作品タイトル不明
320.地上へ向かいます!
「おまたせしましたーっ!」
三人が『星屑』に戻ってくると、王の子がすぐに駆け寄ってきた。
早くもメイに懐いており、そのまま足元にすり寄って来る。
昨夜メイたちは、元老院卿を倒し王の子を檻から出したところでログアウトした。
帰り道は、ここからスタートとなる。
「おお……」
猫のような尾に、狐のような顔つき。
長い耳と尾はエメラルドグリーン。
王の子がメイの頬に頭を擦りつける姿に、思わず癒される。
「これ、普段の行いが悪いと逃げられちゃったりするのかね」
「ありそうだなぁ」
そんなことを冗談交じりに話す同行組だが、実はその通りだったりする。
『動物』との仲の良さ次第では、距離を取られてしまうこともある。
そしてそれは、帰り道の難易度を変えてしまう要素でもある。
「よし、俺たちもこれでそろったな」
ツバメの大ボス一撃必殺にしばらく放心状態だった同行パーティも、メイたちに合わせるため休憩を取り、戻ってきた形だ。
「それでは、王の子ちゃんと一緒に地上に帰りましょう!」
「親御さんも迎えにくるみたいだしね」
「がんばりましょう」
お迎えに間に合わなければ王都は崩壊。
制限時間を背負った状態で、新研究場を後にするメイたち。
「このままで、終わると思うな……」
すると突然、倒れ伏していた元老院卿が顔を上げた。
「セナトはすでに貴様らの動向を把握している……王の子は我らが悲願。連れて行くつもりなら、これからは全ての魔獣が、王都兵たちが敵だと思え……っ!」
そう言って、手にした宝珠を握りつぶす。
すると灯っていた青の炎が一斉に赤色に変わり、不穏な音色の鐘が鳴り響いた。
まさに、『緊急事態』を告げる演出だ。
「今のが後半戦の合図ってわけか」
雰囲気を変えた新研究場に、思わず息を飲む同行パーティ。
「……元老院卿、倒れたまま私たちの帰還を待っててくれたのね」
「あの場所に何時間も倒れ続けていたのですか……」
そんな中、後半戦の開始を告げるために何時間も待ち続けた元老院卿に、思わず一言添えてしまうレン。
ログアウト中はイベント進行の時間が停止しているのだが、同行パーティの面々は思わず吹き出してしまう。
こうしてメイたちは、地上を目指して動き出した。
乗ってきたエレベーターを再度利用して、まずはホールへ戻る。
「いたぞ! ヤツらだ!」
「王の子を取り返せ! 冒険者は失敗作たちのエサでいい!」
たどり着いたホールには、すでに迫り来る元老院兵たちの姿があった。
「うわ、いきなりけしかけてくるのかよ」
「後半戦のスタートだから派手目にしたんかねぇ」
さっそく始まった復路クエスト。
「ここからは本当に、護衛が必要になるようですね」
王の子にも、しっかりHPゲージが表示されている。
「でも、こんな通路を真っすぐ走って来ちゃうのは少し安易なんじゃない?」
レンの言葉に、駆け出したのはメイ。
「いきます! 必殺の【ソードバッシュ】だーっ!」
通路を駆け抜ける衝撃波が、元老院兵たちを一網打尽。
「この子たちはどうするのかな?」
メイは通路を進みながら、捕らえられた魔獣たちに視線を向ける。
「従魔や動物たちの解放クエストの条件は檻を開く、もしくは……転移結晶だな」
各所で同時に進んでいる『魔獣・動物開放』クエストの方式にのっとって宝珠を探す剣士。
緊急事態に移行したことで、先ほどまで消灯していた宝珠の操作が可能となっていた。
起動すると、転移結晶が輝き魔獣たちが消えていく。
「これで魔獣たちは『開放』の判定になるはずだ」
「よかったぁ」
安堵の息をつくメイ。
「落とし穴の部屋にいた子たちも、助けてあげないと」
「それなら、王都兵を連れ帰る際に地上へ戻ったメンバーが救助に向かってる」
「おおーっ!」
「私たちは、地上への帰還に集中でよさそうね」
メイたちとの帰り道に向けて、機転を利かせた剣士の判断がここで活きる。
「……ですが、超大型の檻は」
「何の変化もない。嫌な感じがするわねぇ」
魔獣たちは無事に転移を終了させたものの、巨竜たちは残ったまま。
解放は不可能のようだ。
そして投棄場から入り込んだ際に使った道は、再び閉まっていた。
メイたちは新研究場の正面通路から脱出を計る。
両開きの鉄扉を開くと、そこは大きな洞穴だった。
「ッ!!」
見えた矢の飛来に、メイはすぐさま肩に乗せた王の子と共に身体を引く。
直後、矢が足元に突き刺さった。
そこにはまたも、王の子狙いの元老院兵たち。
「逃がすな! あの小型魔獣はどんな手を使ってでも取り戻せ!」
「メイ、ツバメ!」
「りょうかいですっ!」
「はい!」
先行したのはメイたち三人。
「高速【連続魔法】【フレアアロー】!」
「【跳躍】【連続投擲】!」
「【投石】っ!」
まず石壁上部の出っ張りから矢を放ってきた三人の弓術師を、すぐさま打倒。
そしてメイの【遠視】は、すでに捉えている。
同じく壁面上段に隠れていた魔導士の放った氷弾を――。
「【装備変更】【フルスイング】!」
これを【魔断の棍棒】で打ち返して撃破。
「「「【アイスエッジ】!」」」
遠距離攻撃隊の打倒で、前方に意識を集中できるようになった同行パーティ。
迫る元老院兵たちを、後衛組がけん制した。
「【大回転】!」
距離を詰めた剣士が、回転斬りで元老院兵たちを弾き飛ばす。
「【六花閃】!」
後続兵士は侍の六連撃が倒し、生き残りを武闘家が【正拳突き】で片付けた。
これによって余裕ができたレンは、杖をしっかり構えて狙いをつける。
「【フレアバースト】!」
これにて元老院兵たちを一掃。
ここまでの道のりで身に付けた見事な連携で、幸先の良いスタートを切ることに成功した。