軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

395.教授からの依頼

幽霊から得た情報は、夜間禁止区域に度々現れるという人物について。

メイたちが隠し階段を進むと、そこにいたのは薬学教授オーブルだった。

「生徒がこんな時間に何をしている?」

オーブルは、遺憾を込めた視線を向けてくる。

「……これ、ガーゴイル像の仕掛けと同じだったりしない? 追われないけど、捕まった時点で……みたいな」

「ええー!?」

「確かに、私たちは今この魔法学校の生徒なんですよね」

「夜中に校内をうろつくだけでなく、夜間禁止区域にいるのはとても褒められたことではない。校長へ突き出し、処分を検討するのが妥当だろうな……」

「「「「ッ!」」」」

『処分』という言葉に、メルーナがびくりと肩を震わせる。

「だが……オマエたちはかなりの優秀さを誇る生徒だ」

しかし薬学教授オーブルは、そう言って何やら考えるようにする。

「もしかして、マンドラゴラのクエスト達成が活きてくる形?」

「一生徒でありながら、その能力は他の追随を許さぬほど……いいだろう」

オーブルはそう言って、追及をやめた。

どうやらレンの予想は正解のようだ。

「実はこの旧研究塔には、巧妙に隠された中間階がある。そしてそこには、恐ろしい化物が鎮座しているのだ」

「もしかしてー、その化物が危ないから進入禁止になっているの?」

「そういうことだ。五階と六階の間にある道は夜にしか開かない。そしてその危険な化物をどうにか排除したいと常々考えているのだが、上手くいかなくてな……どうしても勝てない化物。オマエたちにもその対応策を考えてもらいたい」

「分かりやすいクエストね」

「これはー、ボスの気配……!」

「そしてこのことは他言無用だ。不出来な者が挑めば、すぐにでも食い殺されてしまうからな。場所は五階ホールと六階の間にある階段だ。階段の側面に小さく刻まれた魔法陣を五回ほど蹴れば道が開ける」

「りょうかいですっ!」

「夜な夜な教授が打倒を狙ういわくつきの化物……! これは隠されたクエストで間違いないー!」

夜間禁止区域。

その隠し階に潜む、恐るべき化物の排除依頼。

どう考えても大きなクエストだ。

「昼間に会った人物に、夜の禁止区域で会うというのはすごくドキドキしますね」

7年目で初めて現れたクエストに目を輝かせるメルーナは、こくこく! と大きくうなずく。

「ここから5階へ行くといい。頼んだぞ」

転移用の宝珠で光柱を出現させると、オーブルは去って行く。

さっそくメイたちが光柱に踏み込むと、そこは5階フロアだった。

王城のホールに使われていそうな大階段があり、このフロアを中心にした道が幾筋も伸びている。

階段側面に刻まれた小型の魔法陣は、そこにあると言われなければ傷や汚れにしか見えない。

メイがこんこんとつま先で蹴ると魔法陣が輝きを灯し、『段』が下がって壁になる。

「こういう仕掛けはやっぱりワクワクしちゃうねー!」

壁に空いた道を進んでいくと、そこには魔法灯で照らされた広い石壁の空間。

そして、一頭の巨大な灰色獅子が待ち受けていた。

「強そうー……!」

メルーナが息を飲む。

継ぎはぎの目立つ獅子は、たてがみや尾に炎のように揺れる白い魔力光をまとっている。

そしてその爪や牙は、魔法石製だ。

継ぎはぎな身体に、輝く魔力と魔法石。

夜の魔法学校に現れた化物は、強者でないはずがない。

「いきましょうか」

「はいっ!」

四人は自然と、前衛後衛の陣を作る。

そして魔法獅子の視界に入り込んだところで、戦いが始まった。

「グオオオオオオオ――――ッ!!」

激しい咆哮と共に駆け出す魔法獅子は、そのまま跳躍してメイに襲い掛かる。

「メイ! その爪は多分【狐火】と同じ効果よ!」

「りょうかいですっ!」

獅子が魔法石製の爪を振り降ろす。

「【ラビットジャンプ】!」

その白い輝きは軌跡を描き、魔力の白炎を巻き起こす。

これを後方への跳躍で回避したメイに、さらに魔法獅子は追撃を仕掛ける。

低い飛び掛かりから、叩きつける前足。

すると爪の魔法石が輝き、幾筋もの白の光刃が地面から突き上がった。

「うわっと!」

光刃の隙間に身体を滑り込ませることで、これを回避したメイ。

すると魔法獅子は身体を反転させて、長い尾を振り回してきた。

「【アクロバット】!」

これをバク転一つでかわすと、尾の軌道上に残った魔力の粒子が立て続けに爆発。

「わあ! きれいな攻撃っ!」

驚きながらもメイは、しゃがむことでこれを回避。

【ラビットジャンプ】で敵の前へ。

「がおおおおおお――――っ!」

【雄たけび】で魔法獅子の動きを止める。

「【フレアストライク】!」

「【アクアストライク】!」

するとレンとメルーナが同時に魔法攻撃を放った。

身体の左右に直撃して左側に炎が、右側に水しぶきがあがる。

しかし、HPゲージに変化なし。

「ここにきて魔法は効きにくいタイプってこと? 意地の悪いクエストねっ! 高速【フリーズボルト】!」

属性によってダメージの多寡が変わる可能性を考えて放った氷結魔法でも、ダメージは奪えない。

「【加速】!」

それを見て駆けこんで行くのはツバメ。

「【リブースト】【紫電】!」

獅子の爪をくぐり、そのまま斜め後方へと抜けたところで閃く雷光。

動きを止めれば、続くのはメイだ。

「いきますっ! 必殺の【ソードバッシュ】だ――――っ!」

放つ猛烈な衝撃波。

さすがの威力。派手にバウンドしながら転がった魔法獅子は倒れ込んだ。

連携からの見事な一発に、追撃を狙おうと動き出した四人は視線を敵に向け――。

「「「「ッ!?」」」」

驚きに顔を見合わせた。

「ちょっと待って、このボス……魔法も物理も効かないの?」

これだけの攻撃を叩き込んで、それでもHPゲージは減っていなかった。

レンは慌てて辺りを見回すが、ギミックらしきものもなし。

頭に浮かぶのは『負けるイベント』だが、そうでない可能性もある以上戦いをやめるわけにもいかない。

「メルーナ! 【凍結】を狙える!?」

「いけるー! 【アクアストライク】!」

「【フリーズブラスト】!」

メルーナの放った水の爆発に、氷嵐を吹きつけ獅子を凍結させる。

「【加速】【跳躍】【エアリアル】【八連剣舞】!」

この隙を狙っていくのはツバメ。

八連発の刃を叩き込む。

「【ラビットジャンプ】! そして……」

するとメイが、さらにツバメの上を跳び越えてきた。

「【フルスイング】だああああ――――っ!!」

縦のコンビネーションが見事にさく裂し、再び魔法獅子は弾き飛ばされる。

それでも、ダメージなし。

獅子は再び、強烈な咆哮を響かせる。

「レンちゃん!」

異変に気付いたメイが声を上げた。

現れた二つの魔法陣から浮かび上がってきたのは、二体のガーゴイル。

「このフィールドにまでガーゴイル像!? 高速【連続魔法】【ファイアボルト】!」

レンは即座に魔法を放つが、これも効果なし。

「仕掛けも見つからない、ダメージも取れない。そのうえ退場ギミックのガーゴイルまで出てくるって……どうなってるのよ!」

見えない状況に、悩むレン。

思いついたのは教授の言った『どうしても勝てない化物』という言葉だった。

ガーゴイルが現れたことでメイはメルーナのもとまで下がり、【ソードバッシュ】で対応。

その隙にツバメが【投擲】でダメージを狙ってみるが、やはり効果なし。

「――――退きましょう」

しばらく悩んだレンは、ここで一度撤退することを決断。

「一定以上のダメージを与えればバリアが割れるとか、そういう類のギミックも見られない。さらにプレイヤーを一方的に退場させられるガーゴイル像。これは戦い続けろっていう事ではないと思う!」

「りょうかいですっ!」

「私もレンの判断に従うー!」

「高速【連続魔法】【フレアアロー】!」

すぐにレンが魔法で獅子をけん制し、メイとツバメがガーゴイルたちを引き付ける。

魔導士組がこの空間から離脱したところで、前衛二人も後に続く。

「ガーゴイルたちが、こんなに……っ!」

レンがフロアに出ると、すでに十体を超えようかというガーゴイル像が集まって来ていた。

続く道からも、次々にやってくるのが見える。

「マズいわね……」

逃げ道は、そのほとんどが潰されてしまっている状態だ。

この状況では、全員そろっての退避は難しいだろう。

とはいえこのままここにいるわけにもいかないと、悩むレン。

「ここは、わたしにおまかせくださいっ!」

そんな窮地の中、勢いよく手を上げたのはメイだった。