作品タイトル不明
1509.考古学者とこれから
「グラン・パシフィック海の一角に現れたという緑の孤島は、間違いなく最古の文明エキドラです」
レンに問われた考古学者は、その概要を説明する。
「『武』を尊び、改造した植物によって魔力を自由に操る最強の部族。我々とはまた違う進化をした文明です。天変地異から生き延びるために島ごと海中に沈み、復活の時を待っていたというのが、我々考古学者の持つ情報です」
「ずいぶん情報が少ないのね」
「はい、やはり突然全てを持って海中に消えてしまった文明なので……」
「でも変わってるわよね。一週間の猶予を待って、また答えを聞きに来るだなんて」
「やはり各地にトッププレイヤーの方たちを配備して、連絡部隊を駆けることでどこに敵が来ても柔軟に対応できるようにするというのが、良いのでしょうか」
「ふ、複数の都市を同時に攻めてくるのか、それともまとめて一か所にやってくるのかで、戦略が変わりますね」
メイに真実を教えたお姉さんが、興味深そうにうなずく。
どちらにしろ、最初は大きな都市にトップを分けて配置して、敵の出方次第で慌てて移動という形になりそうだ。
「各都市に、前もって罠の類なんかを作っておくことも大事だな」
「待ち受ける形になるんだったら、必須になるな」
「すでに緑化されてしまった都市を、取り戻す方法も問題よね。どちらにしろあの植物が邪魔になりそう。魔法を吸収して利用するだけじゃなく、転移まで可能にしてしまうんだもの」
「七日間というのは、そういう事も踏まえて考える時間なのかもしれませんね」
見せつけられた敵の凄まじい強さと、巨大な船団。
隷属から反旗を翻す展開のクエストも存在する可能性を踏まえると、なおさら難しい選択になりそうだ。
「私は各地の侵略用植物をいくつか集めて、植物学者に見てもらうことにしましょう。何か対策が見つかるかもしれません」
「た、助かります」
「それなら魔力の使用とか、場合によっては枯らしたりする方法なんかも見つかるかもしれないな」
エキドラ植物に対する、対応策の言及。
どうやら考古学者、または植物学者からのルートは一つのカギになりそうだ。
「あとはとにかく、頼れるトッププレイヤーとの連携が必須になるわね」
「そうですね……敵の侵攻を止めるにしろ、都市を奪い返すにしろ、強力なプレイヤーの参加は必須だと思います」
エキドラの先遣部隊だった女王直属の部下たちは、驚異的な強さを誇る。
この件には、誰もが大きくうなずいた。
「――――ほう、強者を呼んだか?」
「私も力になるぞ!」
「「「っ!?」」」
聞こえてきた声に、ざわつき出すプレイヤーたち。
「神槍のグラムだ! それに聖剣のアルトリッテも!」
やって来たのは、女王の親衛隊と戦ってどうにか追い返すことに成功したグラムのパーティと、アルトリッテたちだった。
「神槍のグラムには、借りを返さなくてはならいヤツがいる。必ずや見つけ出し、どちらが上かを教えてやる!」
「うむ! このままでいるのは許されぬからな!」
怒りに頬を膨らませるグラムが言い放てば、アルトリッテも大きくうなずく。
やはり全力を使わずに撤退する敵に押されていたという事実は、気に入らないようだ。
「あはは、ごめんね。グラムがどうしてもって聞かなくて」
「あたしは別に、どこで戦ってもいいんだけどな」
「……これで勢いづいておいて、いざという時にスッ転ぶのはいつものこと」
「いつもではない!」
どうやらローランや金糸雀、マリーカもこの作戦を容認しているようだ。
「蝶を飛ばす女は、この神槍のグラムが必ず打ち砕く」
「砂使いは、我らが対応するぞ!」
「……でも、全国どの都市に誰が来るのか分からない状態で、上手く対応できるか疑問」
「場所が分かったら即座に連絡部隊を出して、現場に派遣する形が基本だろうなぁ」
大きな都市に、あらかじめトップを派遣。
三人の親衛部隊が出てくるのを見つけ次第、グラムやアルトリッテなどに伝えに走る。
受け身かつ後手。
その間に街を変えられてしまう可能性もあると考えると、なかなかシビアな戦い方になりそうだ。
「それなら各自準備をして、七日後に集まるっていう形でどう? 女王シャナへの返事の直後に、いきなり戦いになる可能性もあるし」
「いいだろう。ヤツもまとめて神槍のグラムが叩く」
「もちろんだ! 聖騎士の力を見せてやろうではないか!」
猶予の七日間をめいっぱい使って準備を進め、その上で再来のエキドナを待つ。
そしてそのまま戦うのか、全国的な侵攻に備えるのかを決める。
そんな提案に、グラムもアルトリッテも大きくうなずいた。
「決まったみたいね。しっかり準備をしてエキドラを迎え撃ってやりましょう!」
「この三つのパーティが一緒なら、心強いぞ!」
「神槍のグラム、聖剣のアルトリッテ、そして野生児メイ! 星屑最強前衛だ!」
「野生児ではございませんっ!」
「俺たちも敵との戦いに備えて罠や戦闘向けマップの確認、アイテムの補充なんかをしておかないとな!」
「他のトップパーティにも声を掛けて、戦闘の中心になりそうなプレイヤーには作戦内容を伝えておこう!」
エキドラ再来に向けて、さっそく慌ただしくなるプレイヤーたち。
「この素敵な世界と、楽しいみんなを……守りたい」
それを見て、メイも両拳をぎゅっと握って気合を入れる。
「皆さん! ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げますっ! 世界は、わたしたちが守りますっ!」
「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」
メイのそんな言葉に、大きな鬨の声が響き渡った。