作品タイトル不明
322.罠は続きます!
救出したペガサスは、檻に付けられていた転移結晶の輝きと共に王都地下から脱出。
ヌエも正気を取り戻して、罠と仕掛けだらけの迷宮を自力で帰っていく。
「……この地下を徒歩で帰っていくヌエって、ちょっとシュールよね」
「そうだねぇ」
「ギミックはなかなか大変だったけど、クリアできて良かったわ」
「救助系は、残して進むと心残りになりますからね」
崩落罠の部屋を通過して、通路を進んでいくメイたち。
すると突然、後方から地響きがし始めた。
「お、おいっ!」
同行組の後衛が慌てた声を上げる。
先ほど通り過ぎた崩落部屋。
その崩落が進行し、今まさに通過途中の道にまでヒビが入り出した。
「逃げましょう!」
同行パーティと共に、駆け出すメイたち。
先頭を行くのはメイと、その足元を駆ける王の子。
続く部屋にあったのは、二本の分かれ道。
その右側にメイたちが入ったところで、落ちてきた鉄檻が道を塞いだ。
「ッ!?」
分断されたパーティ。
さらにメイの進んだ道も、前方から崩落が始まる。
「レンちゃんツバメちゃん! この子をおねがいっ!」
「メイっ!!」
「メイさんっ!」
メイは王の子を両手でレンの方へ投じると、そのまま穴に落ちていく。
レンはキャッチした王の子をしっかりと抱き留め、ツバメは檻の隙間から必死に手を伸ばすが届かない。
「私たちも逃げないと!」
追ってくる崩落の波。
レンたちも残った左側の道へ、慌てて駆け込んだ。
「マジかよ……」
まさかのメイ離脱に、言葉を失う同行組。
「……この仕掛け、狙いは完全にパーティの分断ね」
さすがに防衛対象が先頭になって駆け込んだ先の仕掛けで、対象を巻き込む即死罠があるとは考え難い。
「本来は前衛と後衛の分断を狙った仕掛けだったという感じでしょうか」
敵の出現をいち早く察知するために、先行していたメイ。
その結果、メイとそれ以外という形になってしまった。
「人数が減って、王の子防衛が苦しくなるっていう仕掛けなんでしょうね」
こうして、進む道は一本に絞られた。
「ただ、わざわざパーティを分けさせたってことは……」
「その可能性が高いですね」
「まあ、そうなるよなぁ」
進んだ先の空間には、予想通り黒づくめの男が一人。
「……卿は倒れたか。だが魔獣兵器化による世界侵攻は我らセナトの悲願。王の子は返してもらうぞ」
現れたのは、メイたちを投棄場へ落下させたセナトの魔法剣士。
長いコートの下に軽鎧。
仮面に近い形状の兜を身に着けた魔法剣士は、二本の剣を構えた。
「第二形態といったところでしょうか」
ツバメたちも自然に武器を構え、王の子を最後列に置いた陣形を取る。
「【瞬転】」
動き出す魔法剣士。
「【黒炎魔剣】」
高速移動で距離を詰めると、黒い炎をまとった剣でツバメに斬り掛かる。
「【加速】」
「【側転】」
これを後方への移動でかわすと、魔法剣士は踏み出した右足を軸に大きく一回転。
「【葬火炎】」
黒炎をまとった薙ぎ払いで、前衛組を巻き込む形でダメージを奪いにきた。
「ッ!」
最前にいたツバメはしゃがんで直撃を回避したものの、広がる炎がかすめてHPゲージを削られる。
前衛組も早い防御で身を守ったが、同じようにダメージを受けた。
「【瞬転】」
「このスキルは確か――――上にもっ」
目の前から掻き消えた魔法剣士に、ツバメは慌てて飛び込み前転。
直後、魔法剣士の着地と共に地に刺った魔剣は大きく黒炎を巻き上げた。
「ぐっ」
前衛組を巻き込むほどの範囲攻撃。
「間違いない、こりゃ第二形態だ!」
その速度と攻撃範囲に、同行の侍が確信の声を上げる。
「隙を作ります【加速】」
回避を成功させたツバメは、すぐさま魔法剣士の懐に潜り込む。
しかし、攻撃は行わない。
「【リブースト】」
「【降魔斬】」
放たれるのは、黒炎の振り降ろし。
ツバメは反撃をしっかり誘発させたところで離脱。
優秀な前衛が攻撃を引き出し隙を作れば、同行組はそれを逃さない。
「【剣閃疾駆】!」
剣士が攻撃を当てれば、自然と――。
「連続魔法【フリーズボルト】!」
「「「【アイスエッジ】!」」」
後衛までの連携が通る。
流れるような攻撃で、3割ほどのダメージを奪うことに成功。
それでもツバメは止まらない。
「【アクアエッジ】【四連剣舞】!」
すぐに追撃を仕掛けにいく。
「【瞬転】」
魔法剣士は、ツバメの連撃を高速移動でかわす。
しかしこの回避行動は、ツバメによって『させられる』形となった。
移動先に注意を払っていた侍は、魔法剣士が現れるのと同時に刀を抜く。
「【空断ち】」
駆ける斬撃が見事に決まる。
床を二度ほど転がった魔法剣士は、体勢を立て直すのと同時に狙いを変更。
「【瞬転】」
一瞬視界から消えたかと思うほどの高速移動で距離を詰め、スキルを発動。
魔剣が深紅に輝き、豪炎をまとう。
「【炎舞突き】」
突き出された魔剣は、剣士の胸元へ。
「【シールドディフェンス】! うおおおおっ!!」
剣士は弾き飛ばされたものの、ダメージを大きく減少させた。
魔法剣士は追撃に向かうが――。
「【フレアストライク】!」
「「「【ファイアスプレッド】!」」」
後衛組のタイミング良い支援が、それを許さない。
魔法剣士は炎の砲弾を避けたところに続いた閃熱の一撃を喰らう。さらに。
すでにレンたちと同行パーティは、戦い方を知る者同士。
前衛組が即座に『道』を開ける。
「高速【連続魔法】【フリーズボルト】!」
直後、高速で飛来した氷弾がさく裂してセナトの魔法剣士を弾き飛ばした。
「相手はボス級でセナトの一員。こっちはメイがいない分、戦力は大きく下がってるけど……」
「はい」
「正直、あんまり負ける気はしないのよね」
「はいっ」
レンの言葉に応えるように、同行パーティの面々も各自の武器を構え直す。
残りHPが5割ほどになったセナトの魔法剣士は、魔剣に黒炎を灯し直した。