作品タイトル不明
303.もう一度ホワイトパンサーを探します!
「レンちゃん、どこに行くの?」
「ホワイトパンサーの発信地点から、一番近い地下通路よ」
「これで見つかるといいのですが」
怪盗から知らされた王都地下の存在。
受け取った地図を手に、メイたちは地下へと降りる方法を探す。
「おーい! この前は残念だったなぁ!」
そこに声をかけてきたのは、前回のホワイトパンサー探しで一緒だった『サラマンダー』使いの従魔士。
一緒にいる男女は、どうやらパーティメンバーのようだ。
「こっちは一応この付近をうろついてみたんだけど、ヒントを聞けるNPCはいなかった。どうだい? 何かヒントは見つかったか?」
「はいっ。ホワイトパンサーちゃんは地下にいるみたいですっ」
「……地下?」
怪訝そうな顔をするサラマンダー使い。
「この辺りに地下への路があるって、教えてもらったんだけど……」
レンは付近を見渡してみるが、街におかしな点は見当たらない。
「俺たちは地上にいたから、発信地点に行っても見つけられなかったってことか? なるほど、そういう事なら手伝わせてくれ」
そう言って従魔士は、サラマンダーのスキルを発動する。
「【ギミックアラート】」
付近にある『仕掛け』を見つけ出すそのスキル。
サラマンダーはびくりと身体を大きく揺らし、ドラゴンの攻撃で半壊した民家の裏手で足を止めた。
そこにあったのは、なんてことのないマンホール。
「ここか……?」
「考えてみれば……現実では当たり前に見かけるけど、王都で見るのは初めてね」
思い返してみれば、王都内でマンホールを見かけたことなんてない。
「よいしょっ」
鉄製のフタを、メイが軽々と持ち上げる。
そこにはハシゴが掛けられており、地下へと続いていた。
「マジかよ……王都には7年間で何百回と来てたけど、こんなの初めて見たぞ」
「ロマリアに地下があったなんて聞いたこともないね……」
「ヤバいなこれ」
息を飲む、従魔士たちのパーティメンバー。
「ドキドキしちゃうねぇ」
メイは尻尾を震わせながら、ハシゴを降りていく。
「思ったよりしっかりしてるわ」
「本当ですね。適当に通路を作ったという感じではなく、かなり本格的なものに見えます」
魔法燈が並んだ石積みの路は、長く続いている。
「ホワイトパンサーの発信地点は向こう側ね」
六人並んで、前後に注意ながら地下通路を進む。
やがてたどり着いたのは、古びた鉄扉の部屋。
「……なんだ……これ」
従魔士が驚きの声をあげる。
そこには、十体に及ぶ中型の魔獣が檻に閉じ込められていた。
「すぐに助けましょうっ!」
武骨なデスクには『7番』と書かれたカギが掛けられていた。
それはちょうど、檻の中で伏しているホワイトパンサーの檻番号と同じだ。
メイが錠を開くと、次の瞬間。
「わあっ!?」
ホワイトパンサーは頭突きで檻のドアを開け、飛び出してきた。
その目は赤くギラギラと輝き、HPゲージが表示される。
「お、おい! 戦えっていうのか!?」
ホワイトパンサーは素早い移動で一気に距離を詰め、前方にいたメイに飛び掛かる。
「うわっと!」
メイがこれをかわすと、ホワイトパンサーはそのまま標的を変更。
従魔士に襲い掛かる。
「サラマンダー! 【ボルケーノ】!」
サラマンダーが顔をあげると、口から溶岩の様に赤熱した液体が吐き出された。
しかしホワイトパンサーはこれをかわして体当たり。
「速いっ!?」
サラマンダーは転がり、壁に衝突。
さらにホワイトパンサーは追撃に向かう。
「【加速】」
ここでツバメが割って入る。
「【紫電】」
しかしホワイトパンサーは、広がる雷光の輝きも速い跳躍でかわしてみせた。
「なっ!?」
予想外の機動力に驚くツバメ。
ホワイトパンサーは切り返しから、続けざまにレンを狙いに行くが――。
そんなレンの股下から飛び出てきたのはメイ。
「がおおおお――っ!!」
広範囲に放たれる【雄たけび】で弾き返した。
「チャンスだ!」
「気を付けて! 多分だけどこのタイプのクエストは『倒してしまったら失敗』になるわ!」
「「「っ!」」」
「なんとかHPを残す形を狙わないと!」
「それならば! サラマンダー、叩きつけろっ!」
そこで従魔士は、尾による攻撃を選択。
ダメージは1割程度。
「【電光石火】!」
それを見てツバメも、火力より速さのスキルで削りに行く。
「【ファイアボルト】!」
続く炎弾でさらに削り、残りHPは6割強。
「くっ、加減しながらこの速さの相手をするのはやっかいだぞ!」
敵の機敏な動きを前に、従魔士がそう口にした瞬間。
「【装備変更】! とっつげきー!」
鹿角メイの【突撃】が、起き上がったばかりのホワイトパンサーを弾き飛ばした。
衝突ダメージとダウンによって、残りHPは5割ほど。
加えて、もう一度隙を生み出した。
「【喰らい付き】!」
サラマンダーが、喰らい付きからホワイトパンサーを放り投げる。
「【加速】【電光石火】」
その着地際を狙い、ツバメが再び切り抜けていく。
そこからさらに二連撃を決めると、ホワイトパンサーは慌てて後方への跳躍で退避。
そこにいたのはレン。
好機だが残りHPは1割強といったところ。かなり調整が難しい状況だ。
レンは少し悩んで、【銀閃の杖】を振り上げると――。
「【スタッフストライク】!」
そのまま叩きつけた。
杖の振り回しは、【ファイアボルト】の威力を下回る。
ホワイトパンサーの残りHPは、見事『ギリギリ』のところで止まった。すると。
「君の予想は正解だったみたいだな」
赤かった目が元に戻り、戦いの姿勢を解いた。
レンの言った通り、倒してしまうとそこで終わってしまうこのクエスト。
ホワイトパンサーはおとなしく、その場に腰を下ろした。
さっそくメイが駆け寄って「大丈夫?」と頭をなでると、尾を振って応える。
「この光景だけで、地下に来た意味があります……」
すぐに仲良くなってしまったメイとホワイトパンサーを見て、歓喜するツバメ。
「……なあ、あの鳥ってブラックホークじゃないか? 確か去年あたりの王都イベントで同じように行方不明になってたよな」
「そう言われれば……」
従魔士の仲間たちは、牢に捕らえられていた他の魔獣に覚えがあるようだ。
「でも今、カギがあるのはホワイトパンサーのものだけね。まずはこの子を連れて、従魔士ギルドに戻りましょう」
こうしてメイたちはホワイトパンサーを連れ、地下通路をあとにするのだった。