作品タイトル不明
231.宝物庫にて
「おおー……」
その煌びやかな光景に、メイは感嘆の声をあげる。
アサシン教団の野望を阻み、ルナイルを守ったことで姫からもらったカギ。
重い宝物庫の扉を開くと、そこには装飾品や装備、宝石などのアクセサリーが並んでいた。
黄金に水色を合わせた調度品が多いのは、砂漠の国ならではといった感じだ。
そして中には、三つの宝箱が用意されていた。
まずはツバメが、一番手前の宝箱を開く。
【暗転のブーツ】:高速移動スキル使用時に姿が消える。突然消え突然現れるその姿は捉えるのが難しい。アサシン教団の秘宝の一つ。
「【天井走り】はどうしても室内用になるので、使い分ければ強力な武器になりそうです」
「いいわね。対人戦なんかで特に活きそうじゃない」
続いてレンが宝箱を開ける。
【魔法速度変化】:放つ魔法の速度を通常・高速・低速と指定して繰り出すことができる。
「変わったスキルですね」
「これは使ってみないと分からない感じね。でも、速くなるのは面白そうだわ。【魔砲術】なんかでも活きそう」
早くも新スキル、新装備にワクワクし始めるツバメとレン。
そして最後。
古き悪王を『完全体』で打倒したことに対する報酬。
一際豪華な宝箱に、メイが手を伸ばす。
「何が入ってるのかなぁ」
【王者のマント】:装備するだけで炎や氷雪を軽減することのできる毛皮のマント。タイミングを合わせて振るえば、さらに効果を高めることができる。
「わー! カッコいいっ!」
まず、何よりその装飾性や豪華さに歓喜の声を上げる。
首元で留めるそのマントは、ミルクティーのような色をした滑らかな毛皮製。
これを上に羽織るだけで、強者の雰囲気まで出る素晴らしい装備品だ。
「すごいすごーい!」
王者のマントを手にぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ。そして。
「……毛皮?」
素直なメイ、十分にそのアイテムのカッコよさを堪能した後に気づく。
「こ、これ、野生の王者みたいにならないかな……」
◆
「マ、マジでメイちゃんだ」
カナとの別れ際、やって来たルナはメイを見て驚きの声をあげた。
強い・可愛い・野性的。
これでもかと広報誌の表紙を飾っているメイに、「おお……」と感嘆する。
「今日はありがとうございました! メイちゃん、また戦い方を教えてくださいっ!」
「うんっ」
「あー、ずるいなそれー。今度私にも教えて下さい!」
それを聞いてルナも、すぐに乗っかってきた。
「はいっ、よろこんで!」
「やった!」
うれしそうに手を振りながら去っていくカナたちに、メイもブンブンと手と尻尾を振る。
「さて、それじゃ私たちもノルディカ雪原に向けて準備でもしましょうか」
「う、うん」
そう言ってメイは、ルナイルで手に入れた【王者のマント】を取り出す。
効果を試してみたところ、氷嵐の壁を生むレンの【ブリザード】を普通にすり抜けることができた。
かなり優秀な装飾品だ。
ただ予想通り、とても大きな問題が一つある。
「レンちゃん、一度装備してみて」
そう言ってレンに【王者のマント】を渡すメイ。
レンがさっそくマントを身にまとう。
「モデルさんみたい」
メイよりも高い身長。
元々の装備品が黒のドレスっぽいこともあり、サマになっている。
すごく格好いい。
「ツバメちゃんも装備してみて」
続けてツバメ。
「お嬢様みたい」
こちらも紺の装備と黒く長い髪が映えて、とても雰囲気が出ている。
高級品を身に着けている感じが、目に見えて分かる。
そして最後はメイ。
「「…………」」
とっさには言葉が出ない二人。
「……もしこれで【自然回帰】を使ったら、どうなっちゃうのかな」
「「ッ!!」」
【自然回帰】は、防具を外すほどに一部のステータス値を上昇させるスキル。
猫耳に尻尾の少女が、腹部の露出したタンクトップにショートパンツというインナー装備で毛皮のマントを羽織る。
それはもう――。
「野性の王様が誕生しちゃわない?」
手にした【蒼樹の白剣】を見つめながら、つぶやくメイ。
そう、【王者のマント】はメイが装備するとどうしても【野生児】の側面が強調される感がある。
「ただ、メイが装備するとすごく強力なのよね」
超優秀な前衛のメイが、これを使わないというのはなしだろう。
実際メイとしても、カッコいい新装備はぜひとも使ってみたいと思っている。
良い効果を持つのなら、なおさらだ。
「そういうことなら、フードをかぶってみるっていうのはどうかしら」
困るメイに、レンは一つの対策を提案する。
「フード?」
「装飾品とか頭装備とか、色々あるのよ。私もその……一時期かぶってたし。顔が分からなくなる効果があるわよ」
レンは黒のフードを目深にかぶって『闇の組織の密使』を気取っていた時のことを思い出して、少し震える。
「猫耳も隠せるので、誰なのか分かりづらくなりますね」
「それならいいかもっ!」
レンの提案に、メイは歓喜する。
「そういうことなら、ラフテリアでフードを見繕ってから向かいましょうか」
「はいっ!」
こうして三人は、ノルディカ雪原行きへ向けてフードを買いに行くことにしたのだった。