軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

305.王都の地下に潜むもの

「ここは……」

マンホールから王都地下へとやって来た従魔ギルドのマスターは、驚きに目を見開いた。

地下室に並ぶ鉄の檻。

そこには、十数頭に及ぶ中型従魔が閉じ込められている。

「この子たちは皆、行方不明になっていた従魔で間違いない。すぐに盗賊ギルドのマスターに話を通し、開錠を依頼しよう」

「その必要はないよ」

「あっ、怪盗さんっ」

そこにやって来たのは、牢屋で共闘したばかりの怪盗少女NPCだ。

「【アンロック】」

開錠スキルを使い、怪盗は次々に牢屋のカギを開けていく。

「ここにも従魔が捕らえれていたんだね」

「ここにも?」

怪盗の言葉に、レンが怪訝そうな顔をする。

「王都の地下には、たくさんの魔獣や動物が捕らえられているんだよ」

「誰が、なんのために?」

レンが問いかける。

「首謀は武力による領土拡大を目論む過激派……王都元老院だね。そして『セナト』は、捕らえた魔獣を薬で狂わせて『兵器』にする研究を行っている組織なんだ。ここ、王都地下で」

「……薬って、もしかしてあの錬金術師がしてた取引は」

「自分が何をさせられているのか知らずに、手伝いをさせられていた末端ってところじゃないかな。君たちはそんな錬金術師に禁止薬物を運ばされて、王都兵に捕まったみたいだね」

「ということは、王都兵の中でも元老院兵は単独行動をしてる感じなのね」

「そして今回、セナトの魔の手はついに……『王の子』へと伸びたみたいなんだ」

「なんだと……っ!?」

マスターが、途端にその表情を変えた。

「王の子とはなんですか?」

「ロマリアを中心としたこの大陸に住む動物や、魔獣たちの王。その子供だ。今はまだ小さいが、やがてこの大陸を率いる大物になるだろう」

「そんな存在を悪用することができたら、ロマリア元老院……セナトにもう敵はいないよね」

「そういうことだったのか……従魔や動物たちがさらわれていたのも全て、兵器として利用するため」

「ひどーい!」

その情報に、メイは怒りをあらわにする。

「……うん?」

そして【聴覚向上】が、異音を捉えた。

「どうしたの?」

「何か聞こえる……たくさんの足音。あっち!」

そう言ってメイは走り出す。

地下室を出て通路を駆けていくと、たどり着いたのは格子窓のはめ込まれた行き止まり。

見えるのは、一階分低い位置に作られた石作りの広間。

そこに赤い腕章をつけた元老院兵たちが、檻を運び込んできた。

しっかり着込んだ鎧と大仰な武器。

人数も多く、かなり厳重な警備体制が敷かれている。

「あっ」

魔法のかかった檻の中には、長い耳をした猫のような動物が閉じ込められていた。

「きっとあの子だよね」

「初めて見ました」

つぶやくメイとツバメ。

白い身体に、エメラルドグリーンの耳と尾。

悲しそうな瞳で伏せる神秘的な動物を、元老院兵は言葉もなく運んでいく。

そして転移結晶を起動すると、どこかへと消えていった。

「……間違いない、王の子だ」

無念そうに息をつくギルドマスター。

「ひどーい!」

メイは尻尾をペシペシさせながら、いよいよ怒りをあらわにする。

「……動物たちが街から消えるはずだ」

そう言ってギルドマスターは、頭を抱える。

「どうしていなくなってしまったのですか?」

ツバメがたずねると、マスターはゆっくりと顔を上げる。

「王の子が捕らえられたとなれば、『獣の王』が黙っているはずがない。必ずや奪い返しに来るだろう。そしてその時どれだけの数の魔獣たちが王都に攻め入って来るのかは……想像もつかない」

「ええっ!?」

「当然大型の魔獣たちもやって来るだろう。そうなれば王都ロマリアは……崩壊する」

「えええええーっ!?」

耳と尻尾をピンと立て、驚くメイ。

「……明るく楽しいロマリアに、とんでもないクエストが隠れてたものね。これ、任務に失敗したら本当に王都が潰れちゃうんじゃないかしら」

「マジかよ……」

王都の地下に長らく隠されていた、史上最大級のクエスト。

『星屑』の首都を潰すほどの規模に、サラマンダー使いの従魔士も言葉を失う。

「君はとても動物たちに愛されているようだ。元老院、そしてセナトの悪しき野望を砕くため、王都地下を進み、王の子を解放してもらえないだろうか」

「はいっ! おまかせくださいっ!」」

「あの子を放っておくわけにはいきませんね」

「もちろんよ」

メイたちはすぐに、この大きなクエストを受注した。

「それなら俺たちも地下探索をしようと思うんだが……地下はかなり広いんだろ? もう時間も遅いし、ここからは手分けして動くべきか?」

「そうね。同行者にあてがあるのなら、人数をかけて探索してもいいかもしれないわ」

「分かった。君たちはどうするんだ?」

「早く助けてあげたいのですが……もうこんな時間なんですね」

「どうしよう」

「私たちはまず、これからどうするかを決めましょうか」

急ぐどころか、現状2パーティしか知らない大型の独占クエストを迷うことなく開放しようと言うレンたちに少し驚きながら、従魔士パーティは動き出す。

「じゃあ俺たちはちょっと進んでみるか。王国地下探索、ワクワクしてきやがった……っ」

「俺たちだけだと、途端に地下が怖くなってくるなぁ……」

「本当ねぇ」

こうして従魔士パーティは、地下探索を開始。

メイたちはここで一度、ログアウトすることにしたのだった。