軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

309.王都地下迷宮

暗い地下道を、ドキドキしながら進んで行くメイたち。

王都地下には、すでに多くのプレイヤーが潜り込んでいる。

幻影を使う魔獣の洞穴を抜けた三人が石造りの道を進んで行くと、足元に大きな配管が現れた。

道らしい道はここで途切れていて、先へ進むにはこの中に入るしかないようだ。

「いよいよ地下って感じだね……っ」

直径2メートルほどの管。

ドキドキしながら、三人は内部へと飛び降りた。

「……これ、方向感覚おかしくなるわね」

道は右へ左へと曲がっている。

少し進んだだけで、自分がどっちから来たのかもよく分からなくなってしまう。

この配管は、王都の各所に伸びる迷宮。

また無数に枝分かれしていて、一度迷えば何十時間でも歩き続けられる。

メイたちが発見してから数時間で、すでに多くのプレイヤーを捕らえ、迷わせ、リスポーンさせている魔境だ。

「「「うわあああああーっ!!」」」

突然、どこかから悲鳴が聞こえてきた。

「おいおい、ここじゃ逃げ場もねえぞ!」

「大変なことになってる……っ」

聞こえてきた音に、メイが尻尾を震わせる。

その狭さゆえに生じる緊張感。

ただひたすらに配管の中を進んで行くと、今度は猫耳をピクリとさせた。

「くるよっ!」

レンとツバメはすぐに構えを取る。

猛然と駆けてきたのは、二つの顔を持つ巨犬オルトロスたち。

二頭は縦に並ぶ形で、迫って来る。

「ここじゃ長い武器、大きな武器は使えそうにないわね……でもっ」

メイはすぐさま走り出し、敵の懐に潜り込む。

「【キャットパンチ】」

メイは猫パンチで、先頭のオルトロスを足止めする。

反撃は喰らい付き。

しかし四足歩行型の攻撃は、よそ見していてもかわせるほどに慣れている。

「それーっ!」

カウンターで巨犬のあごに猫パンチを叩き込むと、オルトロスが大きく体勢を崩した。

「【壁走り】」

その隙を突き、ツバメは配管内を一回転するように走りオルトロスの目前に。

「【アサシンピアス】!」

そして、ダガーを胸元に突き刺した。

崩れ落ちる一頭目のオルトロス。

すると背後にいたもう一頭が、即座に喰らい付きにきた。

「一歩下がって!」

しかしそんなツバメの脇をすり抜けて、飛び込んできたのはレン。

ツバメと入れ違うように前に出ると――。

「【フリーズブラスト】!」

【銀閃の杖】から放たれた冷気が、配管内を駆けていく。

当然、ここでは逃げ場などない。

二頭目のオルトロスも、猛烈な氷嵐を受け粒子となって消えた。

「やりましたね!」

見事な三連撃を決めた三人は、その場でハイタッチ。

「レンちゃんっ!」

しかし異変に気付いたメイが再び声を上げた。

レンが振り返るとそこには、硬質な鱗を持った紫色の大カエル。

「オルトロスに少しでも時間をかけたら挟み撃ちって……難易度高すぎでしょっ!」

三人は即座に戦闘の構えを取るが、紫カエルは大きく息を吸い身体をふくらませた。

「メイ、ツバメ、下がって!」

レンは叫んで走り出す。

次の瞬間、カエルは紫色の煙を吐き出した。

「毒ブレス! ここで使われるのは最悪だわっ!」

放たれたブレスは【フリーズブラスト】同様、配管内に凄まじい速さで広がっていく。

こうなってしまってはもう、距離を取るほかにない。

三人は慌てて配管内を駆けていく。

しかし、行き止まり。

そこには配管の形に即した、丸型の鉄扉が付けられているのみ。

大型の金庫に使われていそうなその扉に、ツバメが手を伸ばしたところで――。

「待ってツバメ! その鉄扉は気を付けて!」

レンの指摘に、扉に手をかけた状態でツバメはハッとする。

「【罠解除】」

慌ててスキルを発動。

すると扉の向こう側から、水が抜けていくような音がした。

あらためてツバメが扉を開くと、続く配管の足元には黒い液体がわずかに残っていた。

それは慌てて開くと一気に流れ込み、問答無用のリスポーンを強いる即死罠だ。

「……あぶなかったです」

急いで鉄扉を閉め、毒煙を遮断する。

「本当に容赦ないわね……この狭い場所でモンスターの使う技が毒ブレス。慌てて逃げた先の扉に即死罠って……」

「まだだよ、レンちゃんっ!」

メイが指を差す。

一息ついた先の区画も、変わらぬ配管の道。

しかしその奥、上部から鉄の壁が降りてくる。

あれが降り切ってしまえば、ここは行き止まり。

毒煙の道へ戻らなくてはいけなくなってしまう。

「【加速】【リブースト】!」

それを見たツバメは、同一方向への加速で一気に距離を詰める。

「【電光石火】!」

そこからさらに加速攻撃スキルをつないで再加速。

配管内を走り、今まさに閉まろうとしていた鉄壁の隙間にすべり込んだ。

そして配管横に付けられたレバーを、力いっぱい持ち上げる。

「……止まりました」

どうにか人がしゃがんで通れるほどの隙間を残して、鉄壁の落下を止めることに成功した。

「ツバメちゃんカッコよかったよー!」

駆けつけてきたメイが、ツバメに飛びつく。

「最高の判断だったわ!」

レンも大きく安堵の息をついた。

「あ、ありがとうございます」

よろこぶメイとレンに、照れるツバメ。

「それにしても、とんでもない罠の連続だったわね」

「本当です」

「無事に抜けられてよかった!」

配管内に張られた怒涛の罠を、最高の形で掻い潜ったメイたち。

今現在も無数のパーティがこの恐ろしい迷路で迷い、倒れ、途方に暮れている状況下。

見事、最短と言っていい速度で配管区画を抜け出すことに成功した。