作品タイトル不明
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「まってたー!」
いつも通り待ち合わせ時間より早く来たメイのもとに、駆けつけてきたのはメルーナ。
「こんにちは!」
「昨日はなかなか眠れなかった!」
昨夜の旧研究塔の冒険のせいで、なかなか寝付けなかったメルーナ。
「授業はちゃんと受けられたの?」
やって来たレンが聞くと、メルーナはブンブンと首を振る。
「授業中に寝て怒られてー、怒られてる最中に寝て三倍怒られたー」
結局明け方近くまで眠れず、足りない睡眠時間は授業中に補充したようだ。
「でもー、おかげで準備は万全!」
こうして今日も、メルーナの目は輝いている。
「気持ちはとても分かります」
同じく、昨夜の冒険を思い出しては口元を緩めていたツバメがやって来て、早くも四人がそろった。
「あらためて昼間に来ると、全然趣が違いますね」
「昼と夜でここまで違うっていうのもなかなかなくて、楽しいわよね」
「本当だねっ! 昨日はずっとドキドキしっぱなしだったよ!」
「今日はどうするのー?」
すでにそわそわが止まらないメルーナが問うと、実は負けじと『今日どうするか』を一日考えていたレンが語り出す。
「まず、薬学教授に話を聞きに行きましょう。昨夜からクエストを受けている状態だから、この時間なら違ったリアクションが見られるかもしれないわ」
「りょうかいですっ! それではいってみよー!」
さっそく尻尾を振りながら先頭を行くメイに、メルーナも早足で続く。
クインフォード魔法学校は、18時前後でその趣が『昼』から『夜』に変わる。
集合の約束をした時間は16時。そして今はまだ15時過ぎ。
この時間なら問題なく、魔法薬塔で話が聞けるはずだ。
「あの化物はまだ倒せてない。これに対して教授がどんなリアクションをするのか、そしてヒントは出るのか」
「要注意ですね」
「見たことのない展開、すごく楽しみー」
メイたちはワクワクしながら魔法薬塔へ。
実験室に入ると、そこには予想通り薬学教授オーブルがいた。
「オマエたちか」
そして予想通り、これまでとは違う反応を見せた。
「昨日の化物、ダメージが与えられなかったんだけど……」
「その通りだ。ヤツには魔法も物理攻撃も、魔法薬すら通じなかった」
「何か打倒の糸口になるような情報はないの?」
「錬金術で作られたものだということくらいだな」
「難しいですね」
「それでも、いつあの化物による犠牲者が生まれるか分からない。一日も早く取り除かなくてはならぬのだ……」
そう言ってオーブル教授は「何か新たな手はないか……」と、考え込むのだった。
「これはー、時間制限もありそう」
「そうですね。時間が経つと教授自ら倒してしまう可能性もありそうです」
「……カギになりそうなのは、錬金術かしら」
研究室を出たレンが、得られたキーワードを復唱する。
「それならー、魔法アイテム塔が関わるのかも」
そしてメルーナが、関連しそうなクエストを考え始めたところで――。
「っ!?」
突然ビクリと身体を震わせた。
現れたのは、長い白髪とひげの老人。
濃いネイビーのローブにカラフルな肩掛けをして、手には長く荘厳な雰囲気の木杖。
肩にとまった鳳凰の、鮮やかな橙色がよく映える。
通りがかりの魔法学校住人も、思わず足を止めて驚いてしまっている。
「クインフォード魔法学校長……っ!」
まさかの登場人物に、驚くメルーナ。
「もしや君たちかな? 最近非常に成績を伸ばしていると噂の生徒は」
魔法学校長は穏やかな笑みを浮かべると、メイたちのもとにやって来る。
「ワシのところにまでその名が聞こえてくるとは、素晴らしき魔法の才を持っておるのじゃな」
「ま、魔法の才でいいのかしら……」
大抵のクエストを、パワーとスピードと動物で乗り越えてきた四人。
尻尾をフリフリしているメイを見ながら、レンは思わず笑ってしまう。
「じゃが……あまり夜遊びに夢中になってはいかんぞ」
「…………」
この言葉でレンは、『クエストに関わる』流れだと確信。
「かれこれどれくらいになるじゃろうか……少し前までとても優秀な錬金術の教授がおってなぁ」
学校長は、ため息交じりにつぶやいた。
「今この魔法学校で雑用をしておる人形たちも、その錬金術師の作ったものじゃ。その才能は至高と言ってよいほどじゃった。それが『最高の一品を作り上げた』と宣言した後、突然姿を消してしまったのじゃ。一体どこへ行ってしまったのか……邪な力に、囚われてしまったりしていなければよいのじゃが……」
「邪な力?」
メイが首と尻尾を傾げる。
「魔法界最高の才能を持ちながらも闇に魅入られ、たくさんの罪なき者たちを葬った……悪しき大魔法使い」
「悪しき大魔法使い……」
初めて聞く言葉に、思わず息を飲むメルーナ。
「長きに渡りその凄まじい力で魔法界を恐怖に陥れた、恐るべき悪の王。優秀な魔法使いたちが結束し、どうにか封印することに成功したのだが……その強大かつ邪悪な力と思念は、今も人々を惑わしているのじゃよ。特に……夜はな」
学校長はそう言って、深くため息をつく。
「だから、あまり夜遊びなどするのではないぞ……」
そして再び穏やかに笑うと、ゆっくりと去って行った。
「す、すごい……すごいーっ! こんな形で学校長に声をかけられたことなんてー、一度もなかった!」
存在は知っていても、これまでクエストに絡んだことなどなかった学校長。
メルーナは感動に息を荒げる。
「これは、あの化物の話だけでは済まなさそうね」
「夜遊びに釘を刺しにきたという時点で、偶然ではなさそうです」
ツバメも気づいたようだ。
「ありがとう! 三人に声をかけたのがー、魔法学校生活の一番の功績っ!」
そう言って思わず、隣にいたメイの腕に抱きつくメルーナ。
「まだ早いわよ。どうせなら隠れてる大きな展開を引っ張り出してやりましょう!」
「はい、楽しみです!」
「ああーっ、わくわくしちゃうよーっ!」
「……がんばる!」
こうして四人はあらためて、気合を入れ直したのだった。