軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

238.雪山の三人

「ありがとうございました!」

雪山のロッジにたどり着くと、少女は勢いよく頭を下げた。

これにて、NPC少女のクエストはクリアとなる。

「ふうー」

他のプレイヤーがいないこともあって、メイはフードを外してぶるぶると頭を振る。

やはりちょっと犬っぽい。

「始まり方に対して、ずいぶんと密度の濃いクエストでしたね」

高い峰に登って降りられなくなっていたところを見つけてからの同行。

追ってくる敵たちに、眠気ゲージの管理、吹雪の中の何物か。

そんな難易度高めのクエストを振り返って、息をつくツバメ。

「なんだか、あったかくていい雰囲気だねぇ」

少女の住むロッジは広く、リビングには暖炉の炎が揺れている。

橙に照らされた室内は、ものすごく居心地が良さそうだ。

「そうです! 以前父が街で見つけてきたあのアイテム、よかったら使ってください」

そう言ってNPC少女が持ってきたのは、一枚の葉っぱ。

【タヌキの葉っぱ】:消費アイテム。頭に乗せて使うと姿を自由に変えられる。これまで見たことがある物、人物、NPCに変化することが可能。

「面白そうねぇ」

誰が使っても楽しくなりそうな消費アイテムに、レンはうれしそうだ。

「「あっ!」」

メイとツバメが、同時に声をあげた。

そこにやって来たのは、真っ白な大型犬。

トコトコと暖炉の横までやってくると、そのまま「わん」とあいさつして絨毯の上に寝転がる。

【自然の友達】効果もあり、すぐに動物たちと仲良くなるメイは、そのまま大型犬の隣に腰を下ろした。

「あ、ああっ」

真っ白な犬と戯れだすメイの姿に「運営さん、ここの画像をお願いします……っ」と震えながらつぶやくツバメ。

「ぜひゆっくりしていってください」

「ありがとうございますっ!」

気が付けば外は夕暮れ時。

絵に描いたような北欧的な生活に、三人はほっこりする。

クエストも終わり、せっかく雪山に来たのだからと、その場にとどまり大型犬と遊んで過ごす。すると。

「……今夜は、オーロラが出そうですね」

不意に、少女がそう言った。

「レンちゃんツバメちゃん! オーロラだって!」

その言葉を聞いたメイは、さっそくその目をキラキラと輝かせる。

「オーロラ……『星屑』で聞くのは初めてだわ」

NPC少女のつぶやきに、レンは考える。

『星屑』の規模を考えれば、オーロラの話題がここまで7年で出てきていないということは、隠れていた要素なのだろう。

「せっかくだし、もうしばらく待ってから外に出て見てみましょうか」

「さんせいですっ!」

「そうしましょう」

メイたちは夜が来るのを、犬と戯れながら待つ。

そしてしばらく時間が経ったところで、ロッジから表に出てみる。

「わあ……」

澄んだ夜空には無数の星。

そして緑光のカーテンの揺らめきが、そこに広がっていた。

「きれいねぇ」

レンが感心したようにつぶやく。

これだけハッキリと見えるのは、まさにVR世界ならではだ。

「こんなにすごい風景を一緒に見られるなんて、本当にすごいね。うれしいよー!」

そう言ってレンとツバメに、笑いかけるメイ。

「三人一緒にというのが、本当に素晴らしいです」

並ぶメイとレンを見て、ツバメも思わずほほ笑む。

「どこにでも行ける。一緒に!」

「何だって見られます」

二人の言葉にうなずくレン。

「こういう時にあらためて思うわ。あの時『星屑』を続けることを選んで良かったって」

夜空を見上げたまま、つぶやく。

「もう何年も遊んでるのに、最近は毎日この世界にくるのが楽しみで仕方ないもの」

そして右手に【銀閃の杖】を取ると――。

「あとは闇の魔導士感がもう少し薄くなってくれたら完璧ね」

そう言って三人、笑うのだった。

「……なかなか見られないんですよ。皆さんラッキーでしたね」

そう言いながらやって来たのは、NPC少女。

メイたちの隣に立ち、オーロラを一緒に眺める。

「実は……」

そして不意に、何かを思い出したかのように語り出した。

「今はウェーデンに住んでいる両親から話を聞いたのですが、急な吹雪に巻き込まれた時に、偶然見つけた洞窟で暖を取ったのだそうです」

「急な吹雪……?」

その言葉に、レンが反応する。

「洞窟は思ったよりも奥が深かったんだとか。先に進んでみると、盆地のような場所に出たみたいです」

「山間にできた、大きな盆地みたいな空間ねぇ」

「何かがいそうですね」

同じ事を考えたツバメがつぶやく。

「するとそこはまたひどい吹雪に見舞われて、父たちはそのまま洞窟に戻ったようですが……」

NPC少女は、そこで一度言葉を切った。

「その時に、猛吹雪に包まれた何物かを見たと」

「……なるほどね。もしかして、あの高い剣岳の上にいたのって」

「はい。興奮しながら両親が語っていた何物かを、見られるかもしれないと思って」

そう言ってNPC少女は、頂から降りられなくなったことを思い出して苦笑を浮かべた。

「父がその時に描いた地図があるのですが……これが大雑把で分からないんですよ」

取り出してきた地図は、ものすごく大まかに太陽の方向と、山の稜線が描かれている。

この広大な雪の世界から、この地図一つで洞窟を見つけ出すというのはかなり難しいだろう。

「ツバメなら分かるんじゃない?」

しかし、ここでツバメのスキルが活きる。

手書きのマップを受け取ると【地図の知識】が発動し、視界に目標地点が浮かび上がった。

「いけそうです」

「今日はもうしばらくオーロラを見て、次にでもその洞窟を探してみましょうか」

「「はいっ!」」

こうしてメイたちは、雪に隠された洞窟へ向かうことにしたのだった。