軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

301.運び屋メイちゃん

「お使いクエストからの、お使いクエストね」

錬金術師から受け取った紙袋を持って、メイたちは王都酒場の裏手にある廃棄タル置き場へと向かう。

『4』と書かれた廃棄タルに、荷物を入れるだけ。

まさにお使い中のお使いだ。しかし。

「中身、気になりますね」

「そうねえ……『絶対に見るな』の前フリは、果たしてどっちなのか。それによってクエストの今後が変わってきそう」

「見ちゃったらどうなるの?」

この辺の前フリがいまいちよく分からないメイは、首と尻尾を傾げて問いかける。

「見た瞬間に『これはマズい』って気づくようなものが入っていて、自分たちが狙われる立場になってしまったことを知るって感じかしら」

「途端に、周りを歩いている人たちが敵に見えたりすることもあります」

「そうなんだぁ……見ない場合はどうなるの?」

「とんでもない爆弾を抱えさせられてる可能性があって、それが気になり続けるの」

「わあ……それは確かに気になるかも……っ」

「ただ、見ちゃうとそこでクエストが終わっちゃう可能性もあるのよね……メイ、付近に怪しい人が付いてきてたりしない?」

「視線を感じることは、時々あるかも」

「いよいよ悩ましくなってきたわね。この紙袋には何が入っているのか」

悩みながら、歩を進める三人。

「おーい! 商品の搬入はこっちだぞ!」

「ああもう! 馬がなかなか言う事聞かねえんだよっ!」

「あはははは!」

聞こえてくる声は楽しそうなものばかり。

王都のイベントは、とにかく賑やかだ。

「……でも、王都イベントでそんな大変な展開はなさそうよね」

「そうですね。とにかくみんなで楽しくといった感じです」

「どっちだろう! っていうドキドキのクエストなのかもっ」

「そう考えると、錬金術師がいかにもな黒ずくめだったのも演出ってところかしら」

結局三人は、クエストが終わってしまう可能性がある『中身の確認』はせずに、王都酒場へと向かうことにした。

そのまま裏通りへ向かい、付近の店舗も利用しているのであろう廃棄タル置き場へ。

「しっかりと日陰になってる辺り、手が込んでるわね」

「どこに行ってもプレイヤーで賑わっている王都でも、人影がない場所。最後まで楽しませてくれますね」

「ドキドキしちゃうねぇ」

廃棄タルは、結構な数が置きっぱなしになっている。

メイはその中から『4』と書かれたタルを見つけ出し、紙袋を取り出した。

念のため、付近に視線を走らせるレンとツバメ。

「特に問題なさそうね」

「やはり、ドキドキさせておいて何もないパターンでしょうか」

変わらず人影はない。

メイが紙袋をタルに入れ、三人並んで廃棄場から出ようとしたところで――。

「――――動くな!!」

「「「ッ!?」」」

突然大きな声が鳴り響き、王都兵が一斉に廃棄タル置き場に駆け込んできた。

「え、ええっ?」

廃棄タル置き場に来てから、足音等は聞こえていなかったことに驚くメイ。

「メイが気づいてなかったってことは、クエストがここまできた時点で発生する展開ってことかしら」

剣や杖を抜き、王都兵たちはあっという間にメイたちを取り囲んでしまう。

「今そのタルに何を入れた?」

「配達を頼まれた紙袋ですっ!」

兵長が『4』のタルを開け、紙袋を取り出す。

そして中身を見ると、その表情が大きく変化した。

「……やはりな」

兵長が取り出したのは、錬金術師が入れたのであろうビンに入った薬液。

そして依頼を受けたトミーが用意した、果実の粉末。

「この黄色の液体と赤い粉末。この二つは動物やモンスターを狂わせると言われる危険薬物の材料だ!」

「ええっ!?」

「表には出ていないレシピだぞ……取引相手は誰だ!?」

「分かりませんっ!」

「目的はなんだ!」

「分かりませんっ!」

「お前たちは何者だ!」

「分かりませーん!」

メイは首と尻尾をブンブン振る。

「あくまでシラを切るつもりか……こいつらをひっ捕らえろ!」

「「「ハッ!!」」」

一斉に詰めてくる王都兵たち。

その手には、腕や足を光の輪で縛る魔法アイテム。

「えええええ? ええええええ――ッ!?」

動く間すら与えない強引な展開。

こうして三人は、王都兵に逮捕されてしまったのだった。

「わあー! 出してー! わたしは何も知らないんですー!」

「これは濡れ衣ですっ! 私たちは陥れられたんですっ!」

王城近く。

王都兵舎の地下牢に、メイたちは収監されることになってしまった。

メイとツバメは鉄格子をガチャガチャ鳴らしながら、無実を訴える。

「本当なんです! 信じてくださいーっ!」

「私たちは本当に、紙袋を持って行くよう依頼されただけなんです!」

「うるせーぞ!!」

見張りからぶつけられた怒声に、肩を落とすメイとツバメ。

「牢屋の収監体験はどう?」

「えへへ、本当に牢屋ってこういう感じなんだね」

「ちゃんと最後に『うるせーぞ!』と見張りの方に怒られるところまで、しっかり味わうことができました」

三人はあらためて、石積みに鉄格子という定番の牢を見回してみる。

「装備品も取られちゃうあたり、王道の流れになってるわね」

対して、あれこれとゲームを遊んできたレンは慣れたもの。

「でもレンちゃん、この後どうなるの?」

「牢屋に入った後、少し間ができるのも定番なのよ。程よく牢屋の雰囲気を味わった後に、何かしらが始まるんじゃないかしら」

「そうなんだぁ……」

メイの肩に手を乗せたまま、その時をのんびりと待つレン。

「ツバメ、どうしたの?」

なぜか少し物足りなさそうな表情のツバメに問いかける。

「いえ、装備品が取られるのは分かるのですが……」

「分かるけど?」

「シマシマの囚人服はないのでしょうか」

「そこ気になる?」

どうせなら囚人服を着た状態で「無実なんです!」と叫びたかったと、残念そうにするツバメ。

その少し変わった感覚に、レンは笑ってしまうのだった。