこには誰もいなかった。
「「「…………?」」」
魔法学校住人たちはもちろん、ガーゴイルすらツバメを見失ってしまう。
「いきます」
聞こえた小さな声。
そこには絵画の描かれた天井を駆け上がっていく、小さなアサシン。
敵を見失ったまま体勢を崩している剣士型ガーゴイルの頭上に、一直線に落下してくる。
「【アサシンピアス】」
突き刺す天からの一撃。
輝きのエフェクト共にガーゴイルは動きを止め、ヒザをつかせた。
勝負あり。
魔導士型に続いて剣士型も、粒子になって消えていく。
「……す、すごいー!」
思わず拳を強く握るメルーナ。
薄暗い中央塔ホールを駆け上がり、そのまま華麗な暗殺を見せたアサシン少女に、誰もが見入ってしまう。
戦いによって荒れたホールの中を、静かな足取りで戻って来るツバメ。
果たしてどんな一言でしめるのかと、皆の視線が集まる中――。
「……天井の絵に足跡がついてしまわないか、心配でした」
そう言いながら絵画をあらためて確認し、ほっと息をつく。
「「「…………」」」
その予想外過ぎる感想に、魔法学校住人たちは呆気にとられてしまうのだった。