軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

394.物音の正体は?

「これはー、なんだろう……」

妙な物音がするという部屋へと向かうメイたち。

その途中の廊下、そしてフロアは荒れ果てていた。

「戦いの痕跡みたいに見えるわね……」

刃で斬ったような無数の傷と、炎で焼かれたような焦げ跡が各所に生々しく残されている。

「こんな怪しい光景初めて見たー、本当にドキドキする……!」

これぞ夜の魔法学校という怪しい状況に、目を輝かせるメルーナ。

手にした地図にメモを残しつつ、幽霊の部屋の直上に当たる場所へと進んでいく。

しかしそこは、何もないただの石壁。

そして手に入れたカギは、板のような形をしている。

四人はすぐに気づく。

壁の石の一つを外して差し込むと、本物にしか見えなかった石壁が消え、代わりに扉が現れた。

「レンちゃんっ!」

「緊張の瞬間です」

「果たして何があるのか……!」

メイとツバメが即座にレンの腕をつかみ、メルーナが裾をつかみながら背中に回る。

レンも「はいはい」とちょっと待ってから、ゆっくりドアを開いていく。

「「「「ッ!」」」」

暗い部屋の中に見えたのは、複数の人型。

敵か、それともガーゴイルか。

メイたちは慌てて武器を構えて、様子を見る。

しかし攻撃はなし。

「人形……?」

緊張しながら中をのぞくと、その壁面に並んでいたのは大小様々な姿の人形だった。

「ウェーデンの時に戦った『ドール』に似ていますね」

ツバメは、錬金術師なーにゃが使っていた物を思い出したようだ。

「よくできてるねー」

「他には特に何もないみたいだけど……」

棚には手足がまだ付いてない、パーツ状態のものも置かれているが、目立った点はなし。

念のために仕掛けの類を探してみるも、変わったものは見つからなかった。

「この展開だと急に襲い掛かってきそうなんだけど……大丈夫みたいね」

とりあえずはひと安心かと、レンが息をついた瞬間――。

「「「「わあああああーっ!」」」」

ガタン! と、音を鳴らして棚から手足のない人形が落ちてきた。

これにはさすがに、四人全員悲鳴を上げる。

「…………な、何で全員で私に抱き着くのよ」

もう当たり前のように背中に張り付いてくるメルーナに笑いながら、安堵の息をつくレン。

「てへへ、なんかレンちゃん頼りになるから」

どう考えても一番頼れるメイも、「てへっ」と笑う。

「それにしても、いいように驚かしてくれたわねぇ……」

上半身だけの人形はもぞもぞと動きはしたが、攻撃をしてきたりはしないようだ。

「急な肝試しになりました」

「とりあえず、この人形たちが音を出してたってことを幽霊に報告しに行けばいいのかしらね」

四人が廊下に戻ると、ドアが閉まり元の石壁に戻っていく。

メイたちはそのまま、来た道を戻ることにした。

「……どうでしたか?」

猫レンの先導で部屋にたどり着くと、幽霊は不安そうに顛末をたずねてきた。

「上の階には、錬金術師の人形のようなものが数体ありました。どうやらそれが動いていたようです」

そう告げると、幽霊は「よかった……」と息をついた。

「それなら他の幽霊がイタズラしているのでしょうね。錬金術師の作る素体は、魂の状態でなら少しですが乗り移って動かすこともできるんです。『霊薬』によって素体に仮の命を与えれば、そのまま定着することも可能なんですよ」

「へえ、そんな話もあるのね……」

「おおー、初めて聞いたー」

「恐ろしいことに、人間の精神の部分だけを眠らせて、その隙に身体を乗っ取ってしまうこともできてしまいます」

「……急に、魔法世界の闇深い部分が見えてきたわね」

「なんだかドキドキしちゃうねぇ」

「す、すごいー、なんだか物語が深まっていく感じがするー」

傷だらけのフロアから始まった『闇』の要素に、メルーナは興奮する。

「ありがとうございました。気になっていた物音の正体、幽霊の仕業と分かれば安心です」

そう言って幽霊は、胸をなでおろした。

「人間じゃなく幽霊の仕業と分かったことで、むしろ安心できるのね」

「普通は逆ですね。ちょっと面白いです」

「なにかお礼をしたいのですが……この身体なので多少の情報くらいしかなくて……」

「それで十分よ。どんな情報なの?」

「実は、この下のフロアに魔法学校の人がよくやって来ているのです」

「夜間禁止区域に、潜り込んでくる誰か……ね」

「これはー、新たなクエストの気配かも」

「その人は、今夜もこの旧研究塔にやって来ています」

意外な情報に、メルーナが目を見開く。

「夜な夜な旧研究塔をうろつく人物ー、とても気になる……!」

「そこに隠し階段があります。それを降りて行ってください。そうれすればその人物に会えるでしょう」

「りょうかいですっ!」

メイは言われるまま、さっそく床石を引き抜く。

現れた下り階段を進み、廊下を進んで行くと――。

「あれっ、あの人は……」

そこには、ボロボロのローブをまとった青年魔導士の姿があった。

メイの目が、すぐに人物の正体に気づく。

「こんばんわっ!」

見知った人物の登場に、駆け出すメイ。

「……オマエたちは確か、ワタシの仕事の手伝いを最高難易度までこなしてみせた生徒たちだな」

そこにいたのは、メイたちにマンドラゴラ収穫を頼んだ魔法薬塔の教授オーブルだった。