作品タイトル不明
1450.迫るマグマ!
「登れ登れ登れぇぇぇぇ――――っ!!」
「急ぐぽよーっ!」
「逃げ切れなかったら、ここまで拾ったアイテムはロストだぞ!」
ゴア・ダグランの打倒で、アイアスラントを飲み込む大噴火を止めはしたが、それとは別に噴火はする。
相当シビアな展開となった、このクエスト。
メイたちは、せまり来る溶岩の中を逃げ戻っていく。
強い緊張に、あげる声にも自然と気合が入る。
「はっ、それっ」
そんな中を、笑顔で進む一人のお姉さんプレイヤー。
「ずいぶん楽しそうだなぁ」
「はいっ! メイちゃんと遊べると聞いて、駆けつけたんです!」
どうやら気楽な気持ちで遊びに来たら、レベルも低いのにここまで来れてしまったという感じらしい。
「なので、いつでも死に戻っても大丈夫なんですっ!」
そう言って良い具合に肩の力の抜けた、気合を見せるお姉さんプレイヤー。
「あっ! あれは!」
途中で見つけた宝箱に思わず駆け寄り、開けてみる。
【アダマンタイト】:伝説の金属の一つ。武器にすれば素晴らしい一品ができ上がる。
「……あ、ああ、あああああああ――――っ!!」
お姉さん、まさかの超優良アイテムに悲鳴を上げた。
帰り際に死に戻れば、当然ロスト。
途端に始まった猛烈な緊張で、ガクガク震え始める。
どうやら彼女にとって最高に楽しいスリルのクエストは、ここからになりそうだ。
「崩落、気をつけてっ!」
駆ける洞窟の道に、凄まじい勢いでヒビが広がり岩石を落とす。
「あぶねええええ――っ!」
「か、肩をかすめたぞッ!」
前衛組は視線を高くして、一撃必殺にもなりうる岩石落下に警戒。
「【地壁の盾】!」
まもりは後衛を守りながら、前衛組の後に続く。
「溶岩、きます!」
ツバメの声から五秒ほど後、壁のヒビから滲み出した赤熱が広がり溶岩を噴射。
「きゃああああーっ!」
飛び散る飛沫が、後衛組のHPを大きく削る。
迫り来る崩落と広がる溶岩の放出は、間違いなく後を追ってきている。
「っ!」
先頭を行くメイが、異変に気づく。
通り過ぎた別れ道から、この地獄にやって来たのは――。
「「「アリだー!!」」」
なんと七匹ものアリが潜り込んで来た。
「【インフェルノ】!」
レンは容赦なく先頭に向けて、溶岩弾を発射。
豪快な炎が四匹のアリをまとめて焼くが、生き残った三体のアリはそのまま後衛の前に踏み込んできた。
「【風刃弾】!」
慌てて魔法を放つ魔導士だが、傷をつけただけで打倒には至らない。
「うおおっ!?」
その強力な力で抱えられ、地面に叩きつけられた。
「【シールドバッシュ】!」
まもりが即座にアリを退け、その間に魔導士が立ち上がる。
「【サンダーボルト】!」
「【炸裂の矢】!」
するとすぐさま別の魔導士と弓術士がアリを吹き飛ばし、どうにか危機を脱する。
とっさの連携が、後衛組を見事に安定させた。
「【ブリザード】!」
そこにすぐさまレンが、一時的な防壁を作ったところで――。
「非業なりし世界の命運よ、凍てつき永遠に制止せよ――――【氷河烈風】!」
樹氷の魔女が放出したキラキラと輝くダイアモンドダストは、吹き出す驚異的な風によって、アリたちを岩壁ごと氷漬けにした。
凍結によって止まった足。
この隙に後衛組は、アリを置き去りにして突き進む。
「まだだ! 新手が追って来るぞ!」
しかしすぐに後方から現れた、新たなアリの一団。
「ここは任せてください! 【爆裂マイン】!」
計算君は得意の爆発系スキルで、あえて崩落を起こすことで道を塞ぎ、迫るアリたちの足を止める。
火山探索組はこの隙に、続いている別れ道を選んで進む。
「壁ですか……!」
先行するメイたちがたどり着いたのは、断崖絶壁だった。
無数にある岩の出っ張りは、『ここを跳び上がっていけ』という指示に相違ない。
前衛はまだしもアクションにやや不利な後衛組には、難しいポイントを引いてしまったようだ。
それでも後衛組は、意を決して昇り始めるが――。
「マズいな……!」
「ここでアリか! ヤバいぞこれ!」
そこに、二匹のアリがやって来た。
すぐにこちらに気づいて、接近を開始する。
「当然壁を登る能力はアリの方が上だ。そして間もなく溶岩もやってくるだろう」
そうなれば、大変なことになる。
「……仕方ねえな」
「おい! 何やってんだ!」
なんと一人の掲示板剣士が、アリたちの前に飛び降りた。
「お前たちは先に行ってくれ。俺はこいつらを片づけた後に、追いかける」
「バカ言うな! 間に合うはずがない!」
後衛組魔導士は呼びかけるが、ニヒルな笑みを決めた剣士は静かに背を向けると――。
「さあ、地獄に付き合ってもらうぜ! アリ野郎ォォォォ――っ!!」
「あいつ、カッコつけやがって!」
「私がやりたかったやつ……!」
二対一という厳しい戦い。
剣士はアリの攻撃をかわし、豪快に剣を振り払う。
「分の悪い戦い……嫌いじゃないぜ! 【旋風斬】!」
大きな弧を描く斬撃は見事に、手前のアリの脚を斬り飛ばした。
そして二体目の速い突撃を前に選んだのは、力任せゆえに狙いの定まらない一撃。
「【パワースマッシュ】!」
これが、運よくアリの頭部に激突。
なんと弱点を突き、一撃での打倒に成功した。
さらに初撃を決めたアリも、まだ体勢を崩したままだ。
「【串刺しインパクト】!」
そのまま次撃を叩き込んで、見事な勝利を飾ってみせた。
しかしそこに、勢いよく流れ込んで来た溶岩。
それを見て、剣士はニヒルな笑みを浮かべる。
「ここまでか……皆、楽しかったぜ。お前たちは――――生きて帰れよ!」
カッコよく決めて、虚空を見上げる。
すると迫る溶岩に飲み込まれかけた、その瞬間。
メイと、目が合った。
「あっ」
「はい! 【ターザンロープ】!」
この光景を見ておりてきたメイのロープが、剣士を捕獲。
「それっ!」
引っ張り上げれば一気に、危機の回避に成功する。
「ありがとうメイちゃん。でもやっぱりちょっと恥ずかしい……っ!」
後衛組に、思わずもれる笑い。
残った二体のアリの残骸は、溶岩に飲まれた瞬間に消え去った。
「あとは落ちないことに集中で大丈夫ですね」
こうして崖登りを地獄に変えるはずだったアリは無事に打倒され、メイたちは崖を跳び上がっていく。
足場は跳躍スキルがなくても届く距離にあるが、やはり急いでいると感覚がおかしくなる。
下からは、容赦なくせり上がってくる溶岩。
ここにアリがいたら、焦りからの落下も起きただろう。
「よし、これで全員崖を登ったな!」
「メイちゃん、ありがとう!」
「いえいえー」
崖の上はまた、数本に分かれた洞窟が続く。
前衛組は右端の道を選んで走り出した。
すると遅れて溶岩が届き、もと来た道に戻ることを封じてきた。
「……待つぽよ」
声をあげたのはスライム。
たどり着いた道の先は、やや大きな吹き溜まりのような空間。
そこには、道がない。
「おいおい、道の選択一つで全滅か!?」
容赦なく追ってきた溶岩は、一気に広がっていく。
すでに逃げ場はなく、他に行ける道も無し。
「いくらなんでも厳しすぎない?」
「【フルスイング】!」
さっそくメイが壁に剣をぶつけるが、ただ崩落が起きるのみ。
そこに道などは生まれない。
「おい! 溶岩が来たぞ!」
「どうする!? どうするんだよこれ!?」
「わわわ私の【アダマンタイト】が! がが! がががががあ――――っ!!」
白目をむいて震えるお姉さん。
溶岩はいよいよ熱を間近に感じるほどまで、この空間に入り込んできた。
そしてついにその足先に、触れそうになったその瞬間。
「皆さん! こっちです!」
聞こえた声に、振り返る。
すると足元に刻まれた目立たない魔法陣から、一人のプレイヤーが呼びかけていた。
「「「迷子ちゃん!?」」」
どうやら魔法陣でつながる道があるようだ。
迎えた最大の危機。
行きの道中で消えた迷子が、大きく手を招いてみせた。