作品タイトル不明
366.両軍激突です!
「ここを抜ければ動力部かな。今回も余裕だったねぇ」
余裕の笑みで、最後の道を進む蘭。
聞こえてきた慌ただしい足音に振り返る。
「……なんだ? 後続が追い付いてきたのか?」
しかし見えたのは、お宝奪取組が詰めかけたホールに駆け込んでくる遺跡保存組の面々。
「遺跡保存組……?」
これには蘭も、さすがに驚く。
「情報ではかなりの出遅れだったはずなのに、どうやって追いついたんだ……?」
「……すごい」
すみれも思わずつぶやいた。
「まあいいや、足止めは任せたよ」
しかし蘭は、あくまで余裕の姿勢。
慌てることもなく、お宝奪取組に指示を出した。
「よし、俺たちはこのまま二人の先行を優先するぞ! それだけでお宝は確実にいただけるんだ!」
「盾持ちは前に出て防御に徹しろ! 補助も全開だ! ブロックの背後なら魔法も衝撃波も防げるからな、上手に使え!」
「「「おうっ!」」」
すぐさま動き出す、お宝奪取組の面々。
後方にしっかり補助役を置くことで、徹底抗戦の姿勢を見せる。
「そんじゃ、さっさと終わらせちゃおうか」
ゆうゆうと動力部へと足を進める蘭、すみれは頭を下げてからその後に続いて行った。
居並ぶ大量のお宝奪取組と遺跡保存組の間で、自然と始まるにらみ合い。
いよいよ、両陣営がぶつかり合う。
「いきましょうか」
「はい!」
「りょうかいですっ!」
メイは元気に返事をすると、さっそく剣を振り上げた。
「いきますっ! 【ソードバッシュ】!」
「き、きたっ! ぐああああああ――――っ!」
開戦。駆け抜ける衝撃波に吹き飛ぶ敵前衛。
それでも補助を交えた徹底防御によって、三列目以降はなんとか生き残った。
腰を据えた防御戦の構えを見せるお宝奪取組。
その中から一歩前に出たのは、二人の従魔士だった。
「「かかれーっ!」」
現れたのは、大きな飛竜と黒獅子。
「気を付けろ! 獅子型は動きが速いぞ!」
「【加速】【リブースト】!」
これに立ち向かったのはツバメ。
ターゲットを取りつつ、見事なV字移動で獅子の飛び掛かりを回避すると――。
「【紫電】!」
雷光で動きを止めた。
「【雷遁・突牙】!」
「【破天衝】!」
そこに駆け込んできた前衛が連続攻撃を叩き込み、見事先制に成功。
戦いの優位を取る。
「くるぞ! ブレスだっ!」
一方、真っ直ぐ飛んできた飛竜はそのまま炎を吐いた。
遺跡保存組は慌てて防御に回る。
「高速【誘導弾】【連続魔法】【フリーズボルト】!」
後方のレンは、高速の氷弾で反撃。
緩い誘導のかかった四連射を速い飛行で回避したところを狙い、遺跡保存組の弓術師が矢をつがえる。
「【風切りの一矢】!」
飛距離増の高速射撃。
これを喰らった飛竜は、慌ててレンたちから距離を取る。
こうして遺跡保存組のコンビネーションは、見事に優位を奪っていく。
だが、あくまで優勢止まり。
「……ここは俺たちも、メイちゃんたちの進行を最優先で動くか?」
先行する姉妹と、厚い防御。
時間が経つほど敗北に近づいていくことに、変わりはない。
「とにかく無理にでも突き進んで、命がけで道を作り出す形だな」
そんな現状に、遺跡保存組が覚悟を決め始める。
「……ここは、焦らずいきましょう」
しかしレンは一言。
「今回は、ツキがあるみたいなの」
そう言って笑ってみせた。
「【バンビステップ】!」
メイは弓術師と魔導士による遠距離攻撃を引き付ける。
「撃て撃て! とにかく少しでもメイちゃんの攻撃回数を減らすんだ!」
「「「【ウィンドカッター】」」」
当てるための、速く軽い魔法の連射。
「「「【ショットアロー】!」」」
続くのは、回避の難しい散弾射撃。
「【モンキークライム】からの……【ラビットジャンプ】!」
しかしメイはブロックを駆け上がり、高く跳躍。
「大きくなーれ! からの【フルスイング】!」
「「「うああああああ――――っ!!」」」
大きく成長させた【蒼樹の白剣】で放つ豪快な横なぎが、前衛防御部隊を弾き飛ばした。
「【爆走】! 【喰らい付き】だ!」
一方ツバメは獅子型魔獣を前に、意識を集中する。
高速の接近から放たれる、猛烈な特攻。
「ッ!! 【加速】【リブースト】!」
これを程よい距離でかわして、即座に反撃。
「【アクアエッジ】! 【四連剣舞】!」
「「【フリージングストーム】!」」
するとすぐに遺跡保存組の追撃がさく裂し、凍結を奪いとる。
「ありがとうございます! 【アサシンピアス】!」
「くっ! ここまでか!」
続く見事な連携。
ツバメたちは、獅子型魔獣を撤収させることに成功した。
「【ブースター】!」
「マズいぞ! ブレスがくるっ!」
飛竜は突然の急加速。
虚を突かれた遺跡保存組に、炎系ブレスの上級スキル【グレイトフレア】を放ちにいく。
ブレス被弾直後の早い立て直しは難しい。
続け様に急降下攻撃の一つもされれば、死に戻りは免れないだろう。
それは陣形を崩されかねない危機だ。しかし。
背後から飛び込んできたスライムが、一度その身体を大きく広げた後、猛烈な勢いで伸び上がる。
身体を棒状に変えての突き上げは飛竜の体勢を大きく崩し、ブレスを強制停止させた。
「助かったわ! 【フリーズブラスト】!」
この隙を突き、レンが氷嵐を放つ。
続く弓術師の連射で、獅子に続き飛竜も撤収させることに成功。
遺跡保存組の勢いは止まらない。
「…………でも、本当に大丈夫なのか?」
しかしいまだ崩れていない敵防衛ラインを見て、さすがに不安を感じる者が出始めた。
――――すると。
「きたっ!」
レンの予想通り、天井の紋様が輝き出した。
いざとなればメイが【蓄食】で暴れ回ったり、【野生回帰】からの【四足歩行】で姉妹を追うという手もある。
ただ、これだけの人に見られてしまっている状況なら別の手を使いたい。
そんな判断で様子を見ていたレンの狙いは、見事に結実。
「メイ、お願いっ!」
天井を指差すレン。
その仕掛けをすでに『知っている』メイは、すぐさま狙いに気づいた。
「おまかせくださいっ! 【装備変更】【バンビステップ】!」
頭装備を【鹿角】に変更して、勢いよく走り出す。
すると天井の中央に付けられていた針から、このステージのギミック『銀の雫』が落ちてきた。
「とっつげきー!」
そのままメイは、『変化』を始めた銀の雫を弾き飛ばす。
「な、なんだこれ!?」
突然自軍の後方に転がってきた銀色の雫に、首を傾げるお宝奪取組。
雫はすでに人型になり始めており、そのまま一人の少女の姿になった。
「……メイちゃん?」
「【そーどばっしゅ】」
「「「うおおおおおお――――っ!?」」」
敵陣後方から放たれる、猛烈な衝撃波。
まさかの事態に防御も間に合わず、200人ものお宝奪取組が消し飛んだ。
「撃て撃て! 魔法を撃て!」
「【アイスジャベリン】!」
「【フレイムバレット】!」
「【そうびへんこう】」
ニセメイはその手に持った銀の【魔断の棍棒】で、容赦なく敵魔法を打ち返す。
「「「うわああああーっ!?」」」
「【らびっとじゃんぷ】」
これまでの統率はどこへやら。
入り乱れるお宝奪取組を前に、ニセメイはさらに高く跳躍。
「【そうびへんこう】」
その手に【大地の石斧】を構えた。
「【ちれつげき】」
「「「お、おお、おおおおおお――――っ!?」」」
「【ぐれーときゃにおん】」
「「「うおおおおおおおおおおおおお――――っ!?」」」
割れた地面から突き上がる岩塊に、さらに300人を超えるお宝奪取組が跳ね飛ばされる。
あまりに容赦のない連続攻撃。
「攻勢をかけるのはここからよ! トップ姉妹を追って突き進みましょう!」
「りょうかいですっ!」
「はいっ!」
元気よく先頭を走り出すメイ。
「なんだこれ! なんだこれなんだこれーっ!?」
まさかの事態に、慌てふためくお宝奪取組。
幸運にも生き残った一人の剣士は、ここで絶対にあってはならない地獄の光景を目の当たりにする。
「ウ、ウソだろ……」
前方からは猛然と走り来るメイ、後方からは迫り寄るニセメイ。
二人は偶然、同じタイミングで剣を振り上げ――。
「【ソードバッシュ】」
「【そーどばっしゅ】」
「「「うぎゃああああああ――――ッ!!」」」
二人のメイが同時に放った衝撃波は、フロアを駆け抜け炸裂。
前衛も後衛も、従魔までもが姿を消していく。
なんとニセメイ登場からわずか10秒ほどで、お宝奪取組は7割の人員を消し飛ばされた。
そして、大きく道が開く。
メイとツバメはすぐさま姉妹の後を追い、レンもそれに続く。
「あっ! 【四足歩行】と【野生回帰】、あとできれば……【裸足の女神】とかは使用を控えていただけると助かりますーっ!」
ニセメイにそんな注文をしながら、駆けるメイ。
「……よし。あの銀のメイちゃんが何者かは分からないが、俺たちは敵後続の引き留めだな」
新たに駆け込んできたお宝奪取組を見つけて、気合を入れ直す遺跡保存組。
「動力部への進行はここで徹底的に抑え込むんだ! ……銀のメイちゃんに気を付けながら!」
「「「おうっ!」」」
仲間と最強すぎる門番に後を任せ、メイたちは駆ける。
こうして遺跡保存組による怒涛の攻勢はついに、先行していたトップ姉妹をつかまえた。