作品タイトル不明
167.採掘します!
「おいおいマジかよ! 他所じゃレアな鉱石も、ここじゃ普通なのか!?」
「【くず鉄】がほとんど出ないとか、神採掘場だなおい!」
「レア素材出ろ! なんかすごい素材出ろーっ!」
プラネタリウムのような半球状の採掘場。
金の輝きを放つマーブル模様の壁に向けて、採掘商人たちは大喜びでツルハシを振るう。
そんな中、めずらしい光景を並んで楽しんでいたメイたちのもとにヒゲの採掘商人がやって来た。
「お前さんたちも採掘、やってみないか?」
「採掘っ!」
意外な誘いに、思わずメイが立ち上がる。
「鉱石を持ち運べる量やピッケルの消耗度は大きく違うが、ツルハシさえあれば基本誰でも採掘は可能だからな」
すると採掘商人の一人が、三人にツルハシを分けてくれた。
「いいわね。採掘はやったことなかったから、ちょっと楽しみかも」
「私も初めてです」
「……【腕力】値が高いと壁が崩れるとかないわよね……?」
ちょっとビビるレン。
「さすがに採掘場で崩落は起きないはずだ」
ヒゲの商人は笑いながら応える。
「さっそくやってみようよ!」
メイは意気揚々でツルハシを抱え、適当な鉱脈のもとへ。
「そうね、せっかくだしやってみましょうか」
「はい」
駆け出したメイに続いて、レンとツバメも隣に並んでツルハシを振り下ろす。
「くすくす」
「あら、どうしたのツバメ?」
「いえ、三人並んで採掘というのも面白いのですが、レンさんがツルハシを振るう姿はなんだかシュールだったので」
遠目に見ると『ゴスロリ採掘人』みたいになってるレンに、採掘商人たちも笑う。
「ちゃんと腰を入れてツルハシを振ってるのがいいよな」
「筋がいい」
「や、やめときなさいよっ」
妙な褒められ方に、顔を赤くするレン。
「よいしょっ! よいしょっ!」
そんな中メイは、楽しそうにツルハシを振るう。
高い【腕力】によって、採掘も早い速度で進んでいく。
すると、メイの叩いた箇所がピカッと輝いた。
「何か光った!」
「お、そりゃレア鉱石の合図だな。何が手に入った?」
「本当ですか? ええと……【金星鉱】だって」
「【金星鉱】!? ここで出るのか!」
「おい! 【金星鉱】ここで出るらしいぞ!」
「マジかよ!」
わき立つ採掘商人たち。
「めずらしい物なのかな?」
「ああ。まだ『星屑』には未発見の鉱石なんかもあってな、その一つがこの【金星鉱】なんだ」
「そうなんだぁ……」
「そういえば俺の手持ちにレシピが……あったあった」
ヒゲの採掘商人は、手元に一つの装備品レシピを取り出した。
「【金星鉱】はいくつか製作レシピに載ってる素材なのに、どこで採れるか分からない鉱石だった」
「あら、本業は鍛冶師だったの」
「そういうことだ。俺が持ってるのはダガーのレシピ。ここまでの冒険のお礼と言ってなんだが、俺に造らせてくれないか?」
「ツバメちゃんの武器だね! いいと思いますっ!」
「いいのですか? メイさんが出した鉱石なのに」
「わたしはもう新しい剣がありますのでっ」
そう言ってメイは、【蒼樹の白剣】を指さした。
「よし、そういうことなら任せてくれ」
ヒゲの商人は、さっそく新武器の鍛造を開始する。
「おい、なんかデカいスライムが入ってきたぞ」
そんな中、一人の商人が声をあげた。
振り返るとそこには、通常のスライムの十倍はありそうな巨大スライム。
「仕方ねえなぁ」
一人の商人が武器を手に、動きの遅いスライムを攻撃する。すると。
「うおっ」
バイン! と跳ね返された。
スライムはそのまま採掘者のもとに寄っていくと、グイっとたてに伸びて、押しつぶしに来る。
「おっとと。避けるのは難しくないけど、採掘中はマジで邪魔だな」
「よし、全員でやっちまおう!」
採掘プレイヤーたちは各々の武器でスライムをガンガン叩く。
そしてそのまま跳ね返される。
「なんだこいつ、全然倒せねえ!」
「よーし! こうなったら、喰らえ【ハードボム】!」
投じられた爆弾はスライムに直撃し、そこそこの爆発を巻き起こす。
しかし大きく波打っただけで、ダメージはなし。
「うっぜええええー!!」
採掘場にモンスター。
動きは遅いが、圧し掛かり攻撃は威力がそれなりにある。
採掘に微妙に集中させてくれない敵を、商人たちはバシバシ叩いては跳ね返される。
「なんかすごくコミカルね」
「面白い方たちです」
「楽しそうだねぇ」
それを見て和むメイたち。
「よし、できたぞ」
すると鍛造を続けていてたヒゲの商人が、一本のダガーを完成させた。
【デッドライン】:攻撃力は低いが、敵の物理耐性や防御スキルなどを貫くアーマーピアス属性を持つ。攻撃力30。
「いい武器ね。物理防御スキル持ちは、ツバメの天敵だもの」
「はい、とても心強いです。ありがとうございます」
ツバメは素材をくれたメイや、ヒゲの商人に丁寧に頭を下げる。
「……ところで、あのスライムって要はそういうことよね?」
「さっそくやってみます」
【跳躍】持ち商人のジャンプ攻撃を、トランポリンのように跳ね返すスライム。
ツバメは駆け出すと、一気にその正面へ。
「【電光石火】!」
放った攻撃は確かに、スライムのHPを減少させた。
そこから振り返って一撃、さらにゲージを減らしたところで――。
「【アサシンピアス】」
速い刺突。
突き抜けるエフェクトが、スライムを貫いた。
「すごーいっ!」
「本当にいい武器だわ」
「すげえ……【金星鉱】の武器、いいじゃねえか」
賛辞の声を上げる商人たち。
スライムのHPゲージはゼロになり、そのまま粒子に……ならず砕け散った。
ツバメと付近の商人たちは、一瞬で全員どろどろのスライムまみれに。
「「「……う、うぜええええええ――――ッ!!」」」
◆
「いやー、付いてきて良かったな」
一通り採掘を終えた商人たちは、皆ご機嫌だ。
「楽しい冒険だけじゃなく、新しい道を見つけるわ、水の罠を走って超えるわ、レア鉱石を出すわ……もう採掘の女神として銅像でも立てるか」
「ははは、そりゃいいな」
「ととと都会の普通の女の子みたいな感じでお願いしますっ! ツルハシは持たせないでください!」
メイ、大慌てで銅像案に要望を出す。
もちろん、ツルハシは見ようによっては石斧や槍のように見える可能性があるからだ。
「あ、そうだ! ノートパソコン片手にコーヒーを持ってるインテリジェンスな感じでお願いしますっ」
「それもう野生児が嫌っていうより、メイの思うかっこいいお姉さん像じゃない」
「てへへ」
早めのレンのツッコミに、笑う商人たち。
「それじゃ、そろそろ引き上げるとするか」
ヒゲの商人たちは、手にしたたくさんの鉱石を持ち帰る作業に入る。
「ありがとな! 最高に楽しかったぜ!」
「三人のおかげで、いい採掘ができたよ」
「また冒険しような」
「はいっ! よろしくお願いしますっ!」
来た道を戻っていく商人たちに、ブンブンと大きく手を振るメイ。
三人が進むのは、さらに下層へと続くのであろう道だ。
「ここからはまた、未知の領域ね」
「何が出てくるのか、楽しみです」
「さあさあ行きましょう!」
隠し通路の発見と、採掘体験。
こうして合宿二日目も、メイたちは最高の前半戦を過ごしたのだった。