軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1470.巨鳥ウェザガリア

「ついに来たね……っ!」

迫る巨鳥を見て、メイが尻尾をピンと張る。

これまで三度に渡って橋を落とし、ハウジング勢を苦しめ続けた異世界の魔物。

黒い翼の中には赤青黄緑の色違いの羽が混ざり、石板をたくさん張り付けて作ったような足とクチバシが恐ろしい。

また一部の羽が顔周りにも生えているのは、どこかネイティブ・アメリカンの装飾を思わせる。

「……今度こそ!」

マーちゃんの言葉に、息を飲むハウジング勢。

「下がっていて」

「「「お願いします……っ!」」」

レンの言葉に、すぐさま距離を取る。

彼らが無事であれば戦いの後に橋はすぐ完成するため、この判断は的確だ。

「私たちも、援護に入りますね」

「乗り掛かった舟ですな」

「ローチェちゃんも、がんばっちゃうよ!」

どうやらシオール達も、援護という形で一緒に戦ってくれるようだ。

「異世界の魔物。今度はどんな戦い方をするのでしょうか」

「は、橋を落とした風の攻撃が多そうです……!」

ツバメとまもりが構えを取る。

そして巨鳥が、こちらに向けて滑空を始めたその瞬間。

「先手はもらうわ! 【魔砲術】【フレアバースト】!」

まずはレンが初手を取った。

巨鳥ウェザガリアはこれを回避しない。

発動する【風防】は、強烈な風をまとって防御とするスキル。

吹きすさぶ烈風が、爆炎をかき消し散らす。

「【ファイアウィップ】!」

速度を下げることなく迫るウェザガリアに、さらにローチェが攻撃を繰り出す。

しかしこれもムチが風にブレ、かすめる程度にとどまった。

ウェザガリアは低い位置に滞空すると、翼を広げて【煽り風】を発動。

「「「「っ!!」」」」

広範囲に猛烈な風を吹かせ、体勢を崩すスキルに大きくのけ反る。

「やっぱり風がポイントになりそうね……!」

レンが戦いの流れを、そう予想した次の瞬間。

突然空中に広がる黒雲。

【豪雷】は、猛烈な雷が一定範囲に降り注ぐド派手な攻撃だ。

「【天雲の盾】!」

ここで、のけ反りからの解放。

まもりが慌てて空に向けて盾を構え、メイたちも防御態勢を取る。

直後、視界を焼くほどの猛烈な雷が一斉放出。

地面を激しく打って、そのまま火花を散らして消える。

範囲内のメイ、ツバメ、まもりは防御で、どうにかダメージを軽減させた。

派手な雷光と轟く雷鳴は、始まる激しい戦いの予兆だ。

「今度は本体が来ます!」

取らされた防御姿勢。

この隙を使いウェザガリアは、シンプルな【特攻】で攻撃。

大きな体躯による単純攻撃は範囲が広くやっかいだが、こちらも幾度となく大物と戦ってきた面々。

「【バンビステップ】!」

「【加速】【リブースト】!」

問題のない回避を見せる。

だが問題は、そこから続く攻撃だった。

振り返りと共にあげた咆哮に、ツバメは硬直を狙う攻撃を予想して防御を取るが――。

「っ!?」

【烈風破】は、単体狙いの暴風攻撃。

ダメージこそ少ないが、とにかく吹き飛ばされる距離が長い。

直で受けたツバメは冗談のような勢いで地を転がり、そのまま急流へ。

「そういう狙いだったのーっ!? 【裸足の女神】っ!」

あまりに容赦のない吹き飛ばし。

メイは最速で走り、そのまま崖から急流へ落ちようとしてたツバメの手をギリギリでつかみ止めた。

「ありがとうございます……っ!」

「そういうギミックがあるのは知ってたけど、リングアウトを狙ってくるのは厄介ね! 高速【連続魔法】【フレアアロー】!」

すぐさまレンが、速い攻撃でウェザガリアを攻撃。

これは再び【風防】で防御されるが、狙い通りツバメへの追撃を止めることに成功。

「シオール! なーにゃ! 【ファイアウィップ】【エクスプロード】!」

そして【風防】の終わり際を狙って、見事なタイミングでローチェが燃えるムチを叩き込み、爆発を起こした。

スワローとシオールが、メイたちの代わりに前衛として入る形で戦闘を継続する。

「まるで味方多めのRPGみたいですな! スワローちゃん! 【加速】【急加速】!」

先行するのは、ツバメを模したドール、スワロー。

一気に距離を詰め、低空で体勢を立て直したばかりのウェザガリアの前へ。

迫るのは、ツバメを吹き飛ばした【烈風破】

「今! 【宙返り】からの【二連空閃】ですな!」

駆ける暴風の上を跳び越えて、そのまま空中で放つ剣閃の二連撃を決める。

「【誘導弾】【フレアストライク】!」

ここでレンが確実につないで、足の遅いシオールのために継続的な隙を生み出す。

「ありがとうレンちゃん!」

これぞメイが憧れる『素敵なお姉さんスマイル』を浮かべて走るシオールが、その手に思わぬ厳つさのメイスを取り出す。

「【打撃強化】! 起きて【超合金メイス】!」

腕力系スキルの次撃威力を向上させる補助スキルをかけ、そのままメイス固有のスキルも発動。

するとその大きさを、小さな重機のようにしたメイスを全力で叩きつけにいく。

「覚悟してね! 【アトミックメイス】!」

叩きつけた大型メイスが、盛大な爆発を起こして直撃。

大きく弾き飛ばされたウェザガリアは、地面を跳ねて転がった。

生まれた距離。

この隙を突いて、メイたちは陣を組み直す。

「ありがとーっ!」

「ローチェちゃんには、これくらい余裕なのだーっ!」

「なーにゃさんもお見事でした」

「いえいえ、もとを正せばツバメさんあってこそですな!」

見事なフォローに、楽しそうに声を掛け合う七人。

ここでウェザガリアは、戦法を変えてくる。

「空模様が、変わっていっています」

今度は一瞬で、灰色の雲が付近に広がっていく。そして。

「……あ、雨ですか?」

ぽつぽつと降り出した水滴は、ドンドン強くなる。

そして一瞬で、視界をかすませるほどの水量となった。

【大雨】はシンプルに強い雨を降らせるスキルで、これだけではもちろんダメージなどはない。しかし。

「「「「っ!?」」」」

広範囲に猛烈な風を吹かせ、体勢を崩す【煽り風】に大量の飛沫が乗ると、のけ反りに加えて視界も奪われる。

「きゃあああっ!」

レンの視界に影が入った次の瞬間。

ウェザガリアの【特攻】が炸裂して、地面を転がる。

「ちょっと! 何これーっ!?」

さらに雨水を引き連れての【烈風破】は、かすめただけなのに機関銃で撃たれたかのような勢いとなり、ローチェを弾き転がした。

「ロ、ローチェさんっ! 横に転がってください!」

ローチェはまもりの声に、周りを確認しないまま横に転がる。

すると先ほどまでいた地面を、ウェザガリアの堅硬な爪が深々と引っかいていった。

【つかみ投げ】はプレイヤーをつかんで空を行き、そのまま急流に捨てるという恐ろしい攻撃。

まさにローチェはまもりを即座に信じたことで、命を守った形だ。

だが、ウェザガリアの攻勢は止まらない。

ここで放つ【豪雷】は、降り注ぐ雷の直撃を喰わらずとも、足元にたまった水がその範囲を広げ、副次的なダメージを与えてくる。

派手な雷光の直後、足元を駆ける電撃にまでは意識が回らない。

「くっ!」

「これは痛いですな……っ!」

「あ、足元の攻撃は……!」

対応できなかったシオール、なーにゃ、まもりが高いダメージを受けた。

「なるほど。天気自体をこれだけ激しく動かしてくる敵は初めてね……!」

「はい、まさか天候変化をこの速度で行うとは!」

どうにか防御を間に合わせたレンと、イチかバチかの【跳躍】で難を逃れたツバメが息をつく。

天候変化と、急流への即死リングアウト。

異世界の敵は、やはり容赦がない。