軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1448.地底の決戦Ⅳ

「ここまでやるとは……予想外だったぞ人間ども」

決まったメイとマウント氏のパリィ連携。

そこから大きなダメージを受けたゴア・ダグランは、残りHPも3割を切った。

「だが、それもここまでだ」

明らかにこれまでとは、違う剣幕。

その表情を、恐ろしいほど鋭いものに変えた。

「ひれ伏せ、新たな支配者の前にィィィィ――ッ!!」

残りHPが減ったことで、その攻勢も変化する。

族長ゴア・ダグランは両手を降ろすと、そのまま高く振り上げた。

「【マグマスプラッシュ】!」

すると足元に生まれた大きなヒビ割れに、煌々とした赤熱が輝き始める。

「アクションでは稀に見る、『ライン型の範囲攻撃』ね!」

「対応できないと、即死級の大ダメージをもらうやつか……っ!」

「とにかく避けるぽよっ!」

激しい輝きを見せる赤熱は、複数のラインによる攻撃。

この後噴き出す溶岩に直撃すれば、そのまま猛烈なHP減で死に戻る。

メイたち前衛組に続いて後衛組も慌てて安全地帯を目測で確認し、身体がはみ出していないかに注意しながら足を止める。

「あ、あぶなかったですね……!」

溶岩の飛沫でも侮れないダメージとなる溶岩の噴出が、目と鼻の先で盛大に巻き起こる。

どうにか回避できたことに、皆で安堵の息をつくが――。

「まだだよっ!」

「「「っ!?」」」

メイの掛け声の直後、地面から飛び出してきたのはゴア・ダグラン。

「【メイルブレイカー】【クラックメイカー】!」

爪を煌々と赤熱させ、広範囲斬撃を放つ。

意識はずっと即座に命を奪う溶岩流に向いていたため、回避に集中できない。

「ぽよ――っ!?」

「うおおおお――っ!?」

スライムやマウント氏が、喰らってダメージ。

両者共に残りHPが3割ほどと、危険域に突入した。

「うわっ!」

運良く防御を選んだ魔導士もその一撃の威力に倒れ込み、足元の溶岩に接触。

弓術師に、慌てて引っ張り出される。

「HPが8割も飛んでる……っ!」

わずか数秒で瀕死に追い込むほどの火力に、さすがに息を飲む。

「【連続魔法】【誘導弾】【フリーズボルト】!」

「【三連射】【アイシクルエッジ】!」

ここで後衛組の闇コンビが、ゴア・ダグランをけん制。

「【ガイアバスター】!」

すると地面から突き出す岩の刃で、防御対応。

姿が見えなくなったと思った次の瞬間。

「【メイルブレイカー】【クラックメイカー】!」

「っ!?」

ツバメたちの逃げ込んでいた先に、地面を割って跳び上がってきた。

縦斬りの攻撃に対してツバメは回避を試みるが、肩を斬られる形で被弾した。

弾き飛ばされた先には、流れを止めたものの今も赤熱を残す溶岩。

「【回転跳躍】!」

ツバメは溶岩のフチを踏みながらも、即座に後方へ跳び越える形で、どうにか溶岩ダメージを最低限に抑えることに成功。

「【マグマゲイザー】!」

「うわっと!」

するとゴアダグランは、三段飛びの要領で近づいてきていたメイを、溶岩の噴出で足止め。

「【ガイアバスター】!」

「「「うおおっ!?」」」

さらに後衛組のど真ん中にも岩刃攻撃を続けたところで、再び両手を降ろした。

「嘘でしょ!? こんな早さで連発できるの!?」

「消えろ人間……【マグマスプラッシュ】!」

あまりに二発目が早くて、さすがに驚きの声を上げてしまう。

これぞ最終局面ならでの、怒涛の攻勢だ。

「動けぇぇぇぇ――ッ!!」

変わる『攻撃ライン』に、再び大急ぎで安全域の目算を立てて走り出す。

「「「っ!!」」」

弾け散る溶岩飛沫に奪われるHPに加えて、直前の【ガイアバスター】で生み出された岩刃の山が邪魔で、逃げ場も制限されてしまう。

「こっちだ!」

「きゃあっ!」

岩刃の壁によって、慌てて退避先を変える掲示板組。

しかし緊張感のある状況での進路変更は、一人の弓術師の足をもつれさせた。

「喰らい尽くせ――――【溶岩竜】!」

倒れ込んだ少女のもとに迫るのは、個人を狙って放出される容赦のない一撃。

噴き出した溶岩を大型の竜に変え、プレイヤーを喰わらせるという恐ろしい攻撃に、助かる見込みなどない。

弓術師が、その目を閉じた次の瞬間。

「【かばう】!」

そこに飛び込んで行ったのは、すでにHPが危険域にあるまもりだった。

「【不動】【コンティニューガード】【天雲の盾】!」

一番大きな【獅子霊の盾】を、突き出すようにして身構える。

直後、迫る溶岩竜が盾に直撃して盛大な飛沫を上げた。

溶岩竜は盾ごとまもりを喰らい尽くそうと、ものすごい勢いで押してくる。

もちろんHPの減り自体はしっかり始まっているが、まもりも止まらない。

「【食べ歩き】【早食い】! いただきますっ!」

盾を構えたまま取り出した【冷製BLTサンド】に、かじりつく。

「すごい……溶岩竜が飛び散っていくっ!」

瀑布の水流を受け止めているかのようなド派手な光景に、感嘆する弓術師。

アイテム効果によって、跳ねる溶岩が頭にかかっても、盾から熱ダメージが伝わってきても、まもりには問題なしだ。

「ごちそうさまでしたっ!」

残りHP僅少で、同時に自分と弓術士を守り抜いた。

溶岩竜を盾で止めながらBLTサンドを食べるまもりに呆然としていた少女だが、彼女は掲示板組。

やるべきことは、反撃の機先を切ることだと意識を切り替えていた。

「【追尾の矢】!」

それは岩などで敵が見えていない状態でも、どこかに放てば自動で対象に向かう面白い一撃。

「ッ!?」

まもりに守られていたことで誰より早い反撃ができた少女の攻撃は、見事最速でゴア・ダグランの肩に突き刺さった。

「今っ! 【魔力蝶】!」

それによってレンは、発動にわずかに時間を取られるが、敵が高い回避力を活かせないタイプの魔法ですぐさま追撃。

「くっ!」

無数の蝶がぶつかり弾ければ、ゴア・ダグランが大きくのけ反った。

「人間風情がああああ――ッ!! お前たちはここで、灼熱の溶岩に飲まれて消えろォォォォ――ッ!!」

「どういうことぽよ? もう範囲の溶岩攻撃は出てるぽよ……っ!」

二度のライン攻撃の直後。

ゴア・ダグランの言葉に、困惑するスライム。

「――――【ヴォルカニック・ウェーブ】」

全員が、思わず硬直する。

スキルの発動と共に、これまでのヒビがさらに大きく深くなり盛大に炸裂。

背後の壁から噴出した大量の溶岩が、津波のように流れ出した。

「嘘でしょう? さっきまでの溶岩噴出はこれの前提で、範囲攻撃が来ることを知らせるための『注意付け』に過ぎなかったの?」

「どうしよっか!」

「敵の残りHPを考えると、ラストアタックにはメイさんが来るようにしたいところですが……」

ツバメとしては、メイに強力な一撃をぶつけて欲しい。

それにはレンとまもりも、賛成のようだ。

「で、ですが、このままでは厳しいですね」

この大量の溶岩をどこに向けるか。

それが自分たちの方であれば、反撃を狙うのは厳しいだろう。

「ちょっと待って、そういうことなら……こういうのはどう!?」

「なるほど。では、続きます」

普通であればパーティを三つ四つに分けて、防御型のチームなどを狙わせて対応するはずの攻撃。

代表して前に出たのはなんと、まもりとレンのみ。

「――――溶岩に、飲まれて消えろ人間ども」

二人が準備に入ったところで、ゴア・ダグランは攻撃を開始した。

「下がって!」

うなずき合って、別れる四人。

掲示板組も、メイとツバメに続いて左右に割れる。

「来るわ!」

迫るのは、喰らえば間違いなく死に戻りとなる溶岩の大津波。

それは、まごうことなき最終奥義だ。

煌々と輝く赤光の波は、容赦なくまもりとレンのもとへと突き進む。

「盾子ちゃん! 使徒長ちゃんっ!」

二人を死に戻り確定のオトリにする作戦を取ったとした、思えない状況。

激しい溶岩流は、容赦なく二人の前に突き進む。

そしてそのまま――――大きく弾けた。

まるでそこにバリアでもあるかのように、レンたちに溶岩の波は届かない。

弾ける大量の飛沫ですら、二人には一滴も触れることがない。

「どうなってるんだ……?」

「溶岩が、避けてるみたいだ……!」

不思議な『何か』で、完璧に溶岩を防いでみせた二人。

「き、来ますっ!」

しかし溶岩流の後には、爪によるトドメの攻撃あり。

地中から勢いよく飛び出してきたゴア・ダグランは、そのまま赤熱の爪を振り降ろし――。

「ッ!?」

やはり、バリアのような謎の壁に阻まれた。

舞い散る火花を見て、まもりが感嘆する。

「お、大きくした【錬金の盾】を手放せば、その瞬間から防具から壁のオブジェクトになります……」

「そしてオブジェクトに【隠匿のルーン】を刻めば、なぜか溶岩流も爪攻撃も喰らわない透明バリアの出来上がりってわけ!」

レンはそう言って盾越しに杖を突きつけると、開いた両眼を真紅に輝かせる。

「さあいくわよ! 目覚めなさい【魔神眼】! 【コンセントレイト】【ペネトレーション】【コキュートス】!」

放たれた純白の氷弾は【錬金の盾】の壁を超え、そのまま展開。

「バカな……っ!?」

猛烈な白き輝きと共に、ゴア・ダグランを凍結させた。

一面を白く染め、同時に生み出した完全な隙。

「【加速】【リブースト】!」

そこに最速で駆け込んできたのはツバメ。

「【分身Ⅱ】【電光石火】!」

まずは本人が、連携を続けるための一撃を最速でぶつける。

「ルーン発動!」

そして遅れて【増幅のルーン】で六体になった分身たちが、一斉にゴア・ダグランに跳びかかる。

「【狐火虚像】!」

分身たちは続けざまに、炎に変わり炸裂。

連続するダメージに、ゴア・ダグランが体勢を崩した。

「【ライトニングボルト】!」

「【炸裂の矢】!」

「【トラッキングボム】!」

そこに掲示板組後衛が次々に魔法と矢をぶつけ、計算君が魔法珠爆弾を爆破する。

「【臨海氷樹】!」

「【吸収】ぽよっ!」

さらにスライムが樹氷の魔女の魔法を、【吸収】しながら接近。

ゴア・ダグランは、ギリギリで硬直から解き放たれそうになるが――。

「ヒヤッハァァァァ!!」

隠れてついてきていた半裸金仮面の一撃が、ここぞとばかりに隙間を埋める。

「【砲弾跳躍】ぽよーっ!!」

そしてカチコチに凍ったスライムが、ゴア・ダグランを跳ね飛ばした。

それから自然と、全員が振り返る。

待っていたのは、輝く銀の【チャンピオンリング】を掲げたメイ。

「来てっ! りーちゃん!」

魔法陣から、登場してくる50センチほどのトカゲ。

メイとリザードは、横並びで仁王立ちポーズ。

「行くよっ! いーちゃん!」

さらに小さな白イタチが、メイの肩で仁王立ち。

「よーい、ドンッ!! 【バンビステップ】!」

メイに合わせて、りーちゃんも即座に【猛ダッシュ】を発動し、二人は砂煙をあげて駆ける。

「それっ!」

振り下ろしたメイの剣が、ゴア・ダグランを斬る。

するとメイを跳び越えてきたりーちゃんが、空中で一回転して尾を叩きつける。

そして両者の『振り上げ』が同時に決まり、敵の体勢を崩した。

「せーのっ!」

「「がおおおおおお――――っ!!」」

メイの【雄叫び】が敵を硬直させ、そこにりーちゃんの【雄叫び砲】が炸裂。

「っ!」

吹き飛ばされ、思ったより離れた距離。

運良く早い立ち上がりが可能な状態だったゴア・ダグランは、【マグマ・ストライク】で牽制するが――。

「いーちゃん! 【いたちごっこ】!」

選んだ攻撃方法が良くなかった。

敵の攻撃を体型的に可能であれば真似することができる、そのスキル。

即座にいーちゃんの吐き出した溶岩弾とぶつかり、激しく飛沫を散らして霧散。

「決めるよ! りーちゃん!」

それを見たメイは飛び散る溶岩の中を駆け抜け、突進して剣を高く掲げる。

りーちゃんも同時に、片足を引いた。

「「「いけええええええ――――っ!!」」」

自然と上がる、掲示板組の歓声。

その声に背を押されるように、ゴア・ダグランの懐へ。

「必殺の――っ!! 合体【ソードバッシュ】だああああああああ――――っ!!」

メイの剣と同時に振り下ろす、尻尾が生み出す【テールバッシュ】

二つの猛烈な衝撃波が交わり合って、ゴア・ダグランに直撃。

その火力に凄まじい勢いで地面を跳ね転がると、ヒビだらけの壁に激突して深くめり込む。

直後盛大に噴き出した溶岩を背に受けると、地底人族長ゴア・ダグランはそのまま倒れ伏した。