軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

246.雪玉の雨あられですっ!

「【バンビステップ】」

メイは「楽しそう」という理由で、合戦の中央部にいた。

「【ラビットジャンプ】【アクロバット】!」

飛んで来たいくつもの雪玉の隙間をかいくぐって跳躍。

移動スキルの使いどころやタイミング一つで、当たり前のように回避を決める。

「それーっ!」

そのまま空中で一回転して投じた雪玉。

「うおおおおーっ!?」

軽く投じたそれは、下手な【投擲】よりも的確で力強い。

直撃を受けた参加者は、重装備にもかかわらずゴロゴロと地面を転がった。

「すっげ! なんだあの子!」

一番激しい戦場で華麗な動きを見せるフードと毛皮マントの少女に、自然と集まる視線。

「だがしょせんは雪玉! 物陰に隠れれば! う、うわああああーっ!?」

防具店の前に置かれていた鎧のオブジェの背後に隠れていた魔術師が、オブジェごと吹き飛んで目を回す。

「なんだこの威力は!? これならどうだ【投擲連射】っ!!」

「おおっ! それならこうだあーっ!」

メイは次々に放たれる雪玉を、連続バク転でかわして反撃。

「この距離で近接型の雪玉が届くものかっ! ……え? え? うぎゃあーっ!!」

百メートルはあろうかという距離から銃弾のような勢いで飛んで来た雪玉が、そのままクリーンヒット。

「今だッ!」

「うわっと!」

すると今度は、民家の影から現れた男が突撃してきた。

その手には雪玉。

【アローレイン】を使うことで、投じた雪玉が空中でその数を増やす。

その全てが、メイ目がけて降り注ぐ。

「残念だったな! これで終わりだーっ!」

「【モンキークライム】っ!」

「うおおっ!?」

しかし建物の壁を一気に蹴り上がったメイは、『雨』の上を行く。

そのまま屋根を蹴り、大きく後方回転。

男たちの背後に回り込んだ。

「ど、動物みたいな機動力だな!」

「こんなの当たる気がしねえーっ」

最も激しい合戦地帯でも、メイは華麗な動きで翻弄。

雪を手に取り、追ってくる男たちに向かい合う。

「……ん?」

すると何やら、大きな音が聞こえて来た。

「え、ええ?」

坂の上にいたのは、一人の男。

そして直径3メートルを誇る、巨大な雪玉。

「ええええええ――っ!?」

雪煙をあげながら、猛烈な勢いで大雪玉が坂を転がってくる。

「【ラビットジャンプ】!」

驚きながらも、メイはこれを垂直ジャンプで回避。

「お、おい! なんだよこれぐああああ――――っ!」

するとメイに避けられた大雪玉は、追って来ていた二人をそのまま弾き飛ばした。

「アハハハハ! なんだあれ! あんな失格の仕方始めて見たぞ!」

それを見た参加者たちが笑い声をあげる。

「まだまだ、これでもくらええええっ!」

そう言って男が投じた雪玉は、なかなかの豪速。

「あれ?」

あさっての方向に飛んでいった雪玉に虚を突かれるメイ。しかし。

「わあーっ!?」

屋根から落ちてきた大量の雪が、メイを埋め尽くす。

オブジェクトの雪による失格はないが、メイが雪から顔を出したところで――。

「さあこいつでとどめだ毛皮フード! 【巨大化】っ!」

それは【錬金術師】がホムンクルスに使う、一時的に体躯のサイズを大きく上げるスキル。

雪合戦のためだけに取ってきたスキルで、直径3メートルほどの雪玉を生み出した。

「すごーい!」

思わず歓喜の声をあげるメイ。

「ふはははは! そうだろう! そして俺は元々、脳筋系の武闘家だった!」

「お、おい、まさか」

「あれをそのまま行く気か!?」

男は巨大な雪玉を抱え上げると、メイに狙いをつける。

そして大雪玉を持ち上げたまま大ジャンプ。

「オラァァァァ――――ッ!!」

「な、なんつーやり方だ!」

「巨大雪玉投げ……とんでもない戦法を持ってきたな……っ!」

どれだけ大きかろうが雪玉である以上、直撃すれば勝ち。

とんでもないやり方で迫る元武闘家に、驚きの声をあげる参加者たち……しかし。

「よいしょっ!」

メイは巨大雪玉を、なんなくキャッチした。

「「「……えっ?」」」

雪玉を投じた元武闘家と、参加者たちが同時に呆然とする。

「それーっ!」

メイはそのまま振りかぶり、大雪玉を放り投げた。

「うわああああーっ!」

雪玉を受けた元武闘家は、背中から倒れ込む。

巨大雪玉にしがみつくことで、どうにか生き残りに成功。

雪玉をキャッチした場合、所有権はキャッチした側方のものとなる。

元武闘家からメイ、またメイから元武闘家へと目まぐるしく所有が変わったことに、笑うしかない参加者たち。

「……ま、まさか、俺の大雪玉を受け止めるとはな」

しかし元武闘家は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

「見事としか言いようがない。だが今回俺は勝ちに来た。最後の奥義で勝負だ……毛皮少女ぉぉぉぉ!」

元武闘家はここで勝負に出る。

「【マジックエコー】【巨大化】!」

「わあっ!?」

そのスキルに、思わずメイは驚きの声をあげた。

【マジックエコー】は補助系魔法スキルを、クールタイムなしで重ね掛けできる変わり種だ。

雪玉はいよいよ、家すら押しつぶしてしまいそうなほどの大きさになる。

「……巨大を越えた超巨大。これでもうキャッチすることなど不可能だ! くらえ! 【豪砲投擲】ィィィィッ!!」

うなりをあげて投じられる、超巨大雪玉。

「ハーッハッハッハ!! 今度こそ終わりだー!!」

元武闘家は勝利を確信する。

「お、おいおい! こんなのどうしようもねえだろッ!」

参加者たちも、空を行く巨大な雪玉に悲鳴をあげた。

「よいしょっ!」

「「「……ええっ!?」」」

そして、飛んで来た超巨大雪玉まで普通にキャッチするメイに全員目を疑う。

「それでは、いかせていただきますっ!」

そう言って、雪玉を掲げるメイ。

「せーの! それーっ!」

「……お、おお……おおおおおお――――ッ!!」

大慌てで逃げ出した元武闘家は、全力で転がってどうにか超巨大雪玉を決死の回避。

「ま、まさか、超巨大雪玉も返されるとは……」

予想外の事態に震え出す。

しかしその口元にやがて、薄い笑みが浮かび出した。

「こうなったらもう仕方がない……【マジックエコー】【巨大化】」

再び超巨大雪玉を作り出す元武闘家。そして。

「最終奥義……【豪砲投擲】からの【分裂】だああああ――っ!!」

「うおおおおおーっ! なんだあれーっ!?」

投じられた超巨大雪玉が、空中で二つに増える。

重なり合うようにして落ちてくるその画は、もはや雪だるまの化物。

「こうなってしまえばもう、脳筋の俺でも持ち上げることはできない! 今度こそ、今度こそ終わりだああああ――――っ!!」

「よいしょーっ!!」

「「「…………」」」

全員、言葉を失う。

「そーれっ!」

メイが投げ返した巨大雪だるまは、猛スピードで飛来。

元武闘家は問答無用で吹き飛ばされ、そのまま雪だるまごと民家に激突。

深々と壁にめり込んだ。

「ま、まさか……巨大雪玉攻勢が破られるとは……っ」

砕け散った雪だるまによって、雪まみれになりながらの退場となった元武闘家。

「ちょ、超巨大雪だるままで投げ返したああああっ!」

「なんだこれ! あの子どうなってんだよ!」

「壁にめり込むってなんだよ! 今回の雪合戦見どころありすぎだろっ!」

凄まじい光景に、思わず歓声をあげる参加者たち。

うれしそうに飛び跳ねるフード少女に、会場は大盛り上がりだ。

「よくも、我らがリーダーをやってくれたな……」

そこにやって来たのは、元武闘家の仲間たち。

その数なんと30人。そして。

なんと集まった30人が一斉に【巨大化】を使用し、大雪玉を抱え上げた。

「すごーいっ!」

「二個ならまだしも、これだけの数を受け止めることはできまい! 勝負だ毛皮フードぉぉぉぉ!!」

「【紫電】」

「【フレアストライク】」

「うおおおおっ!?」

突然の乱入。

駆ける雷光と炎が、大雪玉を抱えた者たちを制止した。

「何か派手なことになってると思ったら、やっぱりメイだったのね」

「ツバメちゃん、レンちゃん!」

やって来たレンは、そう言ってほほ笑んでみせた。

「せっかくですし、ここからは一緒に遊びましょう」

「うんっ!」

「くっ、いくぞ! こうなったら全員まとめて片付けてやれーっ!!」

わざわざクエストを周回して【巨大化】を取得してきた元武闘家の仲間たちが、大雪玉を放つ。

「【バンビステップ】!」

「【加速】!」

「高速魔法【誘導弾】」

飛んで来る大雪玉を軽々かわし、反撃に転じるメイ。

さらにツバメが隙を作り、レンが的確に打ち抜いていく。

「すげえ……」

メイたちは見事なコンビネーションで、終了時間まで参加者たちを魅了し続けたのだった。