軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

158.モンスターハウスと野生児たち

9階に作られた、大掛かりな落とし穴。

落ちた地下10階は、モンスターハウスだった。

そこは文字通り、魔物たちに完全包囲された空間。

そして『落ちたら終わり』と言われる最悪の難所だ。

「こんなの……どうしろっていうんだよ……っ」

愕然とする魔法剣士少女と、肩を落とす神官少女。

そんな中をメイは、勢いよく飛び出していく。

「【バンビステップ】!」

早い踏み出しから振るう剣でコボルトを斬り伏せ、そこから回転斬りで黒犬を斬る。

そこに飛び掛かって来た大猿には――。

「【フルスイング】!」

圧倒的威力の振り下ろしを叩きつけた。

「【魔眼開放】! 【連続魔法】【ファイアボルト】!」

レンは一気に四発の炎弾を放ち、狼たちをまとめて打ち倒す。

「【ファイアウォール】!」

そして炎の壁で敵の接近を阻んだ後。

「【設置魔法】【フリーズブラスト】」

魔法陣を描き準備万端。

炎の壁が消えると同時に特攻して来たモンスターたちを氷結粉砕した。

「【ウィンドブレード・クロス】!」

「【セイントフレア】!」

魔法剣士は風の刃で一角兎を薙ぎ、神官少女が聖なる光で毒蛙を焼き払う。

しかしまだまだ動揺している二人を狙い、巨大なヘビが背後から襲い掛かってくる。

「【アクアエッジ】【四連剣舞】!」

ここはツバメがフォロー。

これによって二人の戦闘にも、大きく余裕が生まれた。

「すごい……っ!」

「これなら、何とかできるかもしれません……」

【ソードバッシュ】を出さずとも、次々に敵勢を減らしていくメイ。

それによって生まれた隙間にレンの魔法が炸裂し、ツバメのフォローで余裕まで生まれる。

三人の連携によってモンスターハウス攻略の光明が見えてきた。

しかし。メイたちが落ちて来た穴から突然、三つの顔を持つ巨犬が降って来た。

その見事な体躯は、間違いなくこの付近のボスだ。

「そんな……」

最悪の増援に、愕然とする魔法剣士。

神官少女も思わず目を伏せる。

「メイっ!」

ケルベロスはメイに向かって駆けて行く。

右の顔から始まる、鋭い牙による喰らい付き。

「はいっ」

これをメイは、肩を引くことで回避。

続く左頭部による噛みつきも、今度は足を二歩下げることで回避。

そして最後、一気に迫ってきた真ん中の顔には――。

「たあっ!」

下がりながらも、猫の尻尾を強めに叩きつけた。

まさかの反撃に、ケルベロスはその場に立ち止まる。

次の瞬間、三つの口内に鮮烈な炎があふれ出す。

「【ラビットジャンプ】【アクロバット】」

吐き出した業火を、メイは後方への跳躍でかわす。

するとケルベロスは一転、その狙いをレンへと変えた。

どうやらこのボスは、後衛も狙ってくるタイプのようだ。

「ッ! 【ブリザード】!」

レンは即座に氷嵐の壁を張った。

しかしケルベロスはその上を飛び越えて来る。

「【連続魔法】【フリーズボルト】!」

【魔眼開放】で威力を上げている氷の弾丸は、空中のケルベロスに全弾命中。

「【フレアアロー】!」

さらに、下がりながら放つ炎の矢で追撃。

それでもケルベロスは止まらない。

「マズい! 魔術師にそいつの相手は……っ!!」

「近接は無理です……っ」

見るからにパワー型のモンスターの接近に、悲鳴を上げる少女たち。

しかしその攻撃は【敏捷】にも数値を振っているレンになら、避けられないほどではない。

ケルベロスの喰らい付き攻撃を、思い切った後方への跳躍でかわす。

そしてレンは、薄く笑みを浮かべた。

「さあ、出番よ!」

その手に新武器【魔剣の御柄】を握る。

ケルベロスは後ろ脚に体重を乗せ、わずかに身体を下げた。

「飛び掛かりは、相手が跳躍する瞬間に真横に飛べば――」

幾度となく見て来たメイの『最短回避』をイメージして、真横に飛び込み一回転。

見事、ケルベロスの飛び掛かりを回避する。

「さあ行くわよ! 魔剣発動! 【フリーズブラスト】!」

その手に握られた銀細工の柄を、起き上がりと同時に振り上げる。

生まれる白い輝きはそのまま刀身となり、ケルベロスの横っ腹を切り裂いた。

「……近接ができないなんて、言った覚えはないけど?」

ちょっと気分が乗ってきたレンは、消えゆくケルベロスに思わず決め台詞を放った。

「な、なんだあれ……魔術師なのにあたしより強くないか……?」

「すごい……」

その身こなしは、メイを見てきたせいか魔術師のわりに鋭く的確。

魔法を刀身に変える武器で敵を斬る瞬間は、剣士と見間違えるほどだ。

いよいよ呆然とする魔法剣士。

同じ後衛の神官女子もただただポカンとしている。そんな中。

「レンちゃん……かっこいいーっ!」

メイだけが拳を振り上げ歓喜していた。

「これでモンスターハウス、無事突破ね」

「ありがとうっ! このゲームをやってきて一番の奇跡だよ、間違いないっ!」

「うん、私もそう思う」

「ふふ、それはさすがに大げさよ」

歓喜にテンションが上がる二人を、ほほ笑ましく見守るレン。

「今度こそ帰らないとな。せっかくこんなすごいパーティに助けてもらったんだ、このアイテムだけは死守したい!」

「うんっ」

力強くうなずく神官少女。

「そうだ。もしよければこの地図……使いますか?」

そう言って、手持ちのマップを差し出してきた。

「11階のマップ? 助かるわ」

「11階のボス……戦いはしなかったのですが、かなり大変と聞いています。油断しないでくださいね」

レンたちの持つマップは、10階まで。

ここで11階のマップが得られれば、バラでもらっている12階まで一気に進めることになる。

「ダンジョン挑戦から、もう6時間経ったのですね」

そう言ってツバメが、小さく伸びをした。

「そろそろ一度あがる? 夕飯の時間だわ」

「はいっ、そうしましょう!」

10階も地図があるため、現在位置の把握に困ることはない。

あらためて9階からの帰還を目指す魔法剣士たちを、10階の出入口まで送ったところで三人はいったん休憩タイム。

「無事にアイテムを持って帰れるといいわね」

「きっと大丈夫です」

「がんばってね!」

メイたちは手をブンブン振りながら、ログアウトしていく。

「本当にありがとうなぁ!」

「ありがとうございました」

二人は何度も感謝しながら、9階へと戻る。

難局を乗り越えた今なら、冷静に帰路を進むことができるはずだ。

「すごいパーティだったなぁ」

「本当です」

「でも、ここまで6時間って言ってた?」

「3人だし16時間の聞き間違いじゃないかな。それでも結構早いペースだけど」

神官少女はほほ笑みながら、そう応えた。

「さすがにそうだよな。これまでの最速って、10人がかりで丸1日かけて12階クリアとかだもんなぁ……」

二人はこうして、魔法剣士の聞き間違いだと判断。

注意深く9階の道を進んで行くのだった。