軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

245.ツバメと魔法剣士団

「【投擲】」

「うわ、速い……っ!」

始まった雪合戦イベント。

ツバメは淡々とポイントを稼いでいく。

「お祭りごとの個人行動では、こういうパターンが多いです」

もともと影の薄いツバメ。

小さな身体にアサシン姿の少女が黙々と歩く姿は、ワーワーと盛り上がる合戦では普段以上に意識されにくい。

そんなわけで、フラっとやって来て雪玉を的確な【投擲】でぶつけるという戦い方が、上手く功を奏していた。

もちろん本人の身のこなしは見事で、回避も上手。

技量値もあるため【投擲】も的確だ。

「けど……そこまでよ」

そんなツバメの前に現れたのは、一人の女性魔法剣士。

「ッ!!」

雪景の中だというのに、インナー装備に銀の鉄仮面姿というヤバさに驚くツバメ。

「個性的な方です」

しかし『変態』とは思わないのは、ツバメの感性ゆえ。

そしてその背後には、普通の格好をした三人の魔法剣士仲間の姿もある。

四人はひし形の陣形を取ると、ツバメを狙って動き出す。

「【ファイアスプレッド】!」

「ッ!?」

いきなり攻撃魔法を放たれて、驚くツバメ。

円形に広がる炎の輪が、付近を薙ぎ払う。

そのスキルは範囲攻撃だけあり見栄えも派手だが、何より。

「視界が……っ」

広がる炎の輝きは、視界を阻む。

「今だ! 【投擲】!」

「ッ! 【跳躍】っ!」

雪玉が迫る気配を感じたツバメは、即座に後方へのジャンプで回避する。

着地するとすぐさま、二人の魔法剣士が飛び込んできた。

左手に持った短剣の振り上げをかわすと、そのまま右手の雪玉を放ってくる。

「なっ!?」

攻撃の合間に雪玉を投じるという変わり種のコンビネーションに、虚を突かれたツバメ。

慌てて回避したところに、もう一人の魔法剣士が飛び掛かってくる。

「【爆炎剣】」

「く、うっ!」

巻き起こった爆発の勢いに、ツバメは雪道の上を転がった。

「【投擲】!」

「ッ!!」

追い打ちの雪玉。

今度はとっさの横っ飛びでかわす。

「一体なんですか、この激しい攻勢は……っ」

「フフフ、私たちはまずシンプルに大技で相手を吹き飛ばしてから雪玉を当てればいいっていう、雪合戦過激派よ!」

「雪合戦過激派……」

「攻撃全般はダメージが一切入らない仕様だけど、爆発に巻き込めばチャンスが作れるわ!」

「なるほどです」

鉄仮面女子の物騒な宣言に、しかしツバメは感心する。

「さあ一気に勝負をつけるぞ! 【ファイアスプレッド】!」

「それではこちらも【加速】【リブースト】」

「抜けてきたっ! 【投擲】!」

炎の中を駆け抜けてきたツバメに、魔法剣士たちは雪玉を投げつける。

「【壁走り】」

「なっ!?」

しかしツバメがそのまま壁を駆け出すと、そんな移動方法は頭になかった魔法剣士たちが虚を突かれた。

慌てて雪玉を投じるが、早く三次元的な動きをするツバメには全く当たらない。

「【跳躍】」

ツバメはそのまま壁を蹴って空中へ。

「【投擲】」

手にしていた雪玉を投じ、魔法剣士の一人を退場させた。

「な、なんだこの子、動きが半端じゃないぞ!」

「速いし、的確だし、本物のアサシンみたいじゃねえか!」

驚きつつも、ツバメの着地際を狙って突撃してくる魔法剣士二人。

両者を十分に引き付けたところで――。

「【紫電】」

「「うおおおおっ!」」

放つ雷光が動きを止める。

ツバメは即座に二人に雪玉を当てて、走り出す。

残るは半裸鉄仮面のみ。

「【烈火剣】!」

「【青氷剣】!」

「ッ!?」

突然左右から、ツバメを狙う二人の魔法剣士が飛びかかってきた。

「残念ね、私たちは実は六人組だったのよ! 過激派とはいえ、最後まで手抜かりはないわっ!」

左右から飛び込んできた、二人の魔法剣士。

ツバメはちゃんと全員を魔法剣士でそろえてきていることに驚きつつ、後方へ【加速】でターン。

両者の攻撃をかわしたところで、雪をつかむ。

そしてすぐに【リブースト】で元の位置に戻ると――。

「【二刀流】は、雪玉を両手に持てるというのがいいですね」

両手を交差するようにして、左右に雪玉を投じた。

伏兵も無事、同時に退場。

「……こうなったら、真正面から行かせてもらうわっ!」

いよいよ残りは一人。

迫る半裸鉄仮面に、真正面からぶつかりに行くツバメ。

「かかったね! 【拡散魔法】!」

それは一つの魔法が無数に分かれ、ショットガンのような範囲攻撃に変わるというスキル。

威力は下がるが、『当たれば失格となる』のだから雪玉の増加は有効だ。

「確率的には2分の1……勝負です!」

しかしツバメも勝負に出る。

半裸鉄仮面に向かう足は緩めず、雪玉が放たれる瞬間に久しぶりのスキルを発動する。

「【スティール】!」

【強奪のグローブ】に装備を変更したツバメは、まさかの賭けに出た。

次の瞬間ツバメの手に収まったのは――――雪玉。

「うそっ!?」

拡散雪玉で勝負をつけるつもりだった半裸鉄仮面の手が空になる。

勝負あり。

ツバメは盗んだ雪玉を目前の半裸鉄仮面に投じ、見事6人全員を退場させてみせた。

「半裸の私が相手なら、スティールで盗むことができるのは仮面か雪玉かの2分の1。とんでもない勝負に出たわね……っ」

感心したように言う魔法剣士女子。

「はい。なぜか私が【スティール】を使うと、装備品や宝が全然盗めないので……」

なんでもない雪玉を奪える妙な自信があった。

ツバメは虚ろな目で、そんな自虐を口にしたのだった。