軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

313.王都の地下深くで

「た、助かった……」

『失敗作』モンスター、キマイラを打倒したメイたち。

岩塊の陰からはい出てきた元老院兵NPCは、安堵の息をついた。

「それで、元老院兵がなんでこんなところで魔獣に襲われてたの?」

「……王都を巨竜が襲っただろう? あれは俺が使う転移結晶を間違えたせいで起きたんだ……元老院が隠れて行っている実験の一端を公にしてしまったことで、こうして【投棄場】に落とされたってわけだ」

「なるほど……化物の巣に落として処刑するっていうやり方ね」

それはゲームなどでも稀にみる、割と生還率の高い処刑法だ。

「イベント冒頭のドラゴンは、そういう経緯で出てきたのですか」

「王都イベントのスタートには結構、王都地下と元老院へ続くヒントが出ていたわけね」

「すごーい……」

巨竜の転移ミスをした元老院兵に、メイが問いかける。

「王の子ちゃんを助けたいんです! どこに行けばいいんですかっ?」

「王の子……? あの狐みたいなやつを取り戻す気なのか? 大物魔獣の狂化使用は元老院の悲願だ……立ち向かうのは大変だぞ」

「それでも、助けたいんですっ!」

「そうか。それならこの【投棄場】を抜けて【新試験場】の方に向かう必要がある。大物は間違いなく、そこに連れて行かれる」

「新試験場……」

「ここは既に使われなくなった旧試験場なんだ。もちろんいくつか通路があるんだが……どうだ、道案内するから俺をここから出してくれないか?」

「いいんじゃない? この広い地下、狂化した魔獣の巣をうろつくより、案内してもらった方が早く着けると思うわ」

「そう言えば時間制限もあるっぽいんだよな、地下のクエスト」

同行パーティも、意見は同じ。

こうしてメイたちは、元老院兵と共に【投棄場】からの脱出を狙うことにした。

再び元老院兵にHPゲージが現れる。

どうやら護衛クエストの形式でもあるようだ。

「待っててね、皆助けるから!」

メイはそう言って、伏したままでいる黒トラの頭をなでる。

「そうだ、キマイラから助けてくれた礼だ。先に進むのなら何かの役に立つかもしれない」

そう言って元老院兵は、紫に輝く石を取り出した。

【進化の秘石】:使用するとレベルを持つスキルを向上させることができる。

「レアなアイテムだな。レベル持ちスキル自体はあんまり見ないが……何かあてはあるか?」

「さっき使った【魔力蝶】がそうだけど……」

「ここでの戦力アップは助かるな。ぜひ使ってくれ」

「いいの?」

「俺たちはオマケみたいなもんだからな。スキルのレベルを上げても突然大活躍とはならんだろう」

「なんだか本当に、生き延びるための選択をしている感じですね」

攻略難易度の高い王都地下。

仕掛けは凶悪、魔獣もセナトもとにかく強い。

ここまで来たら単純な死に戻りなどしたくない同行パーティの面々も、地下深くまで自力で来た実力者たち。

キマイラ戦で驚異的な活躍を見せたレンの魔法攻撃力向上が、今後の戦略に重要になると判断したようだ。

「それじゃ、進みましょうか」

「うんっ!」

王の子を救うため、メイたちは再び歩き出す。

【投棄場】もその範囲は広く、各所から聞こえてくる狂化魔獣の声が緊張感を高まらせる。

「ゴアアアアアア――――ッ!!」

「「「ッ!?」」」

そんな中、突然聞こえてきた恐ろしい咆哮。

その凄まじさに、誰もが身体を大きく振るわせた。

「まさか……ヤツはまだ生きているのか……っ?」

元老院兵が、一瞬で顔を青ざめさせる。

「ヤツって?」

「【投棄場】にはこれまで数多くの魔獣たちが放り込まれてきた。そしてその中には……【恐るべき失敗作】と呼ばれる個体がいるんだ」

「恐るべき失敗作?」

「コード名は【ミドガルズオルム】。もともと驚異的な強さと獰猛さを持ったモンスターだったが、どんな薬物を使ってもコントロールすることができず……地下研究場を半壊させるに至った正真正銘のバケモノだ」

これまで聞こえていた魔獣たちの声がピタリと止まり、一転慌てて逃げ出していく。

「魔獣たちのこの反応……ヤツは今も狂ったまま、失敗作たちの王となっているに違いない」

「どうにか避けて通れないのか?」

剣士の問いかけに、元老院兵は無念そうに首を振る。

「この道を通らないと【投棄場】からは抜け出せないんだ……」

「王の子を助けたければ、勝って進めということですね」

「よ-し! がんばりましょう!」

「ええ、ここで引き返すなんて考えられないわね」

気合を入れ直すメイを先頭に、【ミドガルズオルム】のもとへと向かう地下攻略組。

やがて大きな石積みの空間に出た。

元老院兵は、ヒザから崩れ落ちる。

「間違いない、【ミドガルズオルム】だ……俺たちはここから……出られないんだ……っ」