軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

168.おやつタイムです!

「メイちゃん! おやつの時間だよー!」

ちょうど一息をつこうと『星屑』をログアウトした三人のもとに、香菜がやって来た。

「可憐姉……部屋の闇密度が下がってる……」

「闇密度って何よ! すぐ行くから香菜は先に行ってて」

妹の香菜を部屋から出したレンは、わずかに顔を赤くしながら振り返る。

「ちょうどいいわね、少し休憩にしましょう」

「はい」

「そうしましょうっ!」

何気に一日での最速攻略記録を、三人で更新したメイたち。

しかしあくまで『三人楽しく』のメイたちは、一息つくためリビングへ向かうことにした。

途端にメイは鼻をくんくん。

「リンゴの匂いがする……」

「そう?」

レンが部屋のドアを開けると、すぐに甘い香りが鼻先をくすぐってきた。

「本当ですね」

「メイ、本当に嗅覚は向上してないのよね?」

「しておりませんっ! た、多分!」

「ちょっと自信がなくなってます」

ツバメがクスリと笑う。

星城家のリビングには、焼きたての大きなアップルパイが置かれていた。

「わあ! すごーい!」

「ほらメイちゃん、こっちこっち!」

ヤマトの英雄メイを、すぐに自分の隣に座らせる香菜。

昨夜同様ツバメもメイの隣、レンは正面に腰を下ろす。

「今日は調子どうなの、メイちゃん」

香菜はその大きな目でさつきをのぞき込む。

「すっごく楽しかったよ! みんなで一緒に採掘して、新しい鉱石を見つけたんだぁ」

「すごい! さすがメイちゃん!」

「えへへ」

「隠し通路も見つけたし、リザードマンの罠も突破して、そのうえ新鉱石の発見だったから、採掘商人たちからは女神だって言われてたわね」

「すごいー!」

「レンちゃんの作戦とツバメちゃんの新武器もすごかったんだよ!」

キャッキャするメイと香菜。

するとそこに、レン母が紅茶を持って来た。

並べた上品なカップに紅茶を注ぐと、続けてアップルパイを取り分ける。

「…………」

「どうしたの?」

何やら不意に考え事を始めた母に、レンがたずねる。

「メイちゃんには、バナナとかの方がよかったかしら?」

「そのようなことはございませんっ!」

慌てたメイ、思わずフォークを落とす。

「あら、ごめんなさい。気がつかなくて」

「え、何をですかっ?」

「気にせず、両手でつかんで食べてもらっても……」

「普段からフォークを使わせていただいておりますっ!」

前にした『ジャングルに七年』という説明のせいで、レン母の中では完全にメイが野生少女になってしまっているようだ。

母のしている勘違いに気づいたレンは、あやうく紅茶を吹き出しそうになる。

「そんなにわたし、野生化してるのかな……」

ごくりとノドを鳴らすメイ。

「最近よくお母さんに夕食のメニュークイズを出されるんだけど、それがビックリするくらい当たるんだよ……これって野生の勘じゃないかなと思って」

「あらまあ、そういうことだったら今夜の夕食は何だと思う?」

「うっ」

レン母の意外な問いかけに、思わず息を飲むさつき。

紅茶を一口飲んで落ち着くと、天を仰ぐ。

辺りに視線を走らせ、ヒントがないかを確認。

深呼吸して、当たってしまう可能性の薄そうなものを考える。

そして、決まる。

「お豆腐のハンバーグ!」

「正解!」

「はううっ!」

間髪入れずに返されて、思わず身体を震わせるさつき。

「本当に……野生化してるかもしれないわ」

「そんなぁ!」

「普通のハンバーグならまだしも、豆腐を当てる?」

「そう言えば、来る時に寄ったスーパーで豆腐がセールでしたね」

「ああ……お母さんその辺り素直だから……」

コーナー化されていた豆腐セールに、手を伸ばしたレンの母。

そして同じくセール品を目にしていたことで意識に『豆腐』の入り込む余地があったメイ。

二人のそんな一致に、思わず感嘆する。

「で、さっきからツバメは何をしてるの?」

「いえ、このお皿に描かれたキャラクターのウサギが可愛いので……」

「ツバメも相変わらずねぇ」

上品なたたずまいで紅茶を飲みながらアップルパイの皿をひっくり返し、そこにもウサギがいないかのぞき込むツバメにレンは笑う。

こうして、おやつタイムも一段落。

甘いものが続いた影響か、意外にもここでキャベツ太郎がいい味を出していた。

「……17階はまた地図があるから、勢いよく進みたいところねぇ」

「そうですねぇ」

「今度はどんな展開が待ってるのかなぁ」

三人、紅茶を飲みつつ息をつく。

「でも、まさかトカゲが二足歩行になって、パーティで攻撃してくるなんて思わなかったなぁ」

「そこにはやっぱり思うところがあるのねぇ」

「だってトカゲが二足歩行になったのに、わたしがいざとなったら四足歩行って……なんかおかしいような気がするんだよぉ」

「進化してるのか、退化してるのかってことですねぇ」

「向こうもチームだし、連携が大事になってくるわねぇ」

「「「…………」」」

各自どんなスキルを使い、どんな戦い方をするのかを想像し始める三人。

「そろそろ行きましょうか」

レンがそう言うと、メイもツバメもすぐに立ち上がる。

「そうしましょうっ!」

「はい」

「メイちゃん、また『星屑』に戻るの?」

「うんっ」

香菜の問いに、元気よく応えるメイ。

「それでは行ってきます! アップルパイも紅茶も、とってもおいしかったです!」

「ごちそうさまでした」

二人に笑顔で手を振るさつき、丁寧に頭を下げるツバメ。

そして三人はぱたぱたと、忙しなく階段を駆け上がっていく。

「いいなあ、可憐姉」

「いい友達ができて、本当に良かったわねぇ」

「もう、悪魔を召喚する必要はないんだねぇ」

こうして星城家の二人はあらためて紅茶をすすり、おとずれた平穏に安堵の息をつくのだった。