軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

237.気候の変化も何のそのです!

「なんだか、急に天気が悪くなってきたわね」

これまで綺麗な晴れ間が続いていた、ウェーデンの雪山。

その空が分厚い雲に覆われ、雪が降り出した。

「……ねえ。あなたが帰りたいロッジって、どこにあるの」

NPC少女をロッジに連れて帰るクエストを進めていたメイたち。

レンがたずねると、少女は「あっちです」と雪渓の奥地を指さした。

「あっちね」

ここでレンが、再度の確認を行う。

そしてそこから数分ほど進むと、途端に吹雪が吹き荒れ始めた。

「方向が全然分かりません」

辺り一面、真っ白。

数メートル先の仲間すら視認できないほどの、猛烈な雪風だ。

「雪のマップなら、こういうのは定番の一つよね」

「どうしましょう……これではロッジの方向が分かりません」

全身ボアのNPC少女は、困り果てた表情でそう言った。

「この吹雪の中をさまよい歩いて、どこにたどり着くか。それがここからの趣向みたいね」

しかしレンは慌てることもない。

「ねえメイ、ロッジの方向はどっちになるのかしら」

「向こうだよ」

メイも特に困った感じはなく、難なく答えてみせた。

「なるほど、メイさんの【帰巣本能】なら視界は関係ないのですね」

感心したようにつぶやくツバメ。

【帰巣本能】ならフィールド上どこでも、東西南北や目的地を把握することができる。

ゲーム慣れしているレンが、吹雪になる前にロッジの方向を確認したのはこのためだった。

「それにしても、本当にひどい吹雪ねぇ」

「なんだか凍えちゃうよ」

メイは耳と尻尾を縮こまらせながら、雪上を進む。

「身体が冷えると眠くなってしまうので、とても危険です。皆さん気を付けてくださいね」

NPC少女が、一言そう付け加えた。

「……ん?」

そしてツバメが異変に気付く。

「ツバメちゃん、どうしたのー?」

メイが首と尻尾を傾げる。

「NPCさん、寝かけていませんか?」

「えっ?」

見ればNPC少女の歩みが、千鳥足のようにフラフラしだしていた。

しかも半ば白目をむいていて、今にも倒れて寝てしまいそうだ。

「もう……ダメです」

そのまま、倒れ込む少女。

「注意したあなたが寝るの!?」

思わずツッコミを入れるレン。

同時に現れる、謎のゲージ。

「ちょっと起きて! 起きて!」

レンがNPC少女の肩を揺すると、目を覚ましてゲージが回復する。しかし。

「…………ぐう」

隙あらば寝かける。

そしてその都度ゲージが減っていく。

「ちょっと待って、これその度に起こさないといけない感じ?」

意外なクエストの始まりに、驚くレン。

「……メイ、またお願いしてもいい?」

「もちろんです! よいしょっと」

そんなNPC少女を担ぎ、メイは先頭を歩き出す。

「ほら来た! 【ファイアウォール】!」

レンの予想通り、ただ眠りかけの少女を起こしながら進むクエストではなかった。

先ほども現れた巨大雪ウサギたちが、少女NPCを狙って襲い掛かってくる。

「【電光石火】! 【四連剣舞】!」

炎の壁に足止めされた雪ウサギを、ツバメが掃討する。

「【バンビステップ】! 起きてー!」

そして雪ウサギの飛び掛かりを避けたメイが、背にした少女を揺り起こす。

「【アクロバット】【アクロバット】からの……起きてー!」

側転からのバク転で、雪ウサギの連続攻撃をかわしてNPC少女に声をかける。

「【フレアアロー】!」

「【加速】【リブースト】! 【紫電】!」

「【フレアバースト】!」

ツバメが早い動きで雪ウサギを集め、雷光でその動きを止める。

するとそこにレンが爆炎を叩き込み、一気に数を減らす。

「【ラビットジャンプ】!」

そして最後、NPC少女を狙った雪ウサギの飛び掛かりをかわしたメイは、そのまま頭を踏み台にして回避。

空中で「起きてー!」と少女を揺すった後。

「がおおおお――――っ!」

着地と同時に敵の動きを停止させる。

わずかに体勢を崩したところで、ツバメが特攻。

「【四連剣舞】」

ダガーによる連続攻撃でとどめを刺した。

「ツバメちゃんありがとうー!」

少女を背にしたまま、笑いかけるメイ。

「……ッ」

突然、その足を止めた。

「どうしたの?」

神妙な雰囲気に、思わず問いかけるレン。

メイは小さな声でつぶやく。

「……吹雪の先に……何かいる」

それは雪のヴェールに阻まれて、かすかにしか見えない。

しかし確かに、巨大な何かがそこにいる。

メイたちの横を通り過ぎて行く、大きな影。

「「…………」」

気づいたレンとツバメも、息を飲む。

輝いているのは目か、それとも魔法の輝きか。

途中何度も起こさなくてはならないNPC少女を抱えた状態で、その『何か』を刺激することは避けたい。

即座に三人が同じ判断をした。

メイたちは緊張感とその迫力に、ドキドキしながら歩を進めていく。

「っ!」

NPC少女のゲージが切れかけたのに気づいたツバメ。

言葉はかけず、肩を揺らすことでそっと起こす。

『何か』の光は、メイたちの方に向いているように見える。

そのためいよいよ、足音にすら気をつかい始める三人。

言葉もなく歩を進め、どうにかNPC少女のゲージを保持したまま吹雪を切り抜けることに成功した。

「ハッ!!」

目を覚ますNPC少女。

「あれです! あの屋根が私の住む家ですっ!」

そう言って、嬉しそうに駆け出した。

「レンちゃんツバメちゃん、さっきのなんだったのかな……」

メイは興味津々と言った感じで、レンたちに問いかける。

「吹雪に隠された何かがいる。そしてそれは間違いなく強敵。そんなところかしら」

「ものすごい緊張感でした」

進んできた道を、振り返ってみるメイたち。

しかしそこにあったのは、いつものように澄み切った快晴だけだった。