作品タイトル不明
286.合宿が始まります!
「ツバメちゃんのお部屋、かわいいーっ」
つばめの部屋は、外観からは少し違った和洋混ざった造りのフローリング。
静かで速いアサシンのイメージとは違って、可愛いものが並んでいる。
動物のぬいぐるみはもちろん、デフォルメされた様々なキャラクターの小物なんかもたくさんある。
「ツバメらしいわねぇ」
そして「これは……かわいいのか?」みたいな奇怪なものが混じっているあたりが、特につばめらしい。
「レンちゃん」
そんな中、さつきが机を指さした。
そこにはこれまでの『星屑』広報誌が並び、中でもメイやレンと一緒に映っているものは、プリントアウトして写真たてに入れてある。
「割と見切れてるものが多いわね……でもたぶん、運営の広報誌を世界で一番大事にしてるプレイヤーでしょうね」
これまでの冒険の順に並んだ写真たてを見て、さつきと可憐はほほ笑み合う。
同じように、可憐やさつきも広報誌を保管しているからだ。
「……あれ、なんかこの子すっごくリアルだね」
さつきはベッドの上に置かれていた、黒猫のぬいぐるみに手を伸ばす。
すると黒猫は、パッとその目を開いた。
「あっ! 本物の猫だよ!」
目を覚ました黒猫は、そのままさつきの肩に飛び乗って頭を頬にこすり付ける。
「かわいいーっ!」
「……【自然の友達】は、現実世界でも有効なの?」
いきなりさつきに懐いている黒猫。
つい先日ウェーデンで見た犬ぞり犬たちと変わらない様子に、目をしばたかせる可憐。
「お待たせいたしました」
部屋にやって来たつばめは、母の慌てようを思いだして息をつく。
「どうだった? ちゃんと信じてもらえた?」
「はい。色々しっかり説明してきたので、これで落ち着くと思います」
「普段の行いのおかげかしらね……私の時はメイがいなかったらずっと疑われてたと思うわ」
同じく『星屑』プレイヤーだった妹がメイを知っていたおかげで、儀式合宿ではないと信じてもらえたこと思い出して苦笑い。
「あら……?」
つばめのあとに続くようにして、一匹の白猫がやって来た。
白猫は、可憐のもとにやってくる。
「…………」
そして手を伸ばした可憐の指に鼻を近づけると「ふーん」みたいな態度でベッドにあがって寝転がった。
「……これが普通よね」
さつきの首元にごつごつ頭を擦りつけている黒猫を見て、可憐は首を傾げる。
つばめはクローゼットから木製のテーブルを取り出すと、持って来たお茶を並べて腰を下ろした。
三人向かい合ってお茶を飲み出すと、黒猫は当たり前のようにさつきのヒザの上に乗る。
「落ち着くねぇ」
つばめの部屋からは、きれいな庭がよく見える。
さつきはお茶を手に息をつき、可憐もそれに続く。
「王都のイベントは、基本的に大勢であれこれとクエストをこなしていく感じだから、雰囲気的にはウェーデンのものに近いらしいわ」
「にぎやかな感じですか」
「そうみたい。毎回王都で何か事件が起きて、その手伝いなんかを皆でしていくっていう感じね。色んなジョブのギルドもある街だからクエストのジャンルも豊富なのよ。ただ、これまで大きな展開が後半に起きたって話は聞かないから、単純にそういうものなのかもね」
「楽しそうだねぇ」
「そういう時こそ、メイさんが何かを見つけてしまいそうですね」
「そうなったら面白いわね」
お茶をすすりながら、黒猫を撫でるさつき。
大きな街で三人駆けめぐる姿を想像して、ワクワクし始める。
「まずはいつも通り観光がてらの王都散策をして、そのままイベントに参加するって感じどうかしら。イベント自体は夜から始まるみたいだから」
「良いと思います」
「賛成ですっ!」
「お母さんにしっかりと説明したら「夕食は任せて」と張り切っていたので、時間まで思いっきり遊びましょう」
「とりあえずは夕食時までね、それじゃ始めていきましょうか」
「りょうかいですっ!」
さつきはリュックから、そして可憐も旅行カバンから『星屑』を取り出しさっそく準備を開始する。
「今回も思いっきり楽しんじゃおうね! ツバメちゃんっ!」
「なんだったら今回も、広報誌にしっかり撮ってもらえるくらいね」
「はいっ」
「それでは第二回『星屑』合宿、はじめましょーっ!」
『星屑』へログインする三人。
こうして、王都ロマリアを舞台にしたイベント合宿が始まった。