軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1456.異世界はサバイバル!?

「こっちです」

マーちゃんと共にやって来たのは、久しぶりの異世界。

王都ロマリアの地下にあるゼティアの門は、世界を超えるゲートだ。

メイたちは張られた水鏡の隙間を通り、この世界初の街である『サツキタウン』へとやって来た。

「綺麗な街だねぇ」

「本当ですね」

広がる草原と、太陽が二つ並んだ青空。

そして、当然のように浮かんでいる島々。

そんな異色の世界に作られたこの街は、メイが大きく育てた世界樹の麓にある。

何の目印もない世界に、どこからでも見つけられるようにと伸びた大きな樹。

「け、結局ステータス上げのバナナを、名産にしたんですね」

緑の多い街にちょくちょく見られるバナナに、笑うまもり。

並ぶ石造りの建物は数も増え、すっかり賑やかになっていた。

「異世界独自の素材はハウジングや鍛冶でも重宝されるので、行き交う人の数も増え続けていますよ」

どうやらハウジングの規模拡大といった要素には、異世界が関わっているようだ。

大通りには魔法珠を使った街灯が並び、見た目にも楽しそうなサツキタウンを四人は抜けていく。

「異世界って、どういうクエストがあるの?」

巨大生物の化石が飛び出した草原と、それに負けない巨剣が丘に突き刺さった不思議な光景はやはり興味深い。

レンは異世界のクエストの状況を聞いてみる。

「異世界はとにかく『人類』や『それに代わる言葉の通じる種族』が、まだ見つかっていないんです」

「そうよね。それだとクエストが起きにくいでしょう?」

「実質、クエストらしいクエストが持ち込まれたことはないですね。何があるのか、何をするべきかが人によって違ったりする、未開の世界であることが面白さでしょうか。ちなみに現在、『異世界七不思議』と呼ばれるようになった謎があります」

「七不思議ですか……」

ツバメが興味深そうにしているのに気づいて、マーちゃんが語り出す。

「一つ目は、定めたプレイヤーをとにかく一定の距離を離して追い続けてくる魔物。これはただ気味が悪いだけなので、経過を観察中です」

「これまでにない展開ですね。しかもクエストとしては何かを受注していないのですよね?」

「はい。二つ目は、身体に取り付いたままの謎生物ですね。剝がしようがない上に、少しずつ大きくなっている気がするとのことです」

「急に怖さが増してきたわね」

「三つ目は、死なない異形の魔物。なぜか人間を見つけた時だけ叫び声をあげながら必死に迫ってきます。そして、何度倒しても死なないんです」

「そ、それは結構怖いですね……」

「変わったところだと、食人植物がありますね。プレイヤーを食べる度に育って生息範囲を広げていきます。こっちの世界には人間が一部のプレイヤーだけなので小さいですけど、『向こう』なら無限に成長できるかもしれない。あの植物が持ち込まれたら大変なことになる可能性があるので、『向こう』には持ち込まないよう細心の注意を払うように言われています」

「やはり全然、方向性が違いますね」

「でもそういう謎の対処法を見つけたり、根絶ができたら何かが見つかりそうね」

「その通りです。ちなみに今は人に感染して異形に変えていってしまう病が、とにかく恐ろしいと話題になっています」

「それも、『向こう』に持ち込んだら大変なことになりそうですね」

「この病に関しても、厳重な態勢が取られていますよ」

異世界の危険が、向こうの世界で広がってしまう可能性を考えて行動する必要がある。

そう考えると、恐ろしくもワクワクしてしまうレン。

「マーちゃんは今、何をしているのっ?」

「私たちは『街づくり』が中心ですね。次の街は『浮遊島』を目指せる位置に作りたいのですが……それには一つ大きな急流を越えなくてはいけないんです」

「川ですか」

「左右を崖に挟まれた深い谷は、落ちればそのまま水に飲まれて死に戻り。そこに橋を架けたいのですが……」

「空から行くとなると、さすがに荷物の運搬量が少ないものね」

「実は空にはとんでもない巨鳥が飛んでいて、見つかってしまうと容赦なく攻撃されてしまうんです」

どうやら異世界は、なかなか厳しいサバイバルの中にあるようだ。

「もしかして、あれがその橋かな? すごーい! 結構出来てるよ!」

見つけたメイが、さっそく指を差す。

サツキタウンからしばらく進んだ場所にあった石積みの大橋は、7割ほどの完成度か。

草原が切れ、固い岩場になった少し先。

激しい水流に削られた深い谷をつなぐ石橋は、現在も急ぎ足で建設中だ。

「あんな大きな橋を作っちゃうなんて、大したものねぇ」

「見に行ってみようよ!」

そう言ってメイが、駆け出した瞬間。

「っ!!」

突然広がり出した雲と、噴き出した強烈な風。

「まただ! また来やがった!」

ハウジングスキルで橋を作っていたプレイヤーたちが、悲鳴のような声をあげた。

見上げると空には、冗談のように巨大な鳥の姿。

「もう三度目だぞ! これ以上やられてたまるかぁぁぁぁ!!」

慌てて武器を手に構えるが、吹き荒れる風に立っているのがやっとの状態。

巨鳥はその翼を、さらに大きく広げる。

すると巻き起こった猛烈な突風が、建設中の橋を崩していく。

「ふざ、けるなあ……ッ!!」

ハウジングプレイヤーたちは慌てて橋の防衛に入るが、そこでさらに追撃の暴風弾が炸裂。

圧倒的な大きさを誇る巨鳥が起こした、常識外れの暴風。

「「「うわああああああ――――っ!!」」」

プレイヤーたちは、壊れた橋の残骸と共に散り散りになって、激流へと落ちて行った。

橋の崩壊を見届けると、何事もなかったかのように去って行く巨鳥。

異世界の恐ろしさを、まざまざと見せつける。

こうして魔物が去ると、その場に残ったのはわずかなプレイヤーと、多少の石材だけだった。