軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1502.古都と突然の来訪者

「わあー、綺麗な街だねーっ」

「とても趣があります」

橙の屋根が青い空に映える、古都フィレンティーナ。

ここは星屑の中でも『屋根のない美術館』と呼ばれるほどの街並みを誇る。

メイは古い石造りの建物が並ぶ道を、跳ねるような足取りで楽しそうに歩く。

いくつも見られる丸屋根の建物や、街の間を流れる川がとても美しい。

「こ、この辺りはピザもおいしいので、グレープジュースと一緒に楽しみたいですね……!」

「いいわねぇ」

「さ、さっそく買ってきます!」

食べ物のことになると、盾を構えずとも人前に出られるまもり。

伝統的な薪窯で焼いたピザを一ピースずつ、四人分。

さっそく買って戻って来た。

「ありがとーっ! いただきますっ!」

メイは受け取ったピザに、大きく口を開けてかぶりつく。

「おいひいーっ!」

「はい、とてもおいしいです」

「これも冒険者酒場に置きたいレベルね……って、グレープジュースもいいじゃない」

モッツァレラチーズと生ハムを、クリスピーな生地に乗せて焼いた一品は味も見事だ。

「まもりさん、広告観ましたよ」

「は、恥ずかしい限りです……っ」

それでもまもりは、ちょっとうれしそうにする。

アイアスラントの火山に潜った際の一幕。

スキル【食べ歩き】によって、片手の盾で溶岩の炎を受け止めながら、もう片方の手でサンドイッチを食べるまもり。

『戦闘中でも――――食べたい!』

これがそんな姿と共に、書かれたキャッチコピー。

食品メーカーと星屑運営のコラボの際に、使われた広告だ。

まもりの食いしん坊ぶりは、見事に目を引くものとなった。

「やはり高火力火炎攻撃を受け止めながら、サンドイッチをむさぼっている図は最高ですね」

「メイの野生児に続いて、絵面に力があるものね」

レン、しれっと自分の中二病魔術師を除外してうなずく。

先日異世界に石橋を作ったばかりの四人は、川に架かる橋をこれまでとは少し違う目線で見ながら進む。

そして笑いながら、街の中心部に踏み込んだところで――。

「んっ!?」

石畳の上に見えた影の、妙な動きに気づいたメイが顔を上げた。

逆光でよく見えないが、何者かが大きく空に飛び出しているのがすぐに分かった。

「……【ディノキリング】」

聞こえた声。

妖しい影が何かを投じると、ドン! と空中に衝撃波が生まれた。

「あぶないっ!」

「メイ!?」

「メイさんっ!」

「【ラビットジャンプ】!」

メイはまもりの肩に触れて合図を一つ、それから近くにいたツバメとレンを抱えて全力で跳躍。

「【クイックガード】【地壁の盾】盾!」

まもりはメイの合図で取り出した二枚の盾で、防御態勢を取る。

直後。

「わああああああ――――っ!!」

「きゃあああっ!」

先ほどまでメイたちがいた石畳の路に突き刺さった飾り付きの槍が、猛烈な爆風を起こした。

大きな穴を穿ち、近くの民家が三軒ほど崩れて落ちる。

メイたちもダメージこそないが、地面をゴロゴロと転がった。

「なんだこれ!? どうなってんだ!?」

「急に誰かが攻撃を!?」

その余波を受けて倒れた通行人たちも、ただ事ではない事態に悲鳴を上げ始めた。

吹き飛ばれたメイたちは、そのまま体勢を立て直して顔を上げる。

「一体なに!?」

辺りに魔物の姿はなし。

だがクエストや何かしらの『許可』が出ている状態でもなく、街中での急な攻撃を放つことはできないはずだ。

困惑しながら、クエストの発端を探すレン。

どうやら衝撃波を起こしたのは、鮮やかな羽根とチェーンで飾られた一本の槍のようだ。

深い色味をした木製の柄を、銀で飾った意匠は売り物では見かけない。

見た目から、世界観を感じる特別製だ。

「どなた、ですか」

ツバメが問いかける。

そんな槍を取りにくるかのように、歩いてくる一人の少女。

褐色の肌に、細身ながらも引き締まった身体つき。

腕から肩にかけては、生い茂る木と美しい緑葉を描いたタトゥーが見える。

原色の装飾が施された、銀の腕輪に足輪。

肩で切りそろえた黒髪は、後部で一本に結んだ長い束にしている。

槍の少女は応えず、片手を地面につく形で構えた。

「くるよっ!」

メイの声の直後、少女は獣のように走り出す。

「【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」

『慣れている』レンの反応は早かった。

放つ炎弾は一直線に少女の元へ。

しかし少女は、これをかわしながら接近。

回避と接近を同時に行うことで、その身軽さを見せつける。

そのまま槍のもとに駆けつけると、通り過ぎるような形でつかんで振り返る。

「【誘導弾】【フレアストライク】!」

その背中を狙って放たれる炎砲弾。

しかし少女が反転して槍を振り払うと、レンの魔法がかき消えた。

「【ジャガー・クルレール】」

次の瞬間、駆け抜ける疾風のような勢いで特攻。

「きゃあっ!?」

同時に放った槍の払いが、レンをその場に転がす。

自らの速さに制動を駆けるように、身体を低くして足を地面に擦らせる。

そして手にした槍を大きく引き、そのまま投擲。

「【イアケレ・エッジ】」

衝撃波と共に投じられた槍は、凄まじい速度でツバメを狙う。

「【かばう】【地壁の盾】! っ、きゃあああっ!」

まもりは即座の防御でツバメを守るが、その威力の前に転がり家の壁に激突。

宙をクルクルと落ちてくる槍。

「【加速】【リブースト】【稲妻】!」

ツバメは最速で接近し、刀の振り払いを放つ。

すると少女はこれを、獣のように身を低くして回避。

「【反転】!」

すぐに振り返ったツバメに対し、槍のない少女は最速で接近。

主戦武器がない状況は、通常であれば不利となる。

「【ルクスド・ランシア】」

代わりに取り出したのは、光の槍。

虚を突かれたツバメに、怒涛の踏み込みで突きを放つ。

だがツバメもこれを、細かなバックステップで回避。

少女の大きな踏み込みに、大きな後方へ低い跳躍で備える。

しかし光の槍はつかんで攻撃するだけでなく、投擲にも使用可能。

「くっ!」

後方への跳躍がアダとなり、ツバメは腹部に槍を受けてそのまま跳ね転がった。

「強い……っ!」

付近にいたプレイヤーたちが、思わずこぼす。

ツバメたち三人から、あっという間に転倒を奪ってみせた少女は身のこなし、火力共に驚異的だ。

「【裸足の女神】!」

だがここに駆け込んできたのはメイ。

「【フルスイング】!」

放つ猛烈な振り降ろしに、長い後方への跳躍で対応すると、盛大に砂煙が巻き上がった。

回避のために下がりながらも、少女はその先にある槍をしっかり回収。

「【アクロバット】!」

「っ!」

広がる白煙を割るようにして、飛び出してきたメイにとっさの防御を取る少女。

「もう一回! 【フルスイング】だあああ――っ!」

少女は槍によって剣を受け止めるが、その威力は異常。

激しく地面を転がった後、慌てて立ち上がる。

気が付けば、メイと少女が正面から向き合う形。

二人は武器を構えると、同時に地を蹴った。