作品タイトル不明
244.レンの雪合戦攻略法
『――――ウェーデン定例イベントのルールは明確です』
『――――雪玉の直撃を受けた時点で失格』
『――――直撃させた数がポイントとなり、その数値で順位が決まります』
ウェーデンの西部で始まった雪合戦イベント。
多くの参加者に紛れて、メイたちも参加してみることにした。
『――――また、雪玉はキャッチした時点で所有者が変更。魔法で反射されたものが直撃した場合も失格になりますのでご注意ください』
ウェーデン西部には民家が立ち並んでいる。
雪合戦は、この区域の中でスキルも用いて行われるようだ。
「ポイントは個人ごとなのね。それならまずは各自で動いてみましょうか」
「どれだけポイントが取れるでしょうか」
「最後に集合だね!」
『――――それではウェーデン雪合戦大会…………スタート!』
開始の号令と同時にあがる歓声。
雪玉が一斉に宙を舞う。
この雪玉乱舞は、イベントスタート時の定番だ。
「うわっ!」
「しまったぁ!」
「開始直後が一番怖いんだよなぁ!」
そしてお祭り感覚で中央付近にいたプレイヤーたちが、すぐさま脱落するのもいつも通り。
イベントが始まると、各所で激しい戦いが起こり始める。
「これ、魔導士系には不利じゃないっ?」
移動系スキルに乏しい後衛は、どうしても回避が難しくなる。
レンは投擲系スキルで飛んで来た雪玉を必死にかわしながら、壁際に下がるが――。
「もらった!」
飛び込んできたのは、そんな回避に弱い後衛狙いの盗賊。
早い移動から、得意の投擲スキルでレンを狙い撃つ。
「っと!」
レン、これを上手にかわして反撃に出る。
「試してみたかったのよね、【誘導弾】っ」
「おっと、単発の雪玉なんてオレには当たらないぜ」
放たれた雪玉の軌道を読み、余裕の回避を見せる盗賊だが――。
「っ!?」
まさかの直撃。
スキル【誘導弾】は、狙い通り投じた雪玉にも効果あり。
レン、思わずニヤリと笑みをこぼす。
盗賊は首を傾げながらの退場となった。
「誘導弾は使えそうね。それなら今度は……【浮遊】」
壁沿いに人影の少ないところへ移動したレンは、教会の天辺にある十字架に身を隠す。
「次はあの辺ね……って、盾パリィは直撃判定にならないのね」
中盾を振り回して無双している重装騎士を見て、やはり動きの遅いプレイヤーはそれ以外のスキルで挽回できるようにしてあるのだと確信。
どうやら身体に当たらなければ、ヒット判定にはならないようだ。
あらためてレンは、雪玉を手に取る。
「さあ行くわよ……【魔砲術】【誘導弾】! それっ!」
投じた雪玉は、長い距離を飛んでいく。
「おらおらどうしたぁ! そんなんじゃ俺のパリィは抜けらんねえぞ!」
「こいつの盾さばきヤバいな!」
「かなりの前衛だぞこれ!」
飛んで来た雪玉を盾で弾き、その合間に【投擲】で雪玉を投げ返す。
見事な戦い方を見せる重装騎士。
「どんどん攻めてこい! 俺の盾パリィに敵はねえ!」
ぱかーん!
「……は?」
しかし高い角度、遠距離から飛んできた雪玉にはさすがに気づかない。
重装騎士は、雪玉の主を探しながらの失格となった。
レンは「ここよ」と軽く姿を見せるが、重装騎士は気づかないままだった。
「いい調子ね、それならこれはどうかしら」
レンはさらに【高速化】も使用し、遠距離から誘導をかけた雪玉を投じる。
速い速度で飛んでいった雪玉はそのままヒット。
レンは知らないが、その相手も恐れられている雪合戦プレイヤーの一人だった。
「いけそうね。このままポイントを稼がせてもらおうかしら」
こうしてレンは『雪合戦でスナイパーになる』という意外な戦い方を始め、着々とポイントを稼いでいく。しかし。
「ッ!!」
大慌てで屋根の上を転がる。
直後、割れる雪玉。
視線をあげると、民家の屋根上に同じく遠距離攻撃を得意とする弓術師の姿。
弓術師はこの隙に距離を詰め、教会の屋根上に跳び移ると同時にスキルを発動。
「【三矢撃】」
一度の三つの雪玉を投擲して見せた。
「三つ同時に飛んで来るのはさすがにやっかいね……っ」
「ははは! これなら反撃もままならないだろうっ!」
【三矢撃】の連射に、レンは必死の回避を続ける。
「このままじゃマズいわっ【フリーズブラスト】!」
一瞬の隙を縫い、放つ氷嵐の魔法。
もちろんダメージは取れない。
「どうしたぁ? 魔法じゃ勝負はつけられないぞ!」
「もちろん」
しかし吹き上がった猛烈な氷雪は、弓術師の視界を奪い去る。
この隙に自分に有利な位置取りをし直すのが定番だろう。
「なっ!?」
だが選んだのは意外にも特攻。
近距離から雪玉を下手投げでぶつけにいくという奇策に出る。
「【スライドステップ】!」
だが弓術師には、緊急回避用のスキル有り。
「残念だったな! ここで勝負をつけさせてもらうぞ! 必殺の【五矢撃】で――」
素早い回避から雪玉を取り、反撃に出る。しかし。
「うわっ!」
まさにレンに迫ろうとしたその瞬間、斜め後方から飛んできた雪玉にぶつかって失格となった。
「なぜだ……」
「雪煙をあげたらすぐに、【誘導弾】と【低速魔法】をかけた雪玉を投げておいたのよ」
「……よく分からないけど、なんかすごい」
ちょっと得意げに説明するレンに、呆然とする弓術師。
「自らをオトリにするとは……なんてアグレッシブな――――中二病」
「接近をいとわない魔導士ってところに驚いて!」
近接職顔負けの動きを見せた黒コート少女を前に、一言そうつぶやいたのだった。
「うわ、あの弓使いが負けたぞ……」
「すっげー、毎回上位の猛者なのに」
「でもなんか楽しそうだな」
雪合戦イベント常連の弓術師を下したレン。
そんな黒コート少女の魂の叫びを聞いて、ちょっと笑ってしまう参加者たちだった。