作品タイトル不明
1508.作戦会議と再会のお姉さん
ネオヨークの海上に広がった、魔力の闇。
アトランティスの巨大船団がその中に消えていくと、残されたプレイヤーたちは呆然とするほかなかった。
「一週間の猶予。その時までに戦うか、隷属するかを選べ……ね」
とんでもない選択肢を突きつけられて、さすがにレンも息を飲む。
振り返ればそこには、魔力の流れを『敵の自由』に変える大量の植物たち。
その力によって放たれた一撃によって、ネオヨークはいよいよ荒廃した都市のようになってしまっていた。
すでにいくつもの都市が、このような植物たちに飲まれた状態。
迎えた危機は、その規模の大きさもケタ違いだ。
「戦わない理由はねえよな」
ネオヨークを拠点にするプレイヤーが問う。
「奪われた街を取り戻す戦いだろ?」
「簡単ではないだろうな、この植物が向こうの大きなアドバンテージなってくるだろうし」
「他の街も負けたら緑に飲まれて、ドンドン奪われていくことになるんじゃないか?」
「そもそもが、そういう奪い合いをしていくクエストなんだと思う。敵の侵攻を止めつつ、女王を叩くみたいな」
これからはエキドラによる侵攻の防衛が、一つの大きな全体クエストとして追加。
各大陸を賭けたぶつかり合いを続けていくという要素が、入って来るのではないかと予想する。
「日常的に、あの大陸のあの街が落ちたらしいといった会話が始まるのでしょうか」
「タ、タワーディフェンスみたいな感じですね……」
「ある程度各都市にトップを配置しておいて、来たら戦闘。そこに各地からプレイヤーが集まって押し返すみたいな戦いを繰り返すのかしら」
「れ、隷属を選んだらどうなるのでしょう」
「働きながら敵の隙を突いて討つ。といった形のクエストになるのではないでしょうか」
「まずはとにかく、何か情報がないかを調べたいわね」
この場にいる誰にとっても、初見の敵。
何かの勝利の糸口になるものがないか、情報が欲しい。
「そもそもどこから来て、どこへ帰って行ったのでしょうか」
「し、調べれば、何か見えてくるものがあるかもしれませんね」
こうして、レンたちが何かヒントはないかと考え出したところで――。
「あっ」
メイが、その目を大きく見開いた。
「ああああああああ――――っ!!」
「どうしたの?」
圧倒的な驚き様に、思わず首を傾げるレン。
するとメイは、ゴクリとノドを鳴らしながら一人の女性を見つめていた。
「あ、あ、あなたはっ!」
「あっ、こんにちは」
「モンスターはどれだけ倒しても、いなくならいことを教えてくれたお姉さんっ!」
それはジャングルの村を守るために、7年という時を戦闘につぎ込んでいたメイに、真実を教えてくれたお姉さんだった。
「メイちゃん、今ではすっかり有名人だね!」
「いえいえ、おかげさまです……っ」
あの時の衝撃を思い出して、思わず身震いをするメイ。
するとお姉さんは、変わり果てたネオヨークをあらためて見回す。
「私も今さっきネオヨークに帰ってきたんだけど、ビックリしちゃったよ」
「すっごく大きな船がいっぱい来て、大変だったんです!」
「その船って、グラン・パシフィック海から来たんじゃないかな?」
「どうして分かるんですか?」
メイが首と尻尾を傾げて問いかける。
「グラン・パシフィックの一端に、地図に無かった大陸が突然現れたんだよ。緑でいっぱいだったし間違いないと思う。しかもあの感じ、古い文明が復活したんじゃないかな」
どうやらこのお姉さんは今も、新しい島なんかを目指して冒険を繰り返しているようだ。
「なるほど……」
まさかの再会に、感慨深そうにしているメイ。
だが彼女の言葉で、レンは一つの可能性にたどり着く。
「古い文明の復活となれば、行き先は一つじゃない?」
「考古学者さん!」
「そういうこと」
「この事態を受けて、何か様子に変化があるかもしれません」
「そ、そうですね」
メイたちは、さっそく動き出す。
この事態にどう対応するかは、大きな問題だ。
ネオヨークに集まっていたプレイヤーたちも、多くが五月晴れに追従すること選んだ。
こうして一団は、ポータルを使って王都へ。
そのまま考古学者の研究所となっている家へと、足を向ける。
軒先に集まっている猫たちが、ツバメのごとき速度でメイに群がってくるのはいつも通りだが、やはり少し普段とは違う。
考古学者は家の前で、何やら難しそうな顔をしていた。
「皆さん……どうやら世界は大変なことになっているようですね」
どうやら、ここで間違いなさそうだ。
「あの魔力を吸う植物たちは、世界最古とされる文明の物。天変地異を前にして、海底での長い眠りを選んだ『武』の超大国の物で間違いありません」
「その超大国は、どこにあったの?」
「今でいうグラン・パシフィック海の一角ですね。全ての大陸から離れた緑の孤島。そこが、彼女たちの本拠地です」
「古すぎる上に、残る文献や遺跡なども無かったために、我々の間でもその存在が疑問視されていたのですが……まさかこのような形で復活するとは……」
「知っていることだけでいいから、教えてもらえる?」
「はい、もちろんです」
レンがそう言うと、考古学者は神妙な面持ちで大きくうなずいた。