作品タイトル不明
220.ツバメvsマリーカ
多くのプレイヤーがメイたちに吹き飛ばされ、静かになった大祭壇前。
始まるトップの戦いに、残った観戦者たちは楽しそうだ。
「いきます」
メイのパーティからはツバメが前に出る。
そしてアルトリッテのパーティからは、マリーカが。
柱の並ぶ大部屋。
大祭壇前で、二人は向き合い構えを取る。
「……全力でいく【霊鳥乱舞】」
先に動き出したのはマリーカ。
一斉に放たれる魔力光の鳥。
その全てがツバメに向けて飛んでいく。
「【加速】」
斜め前方への加速で退避し、続けて【リブースト】
怒涛の勢いで迫る光鳥を、見事に置き去りにする。
「……もう一度【霊鳥乱舞】」
「リキャストも早い」
【クールタイム減少】のレベルも高いため、まだ前の霊鳥が残るうちに放たれる次弾。
対象を絞って放つ霊鳥は、緩やかな誘導がかかっていて単純な回避は難しい。
「あれがマリーカの恐ろしさだな」
「あの数なのに、このキャスト速度だもんなぁ」
観戦者たちがため息をつく。
「【壁走り】」
しかしツバメはそのまま柱を蹴り上がって空中で一回転。
光の鳥たちは、柱にあたって爆散した。
「……さすが」
「すげー! あの魔法乱舞を抜けたぞ!」
その『隙間』を駆ける技術に、驚く観戦者たち。
ここでツバメは攻勢に出る。
「【加速】【リブースト】【電光石火】」
直角の高速移動で距離を詰め、そこから【電光石火】につなぐことで、雷の模様を描くような機動をみせる。
「【四連剣舞】」
【電光石火】では攻撃を行わず、移動兼フェイントとして使用。
動きで翻弄し、放つは高速の連続剣。
「【ハードリフレクター】」
しかしダガーによる四連撃は、マリーカを囲むように現れた白い四枚の魔法壁に阻まれる。
「【アクアエッジ】!」
「【ソフトリフレクター】」
続く水の刃による攻撃も、水色の魔法壁に防がれた。
「さすが不動のマリーカだな」
怒涛の攻撃魔法と、使い分けの魔法壁による防御。
それが『動かずに敵を倒す』マリーカの戦術だ。
「なるほど。物理攻撃と魔力攻撃で対応スキルが違うのですね」
剣による攻撃は【ソフトリフレクター】では弾けず、逆もまたそうだろうとツバメは予想する。
「……近接は危険。一気に勝負をつけにいく」
メイを参考にした回避と、レンのように相手を見る癖。
敵にすると手強いツバメを前に、マリーカは右手を突き上げた。
「……【分霊】」
「マジかよ」
「そんなのありか……っ?」
観戦者たちが驚嘆する。
スキルの発動と同時に、魔力で作られた二人のマリーカが本人の背後に立った。
「「「【霊鳥乱舞】」」」
「三人同時に【霊鳥】を……っ!?」
それでなくとも多数の『魔法弾』を放つ【霊鳥乱舞】を、三人がかりで放つ。
無尽蔵の魔法攻撃に、驚くツバメ。
マリーカはこれまでも十分な火力を見せていた。
だが魔力で作られたマリーカ達も同時に【霊鳥乱舞】を放つことで、もはや逃げ場もないほどの弾幕が広がる。
「【加速】【リブースト】……【電光石火】!」
しかし三度の高速移動を駆使することで、ツバメもこれを潜り抜けていく。
回避に全てを集中することで、直撃は許さない。
「うおおっ! こっちまで飛んできた! どんな物量だ!」
「あのアサシンの子、キッチリよけてるぞ!」
「……これでも避けられる。それなら――――【流星雨】」
三身のマリーカが空中に打ち上げた魔力の光球。
弾けて、魔力光の雨を降らせる。
「ッ!?」
とんでもない範囲攻撃に、さすがに息を飲むツバメ。
「【加速】【リブースト】【跳躍】!」
超加速からの大ジャンプで一気に距離を取り、着地と同時に再度の【加速】で逃げを打つ。
「くっ! やはり、無傷とはいきません」
回避はうまくいっているが、かすめるだけでHPは削られていく。
レベルは90を超えるマリーカ。
【魔力】に偏重したステータスだからこその高い火力は、削りですら馬鹿にならない。
「……【霊鳥乱舞】そして【流星雨】」
「ッ!?」
始まったのは、【分霊】を用いた超高密度の魔法攻撃。
「【加速】【リブースト】!」
凄絶な魔法の輝きに、観戦者たちも言葉を失う。
「やはり、攻めなければ……っ」
守っても回避しても凄まじい速度で削られていく。
驚異的な火力で押し切るのが『不動のマリーカ』の戦い方。
直撃を避け続けたツバメも見事だが、それでもHPはすでに4割も削られている。
「【加速】【リブースト】【電光石火】」
「【ハードリフレクター】」
そして近接攻撃は冷静に弾かれる。
脅威の攻防能力。だがツバメは慌てない。
「【加速】【電光石火】」
「ッ!?」
【リブースト】を挟まず、二段階目ですぐに攻撃を行うフェイント。
【ハードリフレクター】は間に合わず、ダメージを取る。
「【電光石火】」
「【ハードリフレクター】! ……ッ!?」
マリーカは目を見開く。
【電光石火】で攻撃をせず、そのままマリーカの横を通り過ぎたツバメは、振り返ると同時にスキルを発動。
「【アクアエッジ】【四連剣舞】」
早くシンプルな斬撃で【ハードリフレクター】では守れない水の刃を叩き込む。
「……やられた」
こうしてツバメも、マリーカのHPを5割ほど吹き飛ばした。
「……やはり強い。ならば、全力でいかせてもらう」
そう言って杖を掲げるマリーカ。
「【分霊】【ソフトリフレクター】」
【分霊】を含め、計12枚の魔法盾を展開した。
「これは……どういう」
意図が読み切れず困惑するツバメ。
マリーカは杖を掲げると――。
「……【跳弾魔法】【霊鳥乱舞】」
三人がかりで【霊鳥】を放つ。
「避けようが……ありませんっ!」
無数の光鳥は、リフレクターにぶつかり軌道を変えた。
消えない。ぶつかる度に方向を変え、大祭壇前を飛び続ける。
「くうっ!」
もはや攻撃方向を予測することすら許さないマリーカの必殺技に、被弾を余儀なくされる。
この『場』を作られてしまった時点で、被弾が確定するスキル構成。
まさに反則級の攻撃だ。
「なによ……あれ」
もはやツバメを取り囲む光の檻と化したマリーカの全開攻撃に、同じ魔導士として驚きしかないレン。
光鳥の恐ろしさは、喰らっても『吹き飛ばない』ところ。
それはつまり、檻の中でいくらでも喰らい続けることができるということだ。
「くっ! ああっ!」
誰の目にも勝負はついたように思えた。だが。
「【加速】【リブースト】! 【加速】【リブースト】――――ッ!!」
「……生き……残った」
それでもツバメは諦めずに必死の回避を続け、どうにか5割のダメージに抑えた。
マリーカの残りHPは5割、ツバメは1割を残すのみ。
「【加速】【リブースト】っ!」
驚いているマリーカに向けて、ツバメは走り出す。
最後は一直線。
同一方向への二度の加速で、勝負を賭けにいく。
その凄まじい速度なら、確実に【霊鳥】よりも先にたどり着けるはずだ。しかし。
「……この瞬間を待っていた」
ここまで共に進んできたことで、『ツバメなら耐えきる可能性がある』と踏んでいたマリーカは手を緩めない。
「【霊鳥鳳火】」
真正面から迫るツバメに向けて放たれるのは、翼を広げた魔力光の巨鳥。
炸裂。
鳴き声のような高音を響かせ、魔力光が飛沫をあげる。
今度こそ勝負あり。誰もがそう確信した次の瞬間。
「【跳躍】」
「ッ!?」
聞こえた声に、マリーカがビクリと身体を震わせる。
魔力光の飛沫を飛び越えてきたツバメが、マリーカの頭上を飛び越えていく。
「……確かに直撃だったはず……っ」
「分身を作るのは、私も得意なのです」
消えゆく【残像】
そして着地と同時、マリーカが振り返ったところで放つ新スキル。
「【サクリファイス】――――【雷光閃火】!」
足元から砂煙を上げつつ進む高速移動。
【グランブルー】が、マリーカの肩口に突き刺さった。
すると刺突部分から猛烈な火花が飛び散り始め、やがて盛大な爆発を巻き起こす。
空中に広がった爆炎が火の粉となって舞い落ちてくる中、爆風によって回転しながら戻ってきた【グランブルー】をキャッチする。
【サクリファイス】を使い、体力のほとんどを乗せて放った必殺の一撃。
残ったHPはわずか1ドット。そして。
「……負けた」
マリーカはHP全損。
そのままゴロンと大の字になって寝転がる。
「す、すごい勝負だったわね……」
「ツバメちゃんすごい……」
一気に強者の一翼となったツバメに、息を飲むレン。
メイも目を輝かせる。
「普通に戦ったのでは勝てませんでした。【サクリファイス】による賭けのおかげですね……」
「……楽しかった。次の時までには何かもう一手、何か仕入れておく」
そう言って、笑うマリーカ。
「……アルト、やっぱり戦う相手としては過去に見ないほど強い」
「ああ、そのようだな」
倒れ伏したままつぶやくマリーカ。
一方アルトリッテは、メイに負けないほどその目を輝かせていた。