作品タイトル不明
169.出会いと説明
「【アサシンピアス】」
「【フリーズストライク】――――発動!」
出会った中ボスは、【隠密】状態のツバメが一刺しすると粒子に変わる。
追ってきたその取り巻きのモンスターたちは、【設置魔法】による氷砲弾で粉砕。
17階はマーちゃんからもらっていた地図があるため、大型の敵をメイが見つけるだけで難なく終了。
そのまま三人は、テンポよく18階へ。
地図のない道では、メイの【遠視】はかなり重要になる。
18階は塔のように切り立った崖が連なる、荒涼とした雰囲気。
植物もあるが冬草のように黄色く、木々もどこか静かなたたずまいだ。
「どうしたのですか?」
19階への道を探すメイがジッと遠くを見つめていることに気づき、ツバメが声をかけた。
「あそこに、人が引っかかってる」
「人が引っかかってる?」
もちろん、基本的に装備品がそこら辺に引っかかっていることはない。
「行ってみましょうか。何かあるかもしれないし」
「うんっ」
念のため、速く静かに進む三人。
やがて枯葉のたまった森の中に入ると、いよいよメイは枝の上を跳び、レンは【浮遊】を使う。
ツバメは少し距離を置き、【隠密】で後を追う。
木々の枝が密集し、枯葉に覆われたその場所には――。
「こんにちはっ」
「うっひゃあ!」
隠れるように息を潜めていた、一人の女の子。
メイたちより少し年下だろうか、金色の長い髪を後頭部で二つ大きな団子状にしている。
白のボアが付いたジャケットを身にまとい、足元はショートパンツにブーツ。
どこか羊感のあるプレイヤーだ。
「あなた、こんなところで何をじっとしてるの?」
レンがたずねると、少女は語り出した。
「私、テイマーなんです」
「テイマー? モンスターがいないみたいだけど……?」
「はい。実はこの階に狙いのテイムモンスターがいるんです。だからまだ、従魔がいない状態なんです」
「よくここまでモンスターなしでたどり着きましたね」
魔物なしの従魔士。
そんな剣のない剣士状態でこの階まで来たという少女に、ツバメは感嘆する。
「そこはもう、ひたすらに逃げて隠れて、コソコソ進んで、地図を読み込んで罠を避けて、何度もリスポーンしてがんばりました」
「どんなモンスターを狙ってるのっ?」
さっそくメイが、興味津々の顔で問いかける。
揺れる尻尾も楽し気だ。
「飛ばない鳥型のモンスターです。ですがその付近にはリザードマンがうろついていて、なかなか……」
「完全に【住人】化してるわね」
「良い『発見』をしてしまって、ダンジョンから戻れなくなってしまっている状態ですね」
「はい……ここまでの往来はかなり厳しいですし、かなりレアな種類のモンスターなので、他のプレイヤーに見つけられてしまう可能性もあって……」
「それで動けずにいるってわけね。ここにはどれくらい隠れてたの?」
「……3か月ほど」
「け、結構いるわね」
従魔士はどのモンスターを使役するかでその活躍度、有利ステージなどが変わってくる。
さらにモンスターは特性や外見にも違いがあるため、その厳選を始めて沼にハマってしまうプレイヤーも多い。
「……『星屑』を始めたきっかけがそのモンスターだったから、諦められないんです」
そう言って儚く笑う少女は、突然震え出す。
「え、ど、どうしたの?」
「もう気が気がじゃないんですっ! 学校に行っても先にテイムされてしまったんじゃないかって心配で! だから最近はもう、ヘッドギアを学校に持ち込んで確認を……っ」
「それはさすがに……」
ちょっと引くレン。しかし。
「わかりますっ!!」
メイ、ものすごく共感する。
「こうして英語の長文を呼んでる間にも、村が大トカゲに襲われてるんじゃないかって、わたしも考えてましたっ!」
うんうん! と、大きくうなずくメイ。
「その度にログインして、ここで見張りつつテイムできるチャンスを待っていたら……いつの間にか3か月もの時間が経っていたというわけです……」
「こ、ここにもトカゲによって大変なことになってる人がいる……レンちゃんツバメちゃん、私たちで力になれないかな? このままじゃ1年2年あっという間だよ! 気がついた時にはおばあちゃんテイマーになっちゃってるよ!」
一匹のモンスターを3か月も遠目に眺め続けたそこそこヤバい少女を見て、もはや他人事ではないと意気を上げるメイ。
一方レンとツバメは――。
「いいわよ」
「私たちで力になれるなら」
それはそれとして、メイの提案には乗る。
「あ……ありがとうございますっ!」
ようやく見えてきた光明に、テイマー少女はもろ手を挙げて歓喜する。
そして、なぜかトカゲに熱い思い入れを見せるメイに問う。
「でも、トカゲとあなたは一体どんな……?」
「育ての親です!」
「……えっ?」
「わたしの……育ての親なんです!」
「…………えっ?」
しかし言ってることの意味は、まるで分からないのだった。