作品タイトル不明
1472.橋を守りますっ!
ウェザガリアは、けたたましい咆哮をあげた。
降り出した猛烈な【酸性雨】は、HPを容赦なく削っていく。
「酸で武器防具から湯気が上がるのは、初めて見る演出ね……!」
さすがにこれで武器や防具が破損することはないが、状況の厳しさを感じさせるには十分なやり方だ。
「あ、雨という形では、防御も難しいです……っ」
今は傘のように盾を持っているが、攻撃に対して盾を向ければ雨水は避けられない。
「「「っ!!」」」
【煽り風】による広範囲への猛烈な風に、全員が防御態勢を取る。
しかし風が吹きつけると、それだけ勢いよく【酸性雨】を浴びることになり、HPの減りも大きくなる。
攻撃自体は受けていないのに、HPは際限なく減り続けるという状況は厳しい。
「【誘導弾】【フリーズストライク】!」
ウェザガリアは、レンの放った氷砲弾をかわしながら接近。
「【ファイアウィップ】!」
さらにローチェの攻撃もかわして、そのまま【特攻】を仕掛けてくる。
「「っ!?」」
驚くツバメとメイ。
これまでの滑空しながらの体当たりとは違い、爪を地面に突き刺しに来るような攻撃だ。
ウェザガリアはそのまま、隕石のように地面に激突。
「【ラビットジャンプ】!」
「【跳躍】!」
二人はとっさに跳ぶも、広げた翼にわずかに弾かれ転がる。
「「っ!!」」
そのまま放たれる豪快な翼の振り回しは風を生み、【酸性雨】によるダメージを追加してきた。
「とんでもない暴れようですな!」
「でも、自分の身体もボロボロになっていってる……!」
バサリと落ちる羽の塊に驚きの声をあげるシオールたちは、慌てて防御に回る。
ウェザガリアにとってもこの攻撃は、諸刃の剣。
『賭け』の一面を持つのだろう。
だがこれだけでは止まらない。
続けざまに【豪雷】を発動し、全員が大人しく防御を選択したところで、さらに【煽り風】で防御の継続を強要。
「【コンティニューガード】【天雲の盾】!」
それでなくても【酸性雨】によるダメージは、【豪雨】によって増している。
吹き荒れる風がメイたちの動きを止めたところで、ウェザガリアは再び空から接近。
「っ!!」
【つかみ投げ】でレンを確保すると、直接急流に放り出しに行く。
「そうはさせないよっ! 【ウィップキャッチ】!」
いち早く気付いたのはローチェ。
それは本来小型の敵をつかんで止めるスキルだが、味方にも使用が可能だ。
「つかんだ!」
なんとかレンの脚にかかったムチを、全力で引く。
「ダメかもぉぉぉぉ――――っ!!」
しかしさすがに【腕力】が足りず、ローチェも引きあげられて空へ。
だがこの時間稼ぎと、正直な悲鳴がメイの耳に届いた。
「【バンビステップ】からの【ターザンロープ】!」
レンの脚にムチを巻きつけたまま宙を行くローチェの脚に、さらに巻きつくロープ。
「レンちゃんたちは、返してもらいますっ!」
メイが全力でロープを引くと、ウェザガリアの手からレンが滑り出た。
そのまま一直線に落ちていくレン。
だが、このままでは終わらない。
落ち際に【浮遊】を発動し、杖を真上にいるウェザガリアに向けた。
「ここからだったら外さないわ! 【フレアバースト】!」
緩やかな落下の中で放つ一撃が、敵の腹部で爆炎を上げる。
「続いちゃうよっ! 【サンダーウィップ・スプレッド】!」
さらに着地直後のローチェが、空中でフラついていたウェザガリアに一撃。
こうして三人は見事に、危機を好機に変えてみせた。
「助かったわ!」
「助かっちゃった!」
レンがローチェに、ローチェがメイに、つなぐ感謝。
「二人ともないすーっ!」
最後は見事な攻撃を決めた二人に、メイが水浸しの笑顔を向ける。
墜落するような軌道で、離れていくウェザガリア。
だがこの連携によってさらにダメージが加算されたことで、始まるのは最後の猛攻だ。
降り続く強烈な【酸性雨】にどんどんHPを奪われる中で、放つ【豪雷】
防御姿勢を取らせたところで、さらに一つの大きな雷を落とす【雷震槍】で攻撃。
「っ!!」
ツバメは防御で対応するが、【酸性雨】と同時にHPを削られているため焼石に水のような状況だ。さらに。
「動けない……っ!」
降雨による影響で、伸びた攻撃範囲。
メイはわずかに足が触れて、硬直に陥った。
そこに容赦なく迫るのは、シンプルな【突撃】だ。
「うわああああーっ!」
ぶつかられたメイが地を転がったところで、【烈風破】を放つ。
このままリングアウトを狙う気だ。
「【かばう】【不動】【コンティニューガード】【天雲の盾】!」
まもりがどうにか防御に入るも、その枠からわずかに出たメイの腕が【酸性雨】に晒されHPを持っていかれる。さらに。
「やりすぎでしょう……っ!」
それ自体にはダメージがほとんどない【煽り風】が、【酸性雨】と混ざることで広範囲高火力攻撃として全体のHPを削っていく。
「アルカナちゃん! ヘルメスちゃん!」
自らの羽をボトボト落としながらでも、めちゃくちゃな攻撃を続けるウェザガリアによる圧倒。
止めるためになーにゃが選んだのは、残り二体のドール召喚。
黒の戦闘用ドレスを着た短い白髪のアルカナと、白の戦闘用ドレスを着た黒い長髪のヘルメス。
「アルカナちゃん【熱光千里】!」
長い距離を駆け抜ける槍の貫通刺突でウェザガリアを撃ち、敵の狙いを引き受ける。
即座に迫る猛烈な【突撃】に、今度はヘルメスを前に出す。
「【イージス】ですな!」
二等辺三角形の純黒盾を持ったヘルメスが、早い動きで前に出て受けるも、弾かれて転がる。
だがなーにゃのドールが身体を張った時、続くのはシオールの役目。
雨に打たれながら踏み込むと、ウェザガリアも攻撃体勢の中にあった。
「目覚めて【超合金メイス】! 【振り降ろし】ィィィィ!」
先に当てることを優先した大型メイスの振り降ろしは、ウェザガリアの腹部を弾いて体勢を崩した。
すると狙いとは違う角度で放たれた【烈風破】は、ドールたちの間を通り過ぎて――。
「橋が、攻撃範囲内に……っ!?」
暴風は、完成間近の橋へと向かって一直線。
「ここは、俺たちが――ッ!!」
そこに立ち塞がったのは、十数人のハウジング勢だった。
全員がその身を盾にして、酸性の暴風を受け止める。
そして即死スレスレで、どうにか橋を無傷で守ることに成功した。しかし。
もう一発。
「うわああああああ――――っ!!」
敵勢とみなされたハウジング組に、放たれる【烈風破】
吹き飛ばされて転がったプレイヤーの中には、運悪く急流に落ちていく者もいた。
「俺たちは橋を架けたいんだよ! メイちゃんたちと一緒に!」
「俺に構うな……っ! 俺たちの橋を、橋を頼むぅぅぅぅぅ――――っ!!」
橋を頼むと、最後の言葉を残して消えるハウジングプレイヤー。
それを見たハウジング仲間たちも、渾身の演技で応える。
「「「かんなくず氏ぃぃぃぃ――――っ!!」」」
「犠牲者……っ! でも命を懸けたことが隙を作ってくれたわ! 【誘導弾】【フリーズストライク】!」
放つレンの放つ一撃をかわして、ウェザガリアは【烈風破】で反撃。
かすめただけでもその勢いはすさまじく、レンが地面を激しく転がる。
「本当にとんでもない攻撃ね……っ! でも私は攻撃ができない状態下でも……指示をすることができる! パラス・アテネ!」
ウェザガリアがハウジング勢とレンを続けて狙ったことで、生まれた時間。
その時パラス・アテネは、空を駆けていた。
大きく旋回するように飛んだ一羽のフクロウは、そのままウェザガリアに突撃。
「ルーン【発動】!」
空中でルーンを発動する。
パラス・アテネに変わって【入替のルーン】でやって来たのは、もちろんレンだ。
「【フレアバースト】!」
突然頭上から放たれた爆炎に、ウェザガリアが空中で大きく体勢を崩した。
そこに駆けてくるのはメイ。
「【裸足の女神】【ラビットジャンプ】!」
豪雨を斬り裂く形で、大きく跳躍。
「……【ゴリラアーム】」
小声でささやくと、なんとウェザガリアの首元をその手でつかんだ。
そしてそのまま強引に引き落とし、地面に叩きつける。
グシャっと大きな音と共に、地に落ちたウェザガリア。
この時点ではまだ落下ダメージ計算。だが。
「【蛮族流】【装備変更】!」
メイの手に、二つの武器が握られる。
「【フルスイング】――っ!」
まずは左手の【世界樹の剣】を振り下ろす。
ド派手なエフェクト共に、容赦なく叩きつけられる剣。
「からの――――【ダイナブラスト】だああああ――――っ!!」
続く攻撃は、身の丈もほどある骨の振り上げ。
冗談みたいな勢いで、飛沫をあげながら転がったウェザガリアはそのまま大岩に激突。
「今だねっ! 【双死竜】!」
ローチェの呼んだ二体のゾンビ竜が、その翼に喰らいつく。
「【魔砲術】【誘導弾】【滅多打ち】【フリーズストライク】【フリーズストライク】【フリーズストライク】【フリーズストライク】【フリーズストライク】!」
容赦のない氷砲弾の連射が激突。さらに。
水たまりを蹴るようにして、駆けてきたのはツバメ。
「【極み一閃】」
超高速で駆け抜ける斬り抜けが、通り過ぎていった。
すると遅れて無数の斬撃が敵を切り刻み、ウェザガリアが打ち付けられていた岩ごと、滅多切りにしてしまう。
HPゲージが消し飛べば、これで勝負あり。
いよいよ身体が崩壊したウェザガリアは崩れ落ち、地に帰っていく。
「やったー!」
「やりました!」
手を振り合って喜ぶメイとツバメ。
するとやがて雨が止み、陽光が戻ってきた。
「雨が、あがったわ」
「き、厳しい戦いでした……!」
見事な勝利に、歓喜の笑みを見せるハウジング勢。
メイは犬のように体をブルブルと振って、水気を吹き飛ばしてみせた。