軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

225.古き悪王

暗色の包帯を巻いた、ルナイルの古き悪王。

黒い太陽の砂漠にて、最後の戦いが始まる。

黄金の冠に黒衣のマント、背には大きな蛇神。

その前に現れたのは、四人の霊体アサシン。

各々が悪王に、武器を差し出し消えていく。

『剣』『槍』『斧』『弓』

古き悪王が手を掲げると、その手に『槍』が現れた。

ゆっくりと振りかぶり、投擲。

「くるよっ!」

即座に動き出す三人。

メイとツバメは側方に。

レンは斜め後方へと下がる。

雷のようなエフェクトを放ちながら飛んできた『槍』はそのまま砂に突き刺さり、上空へ雷光を走らせ消えた。

駆け抜けていく凄まじい光、その威力は間違いなく高火力。

古き悪王は、ホバーのような動きでメイに迫る。

軌跡を描きながら振るう『剣』

これを難なくかわし、側方へと移動しようとするメイだが――。

「うわあっ!」

弾かれ、ダメージを受ける。

「剣の軌跡に攻撃の判定が残ってるんだわ! 気を付けて!」

「はいっ!」

次に古き悪王が手に取ったのは『斧』

「【ラビットジャンプ】!」

念のため大きく後方へ下がるメイ。

轟音と共に振り下ろされた『斧』は、地面に大きな亀裂を生み出した。

「わあ……」

亀裂に落ちていく砂を見て、メイは感嘆の息をもらす。

「【魔砲術】【誘導弾】フレア――――」

この隙を突き、レンは魔法攻撃を仕掛けにいくが、振り返った古き悪王が手にしていたのは『弓』

そこには矢がつがえられていない。しかし。

「ッ!!」

嫌な予感に慌てて横っ飛びするレン。

次の瞬間不可視の風矢が頬の横を通り過ぎ、後方で爆風を巻き起こした。

吹き付ける暴風に、砂上を転がされる。

「スキル付き武器を交換しつつなんて贅沢な戦い方。さすがは王様ね」

しっかり後衛をけん制した古き悪王は、再びホバー移動でメイに迫る。

その都度腕を振り上げたところで武器が変わるため、回避には判断の早さが必要だ。

しかしその辺りは慣れ過ぎているメイ。

『槍』による三連突きから投擲、『剣』による四連撃という怒涛の攻勢を難なくかわす。すると。

「ッ!!」

『剣』が残す軌跡によって動きを制限したところで、肩口から飛び出してきた蛇神が喰らい付きにくる。

「【ラビットジャンプ】!」

完全に虚を突かれたにも関わらず、メイは『剣』の軌跡を飛び越える形で回避してみせた。

かみ合わされた牙から飛び散る火花が、その威力を物語る。

古き悪王はここで、目標をツバメに変更。

ホバー移動で一気に距離を詰め、『剣』を振り降ろす。

メイの回避を見ていたツバメは、これをきっちり回避。

続く蛇神による喰らい付きも、反撃の隙をうかがいながら半身の姿勢を取るが――――。

「シャアアアア――ッ!!」

「ッ!?」

喰らい付きではなく【咆哮】

範囲こそ狭いが、全身を震わせる衝撃によって足を止められる。

古き悪王はその場で一回転。

蛇神の尾で、ツバメを叩く。

「くっ!」

弾き飛ばされ、1割ほどのダメージ。

古き悪王は攻勢を続ける。

一直線に伸びてきた蛇神の尾が、体勢を崩したツバメをつかむ。

強力な力で引き戻されたツバメに迫る、『斧』の一撃。

「【加速】【リブースト】!」

振り降ろしまでのわずかな『隙間』を縫い、側方への超加速で回避する。

生まれる断崖。

ターゲットを変えた古き悪王の移動は早く、すぐにツバメの背を捉える。

「恐ろしい追跡能力です。ですが……【跳躍】」

逃げるように砂漠上を行くツバメは、大きく跳ぶ。

「それは、深追いです」

古き悪王の足元に、輝く魔法陣。

「解放!」

レンの合図で【設置魔法】【フレアバースト】が爆炎を噴き上げた。

「締めは任せるわ!」

「おまかせくださいっ! 【装備変更】!」

メイは頭装備を【狐耳】に換えて、右手を突き上げる。

「――――それでは、よろしくお願い申し上げますっ!」

メイの背後に現れた魔法陣から、飛び込んできた巨大なクジラ。

【幻影】によって二頭になると、その攻撃範囲も倍になる。

もはや逃げ場などない。

豪快な青炎のしぶきと共に、直撃を受けた古き悪王は砂上を転がった。

「ありがとうございましたっ!」

帰っていくクジラに、手を振るメイ。

古き悪王のHPゲージは、残り7割ほどとなる。

ここで古き悪王は、再びターゲットをメイに変更。

一気に迫り『剣』を振るう。

「【バンビステップ】!」

攻撃判定の残る剣撃も、分かってしまえばメイの脅威とはならない。

武器チェンジで出てきた『斧』の振り降ろしで、足元が割れ砂が大きく巻き上がる。

「【アクロバット】」

頭装備を戻したメイがこれを側方回転で回避すると、古き悪王は急速接近。

蛇神が【咆哮】を放とうと、大きな口を開いた瞬間。

「がおおおお――――っ!」

【咆哮】時には蛇神が少し頭を後方へ下げる予備動作があることに気づいていたメイが、【雄たけび】で先手を取る。

のけ反り、動きを止める古き悪王。

この隙をツバメは逃さない。

「【加速】【電光石火】」

すぐさま飛び込んでくると、高速の一撃で斬り抜けていく。

「【リブースト】【紫電】」

そして即座に切り返し、雷光で再び足を止める。

「【魔砲術】【フレアストライク】!」

間髪入れずに決まるコンビネーション。さらに。

「【加速】【リブースト】――――【雷光閃火】!」

超加速で懐に飛び込んできたツバメが放つ刺突。

突き刺さった箇所から、火花が盛大に飛び散る。

一瞬の空白を挟んで爆発。

舞い散る火の粉の中、古き悪王は再び砂漠を転がった。

ツバメはクルクルと宙を舞い戻ってくる【グランブルー】を回収。すると。

「ガアアアアアア――――ッ!!」

残りHPが半分ほどになった古き悪王は体勢を立て直し、叫びをあげた。

黒包帯の巻かれた手を伸ばす。

浮き上がる古代文字。

背負った蛇神が姿を変え、大きな金色の杖となる。

そして青緑の光が、鈍い輝きを灯し出す。

「……なに?」

大きな演出だったわりに、砂漠は静かなままだ。

その変化のなさに、思わず辺りを見回すレン。

「レ、レ、レンちゃん……ツバメちゃん……あれ見てーっ!」

空を指さしながら、メイが叫び声をあげた。

「……ウソでしょ」

「こんな攻撃、初めて見ました……」

レンもツバメも、唖然とした表情で空を見上げる。

「た、退避よ! とにかくこの場から少しでも離れないとッ!」

思い出したように叫ぶレン。

「【バンビステップ】!」

「【加速】!」

「【浮遊】!」

即座に退避を始める三人。

暗い砂漠の空には、ずっと黒い太陽があった。

そして『完全体』の古き悪王が蛇神と共に放つ、その極大魔法の名は――――【黒星落下】

落ちてきた黒い太陽はそのまま砂漠に突き刺さり、付近一帯を消し飛ばすほどの衝撃波を巻き起こした。