作品タイトル不明
323.レン・ツバメ組の戦い
メイが託していった『王の子』
取り戻しにきたセナトの魔法剣士は、前戦よりもパワーが増していた。
「【瞬転】【降魔斬】」
速い接近から、黒炎をまとった剣の振り降ろし。
しかし前衛の核となったツバメを捉えるには、わずかに遅い。
「【速転】【炎舞突き】」
黒炎を噴き上げつつ放たれる突きは、横へのステップでかわす。
「【瞬転】【葬火炎】」
二刀流ならではの速いつなぎの攻撃が、付近を薙ぎ払う。
しかし先ほどツバメが見せた回避によって、すでにモーションや攻撃範囲は知られている。
同行組も、身を低くすることでこれをかわす。
しかし、この戦いは後半戦。
セナトの魔法剣士も、これだけで終わらない。
「……卿を倒しただけのことはある。ならば」
HPが5割というところまできたことで、もう一段回パワーを上げてくる。
狙いは、先頭のツバメだ。
「――――【葬炎乱舞】」
速い踏み込みから放つ、炎の二刀流八連撃。
「ッ!!」
巻き起こる黒炎と共に、駆けていく閃熱。
ツバメは必死の回避で、最初の三連撃をかわす。
続く回転からの二連撃は、さがりながら体勢を落とすことで回避。
しかしこの直後の6連目がとにかく速い。
「っ!」
肩をかすめる黒炎剣。
続く七連目の突きはギリギリのところでかわすが――。
最後の一撃は降り下ろし。
直撃こそしなかったものの、足元から噴き上がった黒炎の範囲は広い。
「く、うっ!」
受けたダメージは4割に届くほど。さすがに強力だ。
「うわあっ!」
さらに駆け抜けていった閃熱が、流れ弾となって炸裂。
後列組にもダメージを与えた。
わずかに崩れた陣形。魔法剣士は攻勢を強める。
「【業火炎剣】」
スキルの発動によって、斬撃の全てが閃熱を飛ばすよう変化。
「うおおっ!」
いよいよ遠近どちらにでも攻撃が可能となった魔法剣士。
「【連続魔法】【フリーズボルト】!」
「【瞬転】」
レンはその動きを止めようと魔法を放つが、これをかわして同行組のもとへ特攻。
「ぐあっ!」
「きゃあっ」
駆ける閃熱で侍を斬り、続く払いで武闘家を吹き飛ばす。
「【速転】」
さらにその場で一回転。
「【葬火炎】」
「「「きゃああああっ!」」」
炎の薙ぎ払いで、後衛魔導士組を瀕死にまで追い込んだ。
怒涛の攻勢をみせる魔法剣士は、一気に勝負をつけにいく。
「【加速】」
そこに駆け付けていくのは、やはりツバメだった。
「【葬炎乱舞】」
対するは閃熱の連続攻撃。
しかし、このスキルも二度目だ。
「【壁走り】!」
迫る閃熱の乱舞を前に、ツバメは壁を駆け上がりそのまま【天井走り】へと移行。
放たれる熱波は、すべて一呼吸ずつ遅れてツバメの後を追う形になる。
たどり着いた魔法剣士の直上。
ここでスキルをオフにすると、始まる落下。
「【アクアエッジ】」
空中から放つ水刃の一撃が決まり、魔法剣士が体勢を崩す。
「「「【アイスエッジ】!」」」
陣形は崩されたまま。
それでもすかさず後衛魔導士たちが追撃を放つ。
これを魔法剣士は決死の回避でかわしたものの、レンがわずかにタイミングを遅らせて追撃を狙う。
「【誘導弾】【フリーズストライク】」
これをかわし切れず、魔法剣士は大きく弾き飛ばれた。
「……なんとか一度、大きく隙を作りたいわね」
「隙を作るだけなら、任せてくれ」
そう言って、剣士が走り出した。
魔法剣士は一人駆け出してきた剣士に狙いをつけると、炎の魔剣を振り降ろす。
「【ウォールシールド】」
それはその場から数秒ほど動けなくなるものの、『動かないほど』強固な守りを張る盾スキル。
「【降魔斬】……ッ!?」
剣を弾かれた魔法剣士に向けて、後衛組が動き出す。
「「「【アイスエッジ】!」」」
「【加速】!」
氷刃に斬られた魔法剣士のもとに、ツバメが駆け込む。
そして二連撃を叩き込むと、後方へ【跳躍】
「高速魔法【ファイアアロー】!」
そこに入れ替わる形で飛来した炎の矢がさく裂した。
「【加速】【リブースト】」
魔法剣士は体勢を立て直し、【瞬転】で逃げ出そうとするが――。
「【紫電】」
V字移動で後方に回り込んでいたツバメが、動きを強制停止。
「追撃お願いっ!」
レンの言葉に飛び込んできたのは、同行パーティの前衛二人。
「【空断ち】!」
侍が剣閃を放ち、大きく揺らいだ隙に武闘家が距離を詰める。
二発の拳打を叩き込み、スキルを発動。
「最後おねがいします! 【動岩脚】っ!」
敵を任意の方向へ弾き飛ばす蹴り技で、魔法剣士は隙だらけの状態でツバメの前に。
「――――【雷光閃火】」
足元に雷光の線を描きながらの接近。
突き刺した【ダインシュテル】が、猛烈な勢いで火花を散らす。
そして、爆発。
HPが全損し、セナトの魔法剣士は倒れ伏した。
「やったわね」
「はいっ」
ハイタッチを決めるつばめとレン。
「闇の使徒ちゃん、アサシンちゃん先導の戦いも見事に機能するな」
「前衛後衛、エースが引っ張る戦闘は芯があって良いですね」
同行組も無事生き残り、歓喜の声をあげた。
◆
「わああああああ――――よっと!」
罠による崩落に巻き込まれたメイは、見事な着地を決めた。
「レンちゃーん! ツバメちゃーん!
呼びかけてみるが、返事はない。
どうやらレンたちも、崩落に追われて先に進んで行ったようだ。
「どこかで合流できるかもしれないし、先に進んでみよう!」
メイが落ちてきたところも、これまでと似たような石造りの道が続いている。
「あっ、道が二本に分かれてる」
どうやら壊れかけの魔法灯が照らす道と、明かりもない真っ暗な道、二つに分かれているようだ。
「……どっちかな」
ついさっき罠にかかったばかりのメイは思案する。
するとそこに、一匹のネズミが駆けてきた。
「すみませーん、これはどっちにいけばいいんでしょうかっ」
小さなネズミとはいえ動物。
メイがたずねると、ネズミは暗い方の道の前を指さした。
「かわいいーっ! ありがとうーっ!」
小さな手で暗い方の道を指さしたネズミに手を振りながら、メイは暗闇の中へ。
進んだ先にあった落とし穴を【暗視】で発見して、難なく跳び越える。
するとその先には、岩肌がむき出しの空間。そして。
「んー……まいったなぁ」
大きな岩に道を封じられて困る、怪盗の姿があった。