軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

224.深部へ向かいます!

「ピラミッド探索をしながら帰りを待つ」

そう言ってアルトリッテ達は去って行った。

大祭壇に刻まれた『黒い太陽』の紋章。

その鍵穴から、飲み込まれるように移動した先には下りの階段。

青緑色の炎を灯す灯篭が並ぶ中を、三人ゆっくりと降っていく。

壁や天井にまで紋様が描かれた一本道には、最後の戦いへの雰囲気が漂う。

たどり着いたのは、暗い円形の大広間。

「アサシン教団の成り立ちは、二つの王の対立から」

アサシンは、ゆっくりと振り返った。

「古き王はその壮大な野心ゆえに、王宮を追われ封じられた。本来ルナイルを継ぐはずの、正統後継者だったにもかかわらず」

大きな台座には魔法陣が描かれ、中央に置かれた棺には幾重にも戒めの鎖が巻き付けられている。

「このピラミッドはお墓というより、『封印』のためのものだったのね」

「倒すことができなかったくらい強力ということでしょうか」

「それはすごいねぇ」

感心の声を上げるメイ。

「だが、我らアサシン教団は待ち続けた。王の復活を。偽りの王家を抹殺し、全てを奪い尽くすために」

「そんなことさせませんっ!」

ビシッと尻尾を立てて、宣言するメイ。

「残念だったな。すでに復活の儀式は始まっている」

アサシンの言葉を証明するように、ゆっくりと足元の魔法陣が輝き出した。

炎が揺れ出し、戒めの鎖が少しずつひび割れていく。

「古き王の復活はもはや誰にも止められん。ルナイルはもちろん、我らが世界に手を伸ばす時がやってきたのだ!」

そう叫んで、アサシンは静かに足を引いた。

魔法陣の輝きによって生まれた影に、隠れるようにして走り出す。

「あとは、これさえ収めることができれば……っ」

その手には、あからさまな宝珠。

「レンさん、これは復活時のボスの強さに関わるミッションではないでしょうか」

その意図を予想したツバメが、レンに問いかける。

「私もそう思うわ」

それは追加の宝珠を使った強化を止めなければ、強大な力を持った状態で復活するというものだ。

「こういう形でイベントを挟むってことは、完全体は相当強いのかもしれないわね。ツバメはどう思う?」

「そうですね。弱体化させて戦うより『完全の状態』相手に勝ちたいです」

「私もそこは同意ね。でもこのパターンって、完全体だと本当に強いパターンなのよねぇ。メイはどうしたい?」

宝珠の使用を防ぐため、一応杖をアサシンの背に向けたまま問いかけるレン。

「強敵になっちゃうのかぁ……ドキドキしちゃうなぁ」

尻尾がブルブルと震えるメイ。

「でも、レンちゃんとツバメちゃんが一緒だからね! 敗ける気がしないよ!」

そう言って楽しそうに笑う。

「そうですね」

あまりに真っすぐな笑み見せるメイに、ツバメは思わず見とれてしまう。

「ふふ。まあこっちにはメイがいるんだし、弱体化状態のボスと戦う理由なんてないわね」

「ハッハッハ! いいのか? 我らの王が最高の力をもって復活するぞ! そうなれば貴様らなど取るに足らない雑魚も同然で――」

「いいから早くしなさいよ」

煽るアサシンに、「早くしろ」と促すレン。

「残念だったなぁ……時間切れだ」

完全体での復活を阻止するどころか、新たなスキルを踏まえた連携などの確認を始め出すメイたちに、アサシンは勝ち誇ってみせた。

魔法陣がさらに強く輝き出す。

鎖がドンドン引きちぎられ、一本また一本と弾け飛んでいく。

棺の隙間からもれ出す、妖しい青緑の光。

現れたのは、大柄な一体のミイラだ。

他の個体とは違い、巻かれた包帯の色は黒。

悪趣味な装飾を施された黄金の冠を載せ、その背には暗い太陽の柄が描かれた黒金のマント。

背には鈍く輝く、巨大な蛇神の霊を背負っている。

「光栄に思うがいい。帰還した真の王。その最初の贄となるのは貴様たちだ。己が無力さに震えながら朽ち果てるがいい!」

「朽ちてるのはそこの王様でしょう?」

恍惚とした表情のアサシン。

レンは真っ黒な包帯という中二病要素に、ちょっと目を背けながらもツッコミを入れた。

そのままアサシンは、古き王の前にひざまずく。

「復活の時をお待ちしておりました。さあ、この者たちを我らの覇道の生贄としてルナイルを、世界を――――ぐっ」

しかし王の黒い手は、アサシンの頭をつかんだ。

「っ!? 一体何を……っ」

「なるほどね。もう意識も記憶もない、手が付けられない悪そのものになってるパターンのやつかしら」

「そのようです」

「あ、ああああーっ!」

アサシンは、魔力の光を吸い取られて転がった。

「ひどいよー」

悪者とはいえ、自分を復活させるために働いていたアサシンの魔力を吸って捨てたことに不満そうにするメイ。

古き悪王はその手を掲げる。

すると、青緑の光が一面に広がった。

「ここは……?」

「ピラミッドの外でしょうか」

「そうみたいね……でも、特殊な演出がかかってる」

どこまでも続く砂漠は、メイたちが進んできたルナイル砂漠だ。

背後に見えるのは、新ピラミッド。

どうやら表に出てきたようだが、夜のように暗く、空には黒い太陽が浮かんでいる。

青緑の陽炎と共に、砂上にゆらりと現れる古き悪王。

黒金のマントを揺らすと、背にした蛇神が吠える。

「どうやら、ここが戦場みたいね」

その目元が煌々と赤く輝き、ルナイルに秘められた最大クエストの最終局面が幕を開けた。