軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

219.戻ってきた場所は

「ヤツでも、止めることはできなかったか」

ピラミッド最奥の部屋。

追いつめられた最後のアサシンは、呪いの解かれた姿を見て息をつく。

「ようやくたどり着いた真のピラミッド。我らの悲願は誰にも止めさせぬ!」

ダガーの彫像に収められた宝珠を引き抜くと、転移結晶を使用して姿を消した。

「追いかけましょう!」

すぐさま後を追うメイたち。

「あれ、ここは?」

「む、ピラミッドの大祭壇ではないか」

「……入り口から入って真っすぐ進んだ先にある場所」

たどり着いた先は、新ピラミッドにやって来たプレイヤーたちを迎えるメインフロアのような場所だった。

そこには、大きく豪華な祭壇が設置されている。

「お、おいなんだ?」

「あの五人、急に広場に現れたぞ」

「ていうかあのアサシンっぽいやつはなんだ? NPCか?」

メイたちがやって来たのは、新ピラミッド一階の中央地点。

そこには祭りを聞きつけて集まってきたプレイヤーたちが、談笑したり戦利品を自慢したりと賑やかな時間を過ごしている。

「こうなってしまった以上、もはや古き王の復活は急務」

そう言ってアサシンは、祭壇に描かれた紋章に設置された鍵穴に黒い鍵を挿す。

「ルナイル奪還は、何があっても果たさせてもらう!」

そしてそのまま、紋章に飲み込まれるようにして消えていった。

「あ、あれアルトリッテだぞ」

「メイちゃんたちも一緒だ」

「ていうか……これってイベントか!? 深部への道っぽいぞ!」

突然現れたトッププレイヤーと、噂の野生児。

そしてこの場に集まっているのは、新ピラミッドのお宝やイベントを求めて集まってきたお祭りプレイヤーたちだ。

「こんなチャンス、逃してなるものか!」

当然、大祭壇の先に進むことを狙ってくる。

このイベントの先頭にいるメイたちに代わって、アサシンを追うつもりだ。

「相手はアルトリッテにメイちゃんだ。どうせなら……」

そしてここで、雰囲気を変えてくる。

「へっへっへ。運がなかったなぁ、お嬢ちゃんたちよぉ」

「ここが盗掘者たちの巣窟だって知らなかったのかぁ?」

「別に『悪役』になりきる必要はないと思うわよ?」

「ノリのいい方たちです」

相手が可愛い少女たちということで、さっそく悪い盗掘者風になるプレイヤーたち。

目をギラつかせた大勢の『盗掘者』たちが、一斉に立ち上がって武器を取る。

「……予想外の展開」

「ふむ」

怒涛の勢いで駆け出してくる、お宝目当てのプレイヤーたちを前にアルトリッテはニヤリと笑う。

「だが。呪いから解き放たれた我らを、止めることができるかな? いくぞ、【ペガサス】!」

滑るような高速移動で、物怖じすることなく敵集団の先頭へ。

「【ハードコンタクト】!」

そのまま得意のタックルで、足の速い剣士と盗賊を弾き飛ばした。

「……もう剣を使っていい」

「わ、わざとだ!」

恥ずかしそうにそう言って、アルトリッテは黄金の大剣【エクスブレード】を手に取った。

「【ホーリーロール】!」

そのまま豪快に一回転。

「「「うおおおおーっ!」」」

生まれる光の軌跡に、前衛の一団がまとめて消える。

それでも止まらない。そこからさらに連続で二回転。

盾も重装鎧も関係なく、聖なる閃光の軌跡に消し飛ばされていく。

「【エクスプロード・スラスト】!」

その隙を突いて飛び込んできた槍使いの、砂煙をあげながらの一撃には。

「【セイントシールド】!」

金色の盾で難なく受け止める。

タイミングをしっかり合わせて始動したスキルは、直後に巻き起こった猛烈な爆発も――。

「マジかよ!?」

まさかのノーダメージ。

「今だ!」

「りょうかいですっ!」

余裕の笑みを浮かべたアルトリッテの背後から、駆けてきたのはメイ。

「【ラビットジャンプ】! からのーっ! 【ソードバッシュ】だー!」

「「「うわああああああ――――っ!!」」」

即死級スキルから完全防御を挟み、最後にトドメの衝撃波。

トッププレイヤー・アルトリッテと野生児メイのコンビネーションに皆呆然とする。

さらにそこへ降り注ぐ、無数の魔力光。

「【流星雨】」

空中に瞬く無数の輝きが、一斉に落ちてくる。

範囲攻撃にもかかわらず高いその威力に、敵プレイヤーたちは次々倒れていく。

「さすがに強えっ!」

「近づくこともできねえぞ!」

「だが……十分『ため時間』は作らせてもらったぜーっ!」

「【加速】」

前衛の陰に隠れ、魔力を『ため』ていた魔導士が杖を構える。

それに気づき、駆け出すツバメ。

「間に合うもんか! ソニックブラス――――ッ!?」

「【リブースト】」

すでにその目前に、アサシン少女が立っていた。

「は、はやっ!?」

「【アサシンピアス】」

魔法を放つ直前に瞬殺され、姿を消す。

「うひゃははは! なんだこの子たち、いくら何でも強すぎだろーっ!」

「いけいけ! ダメでもともとだぁぁぁぁーっ!」

メイたちの驚異的な強さに、全員一丸となって突撃してくるプレイヤーたち。

戦いの最後を締めるのは――。

「大きくなーれ!」

【密林の巫女】で伸びた【蒼樹の白剣】を掲げたメイ。

「目覚めろ【エクスブレード】!」

そしてその隣で黄金の大剣を掲げるアルトリッテ。

「せーのっ! 【フルスイング】!」

「解放剣技! 【エクスクルセイド】!」

二人が同時に放った剣撃が、その場にいた大量の『せっかくだしトッププレイヤーと戦っとけ!』勢をまとめて蹴散らした。

はじけるようなハイタッチを決める、メイとアルトリッテ。

「すげー」

「さすがトップだなぁ」

その凄まじさに、のんびり観戦勢も感心の声を上げた。

「さあ、ここからはどうなっていくのだろうな」

「ヒントは、あのアサシンがくれたわね」

そう言ってレンは『黒い鍵』を取り出し、紋章付きの鍵穴に差し込む。すると。

『――――この先に進むことができるのは、1パーティのみとなります』

視界に浮かぶ、メッセージ。

「なるほどね。1パーティずつしか進めないってわけ」

ここで、二つのパーティのまま協力してきたことが裏目に出た。

「……どちらかだけ」

「いいだろう……ならばどちらが先に進むか、ここで決めようではないか!」

アルトリッテの言葉に、観戦者たちがにわかに盛り上がり始める。

「おいマジかよ! アルトリッテ達の戦いが間近で見られるってことか!?」

「しかも相手メイちゃんじゃねえか!」

まさかの事態に、祭壇前は自然と騒がしくなっていく。

「まあ、こうなってしまった以上仕方ないわね」

呪いのマイナスを補うために始まった協力関係。

しかし『ゴールドラッシュ』では、駆け引きやプレイヤー同士の戦いは大きな華だ。

「……こんなに戦いがいがありそうな相手は初めて」

「間違いない! メイたちは最高のライバルになるぞ!」

意気込むアルトリッテとマリーカ。

メイも「よーしっ!」と気合を入れる。

「勝った方が先に進む。それでいいな」

「もちろんですっ!」

「問題ないわ」

「異存はありません」

「……問題は人数。3人の動きを見る限り、ハンデなどと言ってられる相手とは思えない」

しっかりと後衛からメイたちの動きを見てきたマリーカが忠告する。

「それなら1対1を2度でいいんじゃない?」

「ふむ! 望むところだ!」

「1勝1敗だった場合はどうするの?」

「その時は……勝ち残った者同士が戦って……」

「ふむ」

「最後に私と戦う」

「……ラスボスはレンだった」

「ふふ。まあそうなった時はまた考えましょう」

楽しそうに笑い合う五人。

古き悪王への道を賭けての、戦いが始まる。