軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1447.地底の決戦Ⅲ

「アサシンちゃん……やばいな」

「四連続であの剣技を喰らうとか、想像するだけで震えるスキルだ……っ」

宙を泳ぐ古代生物モーゼサウルスは、ツバメの【影分身】による四連【斬鉄剣】によって打倒された。

複数体の敵を同時に相手にする時は、とにかくまず数を減らすのが定番。

それだけで戦況が大きく楽になるため、最初の一体の打倒は早いほどいい。

ツバメの一撃はまさに、三体による連携攻撃を止めて討つ見事な判断だった。

しかしまだ、終わってはいない。

「あっぶな!」

戦車のように地を駆けるアンキロメイルの【砲弾特攻】を、横っ飛びでかわすレン。

続けてマウント氏や後衛組も、転倒覚悟で飛び退きかわす。

「っ!!」

その目に見えたのは、影。

「【クラックメイカー】」

聞こえた声に確信する。

背後を跳んで来た影は、空中から迫る必殺爪の一撃なのだと。

「【かばう】!」

まもりが即座に跳ぶが、いつの間にか生まれていた距離を埋めるには足りない。

「「っ!」」

横にいた樹氷の魔女と共に防御を選び、レンたちは大きく弾かれつつ高いダメージを受けた。

ゴア・ダグランは、さらに二人を狙って走り出す。

「……ここ、攻撃して!」

「ですが!」

「大丈夫【フリーズストライク】!」

「【白氷花】!」

先行するように撃った二人の氷砲弾はしかし、樹氷の魔女の予想通りかわされた。

ゴア・ダグランは、すぐさまレンたちを狙って攻撃体勢に入る。しかし。

「【暴食の盾】!」

そのすぐ背後で聞こえた声。

「まもりの【かばう】は届かなかったけど、敵の背後を取る形になっていたことには気づかなかったみたいね!」

狙いは最初から、一度まもりに魔法を預けることだ。

「解放――――っ!!」

盾に食わせた二人の魔法。

ゴア・ダグランの背中に、二つの氷砲弾が混ざって生まれた大型の氷花が炸裂。

「グアアアア――ッ!」

二人が左右に割れると、ゴア・ダグランは美しい氷片をまき散らしながら、地面を跳ね転がっていく。

こうして見事に裏をかき、再び敵の連携を崩すことに成功した。

「今がチャンスよ! 【誘導弾】【フレアストライク】!」

ここでレンはまたも、前衛組を弾き飛ばしたアンキロメイルに炎砲弾をぶつけて、敵の狙いを引き受ける。

狙いはとにかく、数を減らすことだ。

「これで、場は整ったわ!」

「レンちゃん!」

手を上げたメイと、レンは一度うなずき合って杖を降ろす。

「使徒長ちゃん?」

アンキロメイルは前衛組の物理攻撃を弾き返し、後衛組の魔法にも止まらずレン目がけて一直線に特攻。

得意の【砲弾特攻】で、最速最強の体当たりを仕掛ける。

直撃すれば大ダメージのスキルに、息を飲む掲示板組。

それでも慌てず、レンはしっかりと敵を引き付けたところで――。

「それじゃ、お願いするわね――――【入替のルーン】」

あくまでレンの狙いは、『分断』での戦闘。

「……【ゴリラアーム】」

レンの方に視線が集まったところでそっとスキルを発動したメイと、位置が入れ替わる。

「いきますっ!」

目前に迫る戦車のごときアンキロメイルとメイが、真正面からぶつかり合う。

直後、鉄壁に直撃したかのような、盛大な衝突音が鳴り響いた。

しかし、動かない。

拮抗するメイとアンキロメイル。

「それええええええ――っ!」

そのままガッツリと敵の頭部を受け止めたメイは、頭をつかんだまま背負い投げに入る。

「「「おおっ!?」」」

地面に叩きつけられれば起きる、盛大な揺れ。

それでもメイは、止まらない。

「もう一回! それええええええ――っ!」

つかんだままの頭を離さず、もう一度背負って投げる。

「「おおおっ!?」」」

再びの揺れに、思わず足をフラつかせる掲示板組。さらに。

「もう一回っ! 最後は……【ワイルドバスター】だああああ――っ!!」

まさかの三段投げ。

「「「おおおおおおおお――――っ!?」」」

地面と垂直にアンキロメイルを持ち上げたメイに、集まる視線とあがる歓声。

そのまま後方に倒れる形での一撃で、駆け抜ける盛大な地響き。

地面に大きなヒビを走らせるほど深くめり込んだアンキロメイルは、そのまま粒子になって消えた。

「すっごいぽよ……」

あらためてメイの【腕力】に、呆然とする掲示板組。

こうしてメイたちは、二体の強力な古代生物を打倒することに成功した。

「……すぐに取って代わられるとはいえ、さすが今の地上を支配する種族だけある。ますますその力が欲しくなったぞ。貴様たちは入念に洗脳し、あらたな先兵として仕えさせてやる!」

だが、ゴア・ダグランはそれでも余裕を崩さない。

そう宣言すると、強気の笑みと共にもう一段階力を上げてくる。

「【ステラクタイト】」

発動と同時に大量の鍾乳石が、天井から突き出してきた。

「あぶないぽよっ!」

とっさに身体を平たくして避けるスライム。しかし。

「【ガイアバスター】」

この状態で放たれるのは、戦闘開始時に放った地面から岩刃を生み出すスキル。

空洞内に生まれた岩の牙が伸び、『嚙み合わせ』にくる形だ。

まるで巨大な化物に『喰われる』かのような感覚。

「「「うおおおおお――っ!?」」」

突き立つ大量の岩刃に斬られて、倒れ込む掲示板組。さらに。

「【スラッシュクロー】」

そこにゴア・ダグランが飛び込んでくる。

「くっ!」

「きゃあっ!」

乱舞する爪の攻撃が、斬撃を生み出す。

ゴア・ダグランは、そのまま岩剣ごとツバメとレンを斬り飛ばした。

逃げようにも岩の刃が壁になり、敵の攻撃はその壁を切り抜いてくるのだから、回避は異常なまでに難しい。

「【マグマゲイザー】」

敵はさらに攻撃を続ける。

振り下ろす手に合わせて、天井から飛沫となって噴き出す溶岩。

慌てて逃げ回って回避をするも、今度は足元から間欠泉のようにマグマが噴き出す。

「きゃあああっ!」

突然足元からきた攻撃に、まもりも盾を使えず直撃。

さらに吹きあがった飛沫が、付近のプレイヤーたちのHPも削っていく。

「どうした地上の古き支配者よ! この程度では我らが侵攻は防げぬぞ! 【ガイアバスター】!」

再びつき上がる岩の刃たち。

「避けるぽよっ!」

今度は頭上からの【ステラクタイト】を気にしながら、回避と防御のどちらを選ぶべきかと考える。しかし。

「【マグマゲイザー】!」

「「「っ!?」」」

天井を見ていたところで、足元に駆ける赤熱。

直後に噴き出した溶岩に、慌てて全員が防御に入る。

そして突き上がった岩剣が効果切れによって弾けて消えた瞬間、そこには高速で迫るゴア・ダグランの姿。

「【メイルブレイカー】!」

「【地壁の盾】っ!」

煌々と赤熱する爪による強烈な振り降ろし攻撃は、『物理』と『熱』の二つの属性を持つため、防御しても3割しかダメージを軽減できない。

「【マシンガンクロー】!」

「っ!! 【コンティニューガード】【地壁の盾】!」

とっさの防御も、生まれる緊張。

【メイルブレイカー】状態での【マシンガンブロー】は、防御してなおHPをまとめて持っていく攻撃だ。

始まった猛烈な火花を散らす乱打が、盾にぶつかりHPを削っていく。

慌ててまもりを助けに向かう、前衛組とツバメ。

「【スラッシュクロー】!」

「「「っ!!」」」

二連発の赤熱斬撃に、弾かれ転がる。

まもりは慌てて距離を取ろうとするが、大きく飛び込んで来たゴア・ダグランは両手を大きく開く。

「――――【クロス・クラックメイカー】」

両爪を使った一撃は赤光の『X』を描いて、まもりに迫る。

「させるかあ……っ!」

「そうはいきませーんっ!」

そこに駆け込んできたのは、なんと二人。

「【ソードディフェンダー】!」

「【装備変更】とっつげきー!」

マウント氏とメイの声が重なった。

そして左の爪の攻撃をマウント氏が、右の爪の攻撃を【鹿角】メイが、完璧なタイミングで弾いてみせた。

「ないすーっ!」

「「「うおおおおっ!?」」」

あがる歓声。

「【超高速魔法】【フリーズボルト】!」

「【白氷花】!」

「【サンダーボルト】!」

即座にレンが最高速の魔法をぶつけ、魔導士勢が続くことで硬直時間を伸ばす。

「【加速】【リブースト】!」

そこにツバメが、続けざまに接近。

「【雷光双閃火】!」

「【雷光正拳突き】!」

「【上弦雷神刀】!」

武闘家と剣士の連続攻撃の後、突き刺した二本の短剣が爆発を巻き起こし、見事にまもりの危機を防ぐことに成功。

「あ、ありがとうございます……っ」

「二人とも、最高のパリィを決めたわね……!」

感謝のまもりに、杖を振り上げるレン。

ツバメも戻ってきた短剣をキャッチしながら笑みを見せる。

「すげーぞ! マウント氏! ……マウント氏?」

「……あ、ああ」

「あまりにうまくいきすぎると、マウントどころじゃなくなるのか……」

あまりに華麗な連携に、自分のことながら困惑するマウント氏。

二人の生みだした偶然の連携は、見事にまもりを守り抜いてみせた。