作品タイトル不明
367.動力部を守りますっ!
放射状にブロックが敷き詰められた広大な部屋。
その中心には、円形の動力部が置かれている。
そこでは先行した蘭すみれ姉妹が『物理障壁』に向けて剣を振るっていた。
「いくよ、すみれ!」
「う、うんっ」
「こいつで終わりだ! 【二刀一斬】!」
「【走破閃】!」
姉妹の放った剣撃が、すでにひび割れている物理障壁にとどめを刺す。
「よーしっ! これで物理障壁もお払い箱だ! このまま動力部をぶっ壊して、お宝を頂くよ!」
歓喜の声を上げた蘭は、そのまま二本の大剣を抱え上げる。
すでに潜行モードへの準備を始めている動力部。
蘭が攻撃スキルを叩き込もうとした、その瞬間――。
「【ラビットジャンプ】!」
聞こえた声に振り返った。
長い距離を一息に跳んでくる少女は、そのまま剣を手に取ると――。
「【フルスイング】!」
猛烈なエフェクトと共に全力の一撃を見舞った。
「ちっ!」
慌てて跳び退く蘭。
「間に合ったー!」
怒涛の猛追を見せたメイたちはついに、トップ姉妹に追いついた。
「遺跡都市は、ロボットちゃんたちは――――わたしたちが守りますっ!」
「……おいおい、本当に追いついてきたってのか」
「…………」
これにはさすがに驚く蘭とすみれ。
お宝奪取組の情報では、メイたちはかなりの出遅れの上に人数も少なかった。
少なくとも防御特化の布陣を配したホールを、こんなに短時間で抜けてくるなんて思ってもいなかった。
「なるほどねぇ。野生児ちゃん、どうやら噂だけじゃないみたいだね」
楽しそうに笑いながら、二本の大剣を構える蘭。
すみれも鮮やかな鞘をした刀に手を添える。
「……そんじゃ、クエストの決着を付けようか。動力部……そして宝を賭けてさ」
あくまで『お宝』が目当ての蘭は、剣を構えて笑う。
「悪いけど制限時間があるんでね。お遊びなしでいかせてもらうよ」
「気にしないでいいわ。こっちも三人、数的優位のままいかせてもらうから」
「さあ……勝負だっ! 【メイルフラッド】ォォォォ!!」
目前で爆発した水塊が、怒涛の勢いで最前列のメイに襲い掛かる。
「【ラビットジャンプ】!」
これをメイは後方への跳躍で回避。
「【コールドゲヘナ】!」
続いて放つ氷の大剣。
足元を流れる暴水を、飲み込む様に進む氷の蛇竜。
「【バンビステップ】!」
とにかく範囲の大きい蘭の攻撃を、メイは大周りのダッシュで避ける。
そこから体勢を整えて、反撃の【ソードバッシュ】を放とうとするが――。
「【武器交換】」
蘭は一瞬で装備武器を変更。
「【プロミネンス】!」
左手の大剣【サラマンドラ】から深紅の爆炎を放った。
「うわわっ! 【バンビステップ】【ラビットジャンプ】!」
迫る巨大な爆炎を、わずか数歩からの跳躍でかわしたメイ。
だが蘭の右手にはすでに、風の大剣【シルフィーレ】が握られている。
「ここだ! 【テンペスト】!」
「わ、わああああーっ!!」
追ってきた風の爆発が、豪炎に交じり燃え盛る。
突然その範囲を大きく広げた一撃に、メイは1割強のダメージを受け床を転がった。
虚を突く攻撃は、メイを崩す最大の手段。
【武器交換】を使った攻撃を見事にさく裂させた蘭は、止まらない。
「【転地】!」
瞬間移動のような歩法で距離を縮めると、さらに【武器交換】を使用。
「【コールドゲヘナ】!」
再び突き進む氷の蛇竜を、メイが高速ステップでかわしたところに――。
「【テンペスト】!」
氷の蛇竜を爆風で粉砕し、付近一帯に猛烈な氷嵐を巻き起こす。
「っ!!」
視界を奪うほどの嵐に、慌てて下がるメイ。
広範囲のスキルを高速で連発し、さらにそれを組み合わせることで押し切る。
そんなパワー全開の戦い方は、敵の防御も接近も許さない。
『攻撃こそ最大の防御』を、地で行く戦い方だ。
「さすがの動きだね。でも、このままいかせてもらうよっ!」
そう言って蘭は、強気の笑みをのぞかせた。
「――――いきます」
妹すみれが走り出す。
狙いを付けたのは後衛のレン。
近接同士の戦いになった際に、生まれた隙を魔法で狙い打たれるのは避けたいという考えだ。
「【ファイアウォール】!」
しかしレンも予想はできていた。
早めに炎の壁を張ることですみれに回り道をさせる。さらに。
「【連続魔法】【ファイアボルト】!」
放つ四連続の炎弾。
「【狐走】」
すみれはこの四つの炎弾を、速く細かな足の運びでかわして迫り来る。
その凄まじい速度は、まるで落ちる気配がない。
「返し飛燕――」
そのままレンを潰しにかかったところで――。
「【電光石火】!」
「ッ! 【側方転身】!」
真横から飛び込んできたツバメの一撃を、慌てて側方宙返りで回避した。
「【加速】【リブースト】!」
即座に後を追い、ツバメはダガー二刀流で斬りかかる。
「【狐走】! 【波紋刀舞】!」
すみれはこれをかわして、刀を手に一回転。
「ッ!! 【跳躍】!」
広がる波紋のような斬撃にツバメが飛び上がると、追いかけようとしたすみれの前に飛び込んできたのは、羽の中心を青白く染めた四羽の黒蝶。
「見たことのない攻撃……っ!」
四方向から放たれる氷弾を、すみれはしきりに視線を動かしながらかわしていく。
「【電光石火】!」
「【狐走】っ!」
その隙を突くように迫ってきたツバメの一撃も、高速移動で見事に回避。すると。
「魔導士が、近距離戦……っ!? 【蜻蛉帰り】っ!」
死角を突くような形で飛び込んできたレンの『魔剣』を、すみれは大きなバク宙でかわす。しかし。
「解放!」
「くうっ!」
【魔剣の御柄】から解放された【フリーズストライク】に、すみれは半身を弾かれた。
ダメージは2割ほど。
ここでレンは、ツバメと入れ替わるようにして距離を取る。
「【波紋刀舞】!」
その下がり際を狙い、放つ回転斬り。
「ッ!!」
慌ててしゃがむも、かすめた斬撃がレンのHPを1割ほど削り取った。
ここですみれは、【波紋刀舞】によってバランスを崩していたツバメに目標を変更。
代わってレンを追ってきたのは、付近を埋め尽くしていた氷嵐の中から飛び出してきた蘭だった。
「マズッ!!」
これには、さすがに慌てるレン。
「まず一人ぃぃぃぃー!! 【コールドゲヘナ】ァァァァ!!」
振り降ろされる大剣から猛進する氷の蛇竜が、レンを狙って突き進む。
「【裸足の女神】!」
しかしそこに駆け込んできたのはメイ。
「レンちゃんごめんねっ! 【ゴリラアーム】!」
レンをつかむと、迫る【コールドゲヘナ】の範囲から放り出しにかかる。
「ありがとメイ! どうせなら全力で『ぶつけちゃって』!」
「りょうかいですっ! それーっ!」
豪速で投じられたレンは、そのまま真っ直ぐすみれのもとへ。
「きゃあっ!?」
ツバメへ追撃を仕掛けていたすみれは完全に虚を突かれ、飛んできたレンにぶつかり派手に転倒した。
レンはそのままゴロゴロと転がって、すぐさま立ち上がる。
こうしてツバメはダメージを回避、レンは姉妹から距離を取ることに成功。
【ラビットジャンプ】で氷蛇竜をかわしたメイと、「やったね」と笑い合う。
「…………」
ダメージこそ衝突判定で少ないものだったが、すみれはまさかの展開に唖然とする。
「……あ、あたしも大概だと思ってたけど、パーティメンバーをぶん投げてぶつけてくるって……とんでもないね」
その光景には、さすがの蘭も苦笑いを見せたのだった。