作品タイトル不明
1457.砕け散った橋と再挑戦
「橋が……」
異世界に建設中だった大きな石橋は、巨鳥の起こした桁違いの暴風に崩れ去った。
残ったのは、無残な姿をさらす残骸のみ。
「今回も、ダメか」
落ちれば即死の急流。
わずかに生き残ったハウジングプレイヤーたちがヒザを突き、落胆の息をもらす。
一方巨鳥はその驚異的な強さを見せつけると、どこかへと飛んでいった。
「本当に大型の魔物だったわね」
「これで作りかけの橋を壊されたのは三度目。橋を架けること自体はクエストではないんですけど、あの巨鳥の打倒も依頼としては見つかっていないんです」
神妙な面持ちで、マーちゃんが告げる。
「異世界はクエストというより、新たな世界で目標を見つけ、その身一つで成していけるかといったサバイバルの感じなんですよ」
「桁違いのサイズをした魔物に、恐ろしい病。そして数多の謎を解きつつ生き抜いていけっていう感じなのね」
「ですが、その一端としてあの巨鳥がいると思うと少しワクワクしますね」
「本当だねっ!」
「そうなんです……! 謎ばかりの世界で生き抜くために作る。それは異世界ならではの楽しさと言えます!」
これにはマーちゃんも大きくうなずく。
どこに何が待ち受けるのか分からない上に、これまでとは常識も違う。
厳しさの方向性が違う異世界に、どこかワクワクしてしまうのは人間のサガか。
「ただ……」
異世界を開拓する楽しさに燃えるマーちゃんだが、その視線は心配そうだ。
見れば三度に渡って橋を落とされたハウジングプレイヤー勢は、さすがに大きく肩を落としている。
「お疲れさまです」
マーちゃんが声をかけるも、残された橋の瓦礫をぼんやり見つめたまま返事はない。
「あそこに見えている浮遊島。私たちはあの場所を目指しているんです」
指差すのは、急流を挟んだ先の大地。
さらにその先に見える、空に浮かぶコマのような形をした土地だ。
この世界に来た者であれば、どうしてもその概要が気になるし、何かを見つける可能性を想像して血がわくだろう。
そしてあの場所に向かうなら、やはり拠点となる街が欲しい。
そのためにはまず、向こう側へ渡るための橋が必須だ。
「また、資材集めからか……」
「これまでも竜のような魔物に狙われたり、狂った大猿のような魔物に襲われたりもしたけど……あの鳥は明確に橋を壊しに来てる感じがあるんだよなぁ」
「あいつがいる以上、橋の完成は難しいな。何せ戦いの規模が違う……それこそ、トッププレイヤーでもいないと……」
そう言って、一人のハウジングプレイヤーが振り返って――。
「……メイちゃん?」
まさかの人物に硬直した。
「「「っ!?」」」
驚きと共に、振り返るハウジング組の面々。
「メイですっ! こんにちはーっ!」
笑顔で頭を下げるメイに、広がるどよめき。
「あらためて見ると結構深い谷川だし、本当に大きな橋が必要になるのね」
「向こうに街を作るための資材運びに荷車などを使う必要もありますから、必然的に大きなものを作ることになるんです」
「橋を架けるクエスト……いえ、こっちでは挑戦と言うべきかしら。本当に大変そうだわ」
レンがそう言うと、あらためてハウジングプレイヤーたちが息をつく。
やはり、また一から作り直すというのは辛い。
「――――わたしたちが、お手伝いできないかな?」
そんなため息を見て、反応したのはメイだった。
「私はやってもいいわ」
「そうですね。ハウジングのお手伝い兼、護衛役といったところでしょうか」
「は、はひっ。異世界の雰囲気も感じてみたいです……」
「何よりマーちゃんには、ドロップの売買とかアイテム探しで世話になってるしね」
「メイさんたちに、手伝ってもらえるんですか……!?」
うれしい申し出に、思わず歓喜が顔に出るマーちゃん。
すると橋を作っていたプレイヤーたちにも、にわかに変化がおとずれる。
「マジかよ! 五月晴れが橋作りを手伝ってくれるのか!?」
「それは頼もしいな!」
「これならいけるぞ! 異世界の猛者たちすら跳ねのけた五月晴れなら、今度こそ橋を架けられるに違いない!」
落ち込んでいたハウジングプレイヤーたちの間に、一気に希望が広がっていく。
「よろしくお願いします……っ! また一からになってしまいますけど、皆でがんばりましょう!」
マーちゃんがさっそく、ハウジングプレイヤーたちに声をかける。
そしてそんなマーちゃんの言葉に、メイが応える。
「大きな橋作り、さっそく始めて行きましょうっ!」
「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」
拳を突き上げる、ハウジングプレイヤーたち。
「俺、死に戻った仲間たちを連れ戻してくる!」
「それなら俺たちは、必要になるものとこれまでの経過をメイちゃんたちに説明するよ!」
「今度こそ、今度こそやってみせる!」
前世界最強にして、様々な危機を救ってきた五月晴れの登場。
すっかり肩を落としていたハウジングプレイヤーたちも、元気なメイに励まされて気合を入れ直したのだった。