軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

321.雷光とギミック

「よし、ここの檻も開放だ!」

「さあ逃げろ!」

檻に付けられた転移宝珠で、消えていく動物たち。

広大な王都地下に潜り込んだプレイヤーたちは、見つけた檻を解放して回る。

目的は地下に閉じ込められた従魔や希少動物の開放と、王の子の奪還。

すでに『帰還』フェーズに入った地下クエストは、後半戦を迎えていた。

元老院卿の発令した緊急事態報によって漂う、物々しい雰囲気。

メイたちは新研究場を抜け、地下通路へと踏み出していく。

「あっ、あの子は」

道なりに進んだ先の岩場の空間にも、檻が設置されていた。

捕まっているのは翼を持つ白馬、ペガサスだ。

「早く助けてあげようっ」

檻から解放するため、メイたちはさっそく檻へと近づいていく。

「ッ!?」

すると、待っていましたとばかりに目を赤く輝かせた魔獣が道の先から現れた。

サルのような顔に虎の手足、蛇の尾を持つ魔獣の名は『ヌエ』

「ヤマトにいたのとは少し見た目が違うみたいだけど……助けたいなら、戦えってことみたいね」

先への道は続いている。

どうやら、ペガサスを見捨てて進むことも可能になってはいるようだ。

「待っててね!」

そう言って剣を構えるメイ。

ヌエは駆け出すと、突然まばゆい輝きを放った。

「雷がくるわ、気を付けてっ!」

「【ラビットジャンプ】!」

レンの声に、慌てて飛び上がるメイ。

ヌエは雷光をまとい、一直線の高速体当たりを仕掛けてきた。

「どうしてわかったのですか?」

「ヤマトで中ボス級のヌエが出てきた時に使ってた気がしたのよ。それじゃなくても雷獣と一緒くたにされがちな魔獣だから、光が見えたら雷系のスキルを使うんじゃないかと思って」

「詳しいのですね」

「……こういうのに詳しいのがカッコいいと思っていた時期が、私にもありました」

目を虚ろにするレン。

【雷光体当たり】を回避されたヌエは、そのまま壁に突撃。

すると石壁に大きなヒビが入り、石塊がゴロゴロと落ちてきた。

「行くぞ!」

この隙を突きに向かったのは、同行パーティの侍。

「【六花閃】!」

ヌエは早い移動でこれをかわす。

すると駆け抜けた剣閃が壁を穿ち、さらにヒビが大きくなった。

「気を付けて。回避された攻撃が壁や床に当たると部屋が崩れるギミックがあるみたい!」

「ッ!!」

こうなると後衛組は、下手に魔法が撃てない。

「崩れが進むと檻が封じられてペガサス救出が不可能に、その後私たちも生き埋めってところかしら」

対してヌエは同行パーティに接近し、全身の毛を逆立てると――。

「ッ!!」

駆ける八本の雷。

縦軌道の範囲攻撃に同行組は慌てて逃げ出すが、天井を穿った雷撃によって大きな岩塊が崩れ落ちてきた。

「しまった!」

慌てた後衛がわずかに足を滑らせた。

衝突とはいえ大ダメージ必至のギミックに驚いた魔導士二人に、容赦なく落下してくる岩塊。

「ツバメちゃん!」

「はいっ!」

メイの言葉一つで、二人は即座に役割を把握。

「【加速】【リブースト】!」

「【バンビステップ】! 【装備変更】!」

ツバメは最速の直線移動で、落下してくる岩塊の下をくぐり魔導士たちを救出。

同じくメイも岩塊を潜り抜けてヌエのもとへ。

「【キャットパンチ】!」

【狐火】によって青い炎をまとった拳で三連打。

振り上げる一撃で、ヌエを弾き飛ばす。

「これなら外れても、壁には当たりませんっ!」

前衛後衛どちらも範囲攻撃が使えず攻めあぐねる中、メイの超近接攻撃は有効だ。

一方岩塊の落下地点には新たなヒビが走り、足元が崩れ始める。

「逃げ道があるのは、そういうことか」

あくまで本命は、王の子との脱出。

ペガサスの救出は、おそらくミッション的なものだ。

無理をする必要はない。しかし。

爪による反撃をかわしてメイが青炎【キャットパンチ】を入れると、再びヌエの身体が輝き出す。

「【ラビットジャンプ】……あっ」

跳んでからメイ、この位置からの【雷光体当たり】は壁を崩してしまうことに気づく。

「わわわわ! 待って待ってー!」

慌てて制止を呼びかけるが、もちろんヌエは止まらない。

さっきまでメイがいた方向に、突撃をぶちかます。

「【シールドディフェンス】――っ!!」

その軌道に飛び込んできたのは、同行の剣士。

雷光の突撃に弾き飛ばされたものの、壁への被弾は防いでみせた。

「ありがとーっ!」

剣士に体当たりを決めたヌエは、体勢を整えると全身に電気を走らせる。

すると足元一帯にバチバチと火花が閃き出し、岩壁が大きく震え出す。

「これ、一気に崩落を進行させる攻撃っぽいぞ!」

「こいつもう壁破壊の方を優先してんだろ!」

「【旋風拳】!」

メイの戦い方を見た同行の武闘家少女が、すぐさま飛び込み放つ連続拳。

しかし足元に広がっている火花は消えない。

「お願いしますっ! 【動岩脚】!」

ここで武闘家は戦略を変更。

敵を動かす目的で使われる武闘家スキルを叩き込む。

蹴り飛ばされたヌエは、狙い通りメイの目前へ。

「おまかせくださいっ!」

ヌエは体勢を立て直すのと同時に、辺り一面を焼き尽くす雷撃を放出する。

しかしメイも、その瞬間を逃さない。

「【フルスイング】だ――――ッ!」

駆け抜けていく猛烈な雷光。

その威力に、全員が崩落を危惧して辺りを見回すが――。

「……崩れ、ない」

メイの【フルスイング】が、ギリギリのところでヌエのHPゲージを削り切った。

雷光の判定は、岩壁の崩壊を起こす前に消えてくれたようだ。

「間に合ってよかったー!」

助け出したペガサスの頭を抱きしめて、歓喜するメイ。

ペガサスもメイも、尻尾をブンブンさせている。

「盾防御と蹴り飛ばしが見事でしたね」

「メイちゃんが先に、超近接が有効だって答えを見せてくれましたから」

戦いを振り返るツバメと武闘家少女。

壁を守るためにとっさに盾による防御を見せた剣士も、大きく息をつく。

「助けられてよかったなぁ」

「「本当です」」

ペガサスと仲良く戯れるメイ。

ツバメたちの視線に気づいて「ありがとうございましたーっ!」と手を大きく振る。

ツバメは剣士と武闘家少女と並んだまま「本当に良かった……」と、うなずき合うのだった。