作品タイトル不明
311.地下実験場と組織
「よくこんな大きなクエストが残ってたよな……そもそもどうやって始まったんだ?」
王都地下で一緒になった10人ほどのパーティと、地下実験場へと向かうメイたち。
7年隠れていた大クエストに、先頭の剣士が疑問を口にした。
「ハウジング用クエスト持ちの植物学者から始まった形ね」
「……なかなか見つからねえはずだ。魔獣の大群が来るってのは本当なのかね?」
従魔ギルドではすでに、王都地下攻略クエストが提示されている。
だが中には、王都地下発見の勢いに任せて駆けつけた者、メイたちがいるという情報だけでやって来た者も多いようだ。
「『王の子』を取り返すのがこの地下クエストの目的。時間内に間に合わなければ魔獣たちに王都が破壊されるんだと思うわ」
「ひええ……」
『星屑』の首都を破壊するという規模の大きさに、剣士は感嘆する。
道はただ真っすぐ。
やがて見えてきたのは、重厚な両開きの鉄扉。
手に入れたカギを差すと光が灯り、ゆっくりと左右に扉が開いていく。
「……ここが、王都兵の言ってた実験場か」
「従魔とか、強い能力を持つ動物をここに連れて来て兵器にするんだろ?」
「なんだよここ……怖すぎだろ」
同行パーティのメンバーたちは、その光景に目を奪われる。
薄暗い大部屋。
敷き詰められた、紋様入りのブロック。
その上に並んだ無数の檻の中には、見たこともない魔獣や動物が閉じ込められている。
そして最奥には試験管や魔法石、見たこともない薬物が並び、いかにも良からぬ実験が行われていそうな雰囲気だ。
「早く出してあげないと……っ」
メイもふくらんだ尻尾をブルブルさせている。
「何者だ!」
そこに入り込んできたのは、五人の元老院兵。
「捕らえろ! 一人も逃すな!!」
メイたちを見つけるや否や、すぐさま剣を抜いた。
「くるぞっ!」
剣士の一声で、同行パーティの面々は即座に陣を整える。
「【シールドディフェンス】!」
先行してきた元老院兵の光槍を、真正面からガード。
「【バックステップ】」
硬直を消しつつ後方へ跳ぶと、すでに後衛の準備は整っていた。
「「「【ファイアスプレッド】!」」」
手前四体を一斉に吹き飛ばす、閃熱魔法の重ね掛け。
残った後方の元老院騎士も――。
「【剣閃疾駆】!」
剣士の放った衝撃波が突き刺さり打倒。
同行パーティは見事、元老院兵たちを片付けてみせた。
「さすが、ここまで降りてくるパーティは戦い方も上手ね」
「お見事です」
その連携に感心するレンとツバメ。
倒れ伏す元老院兵たちを前に、同行パーティも安堵の息をつく。
しかしそこに影の様な男が一人、音もなく落ちてきた。
「「「ッ!?」」」
無言のまま走り出す、黒の魔法剣士。
その凄まじい速度に、前衛の防御も間に合わない。
「【黒炎魔剣】」
手にした剣に黒の炎を灯し、一瞬で迫り放つ一撃。
「ぐあっ!」
「【速転】」
さらに左足を軸にした高速半回転で戦士を斬り、大きな踏み込みで侍を斬る。
「い、今の攻撃で全員6割以上持っていかれたぞ!?」
「この速度でこの威力って強すぎだろ……って、消えたッ!?」
「【瞬転】」
短い距離だが、魔法剣士はほとんど瞬間移動のような速度でプリーストの前に。
「【炎舞突き】」
「しまっ……!」
反応が遅れたプリーストに、突き出される炎の魔剣。
「とっつげきー!」
一撃死の危機を救ったのは、【鹿角】に装備を替えたメイ。
【突撃】によって、黒の魔法剣士を弾き飛ばした。
「ありがとう! 助かった!」
「いえいえっ! 【バンビステップ】!」
メイは笑顔を見せながら、速い走りで魔法剣士に追撃を入れに行く。しかし。
「【瞬転】」
「わあ、消えたあっ!?」
突然視界から魔法剣士が消えて、驚くメイ。
虚を突く形の攻撃は唯一、メイからダメージを奪う可能性を持つ戦法だ。しかし。
「メイさん! 上ですっ!」
ツバメの声に、即座に反応。
「大きくなーれ!」
【蒼樹の白剣】を振り上げると、その成長によってムチのようにしなった剣が宙空を払う。
「くっ!」
弾き飛ばされた黒の魔法剣士は、カウンターをくらい大きくHPを減らした。
「【加速】」
そこに飛び込んで行くのはツバメ。
ダガーによる連撃を真正面から放つ。
「【瞬転】!」
魔法剣士は決死の回避で、後方へと距離を取る。
こうしてどうにか、体勢を立て直したかに見えたが――。
「【ラビットジャンプ】【アクロバット】!」
そんなツバメの背を飛び越してくる形で、メイが飛びかかってきた。
【ラビットジャンプ】は跳躍角度も自由自在。
速い低空跳躍で突然現れたメイに、魔法剣士は反応し切れない。
「ジャンピング【フルスイング】だああああ――――ッ!!」
飛びかかる獣のように鋭く、それでいて異常なまでに豪快な一撃が振り下ろされる。
吹き飛ばされた魔法剣士は派手にブロックの上を転がり、倒れ伏した。
「やったね! ツバメちゃん!」
「はいっ」
見事なコンビネーションを決めたメイとツバメは、軽やかにハイタッチ。
「……これが『セナト』ってやつかしら」
「セナト?」
「魔獣を狂わせて、兵器にする実験を行っている組織だって聞いてるわ」
「……王都、マジでヤバイな」
「それにしてもすごい戦いだった……」
「これでメイちゃん、まだ全然本気じゃないんだろ……?」
すっかり観客モードになってしまっている、同行パーティの面々。
「……いや待て、HPが残ってるぞ!」
しかし、魔法剣士のHPは1だけ残っていた。
「……くっ」
セナトの魔法剣士はヒザを突き、その目をメイたちに向ける。
「なんという驚異的な強さ……だが貴様らは、ここで消える」
そう言って魔法剣士が、取り出した魔法石を起動させると――。
「えっ!?」
突然、足元の紋様入りブロックが崩れ落ちた。
「ええええええええ――――っ!?」
「うおおおおおおおおーっ!」
「きゃああああああ――っ!!」
一人残さず、落下していく。
深い王都地下のさらに奥へ。
「そこは『失敗作』の集まる【投棄場】……落ちれば二度と戻ることのできない、禁忌の地だ」
セナトの魔法剣士は、そう口にして再び倒れ込んだ。