作品タイトル不明
1446.地底の決戦Ⅱ
ゴア・ダグランが呼び出した古代生物は二体。
体長5メートルを超える体躯を持ち、俊敏に空を泳ぐ海空竜モーゼサウルス。
ワニのような長い口と、硬質で鋭利なヒレを持っている。
そしてもう一体は地を駆けるイグアナのような、四足の陸獣アンキロメイル。
こちらも5メートル級で、鋼鉄のように硬質な外皮を持っている。
「魔法学校の図書館で見た古代生物だ!」
「生息しない魔物まで設定されてることに感心したけど、ここで出てくるのか!」
驚きの声を上げる掲示板組。
「ゆけ、古き地上の支配者たちよ! 我が前で、偽りの王たる人間どもを排してみせろ!」
ゴア・ダグランの合図で、動き出す二体の古代生物。
「【疾風の矢】!」
「【フレイムバレット】!」
すぐさま放つ遠距離攻撃を、モーゼサウルスは華麗な泳ぎで回避し空中から接近。
「うおおっ!?」
そのまま【ヒレ斬り抜け】が、回避し損ねた剣士の腕を斬る。
「飛行型にだけ意識を取られてはダメぽよっ!」
その時すでに地を猛進していた戦車のごときアンキロメイルは、【弾丸特攻】で前衛組に接近中。
「行くぞ!」
「ああ!」
これに対して前衛組は、攻撃をぶつけての制止を狙う。
「【フライトマホーク】!」
「【円月輪】!」
しかしその攻撃は、厚い外皮鎧に阻まれ弾き飛ばされた。
「危ないぽよっ!」
止まらず特攻してくるアンキロメイルに対し、投擲が弾かれた二人をスライムが突き飛ばして回避させる。
敵二体はすぐに、攻撃体勢を作り直して再接近。
「速っ!!」
モーゼサウルスの【喰らいつき】を、慌ててかわす武闘家。
するとそこにすぐさまアンキロメイルが続き、突進から体を丸めて跳躍。
【回転弾丸撃】で狙い撃つ。
「くっ!」
回避できるかギリギリの位置、武闘家は念のため防御態勢を取る。
「ぐああ――っ!?」
「おいおい、あの硬さで防御不可持ちかよっ!」
防御を突破する一撃は守りを弾き、転倒させて確かなダメージまで与えていった。さらに。
「【マグマ・ストライク】」
そこを狙うような形で放たれた、ゴア・ダグランの溶岩弾。
「「っ!!」」
必死に身体を倒して回避すれば、掲示板組前衛の間を飛んでいった赤熱は、そのまま後方組の方へ。
「【かばう】【天雲の盾】!」
慌ててまもりが受けるも、飛び散った溶岩飛沫が悲鳴を巻き起こす。
空中を舞うモーゼサウルスと、地を駆けるアンキロメイル。
視線が上下で固定できない上に、一方は速く一方は硬い。
さらにその隙間を突いて、族長が【マグマ・ストライク】を飛ばしてくる。
「この連携はやっかいね……っ!」
このコンビネーション攻撃こそ、ゴア・ダグラン得意の攻勢だ。
「「っ!!」」
さらに次の瞬間、族長自らが先頭に立つ形でメイやツバメたちの前に踏み込んできた。
「【スラッシュクロー】」
左右の手で、行って戻る払いの斬撃を放つ。
四本ずつ平行に走るエフェクトを、メイとツバメは高いジャンプで回避する。
掲示板組は、多くが防御を選んで対応。
すると続けざまにやって来たモーゼサウルスが、尾で地面を払って【砂起こし】を発動した。
「「「っ!!」」」
隠された視界の中を駆けるのは、【弾丸特攻】のアンキロメイル。
「突撃、くるよっ!」
怒涛の特攻に音で気づいたメイは、早い注意喚起を断行。
「助かるっ!」
そのおかげで砂埃の中でも慌てず、全員が音を頼りに回避を成功させた。
しかし安堵の息も束の間、特攻の勢いで晴れた砂埃の隙間で【急回転】を使用。
再度こちらに身体を向けると、これまでの勢いをさらに上回る【砲弾特攻】を使用。
「うおおっ!?」
「ぎゃああああ――っ!」
「あぶないっ! わあっ!」
前衛二人を跳ね飛ばしても止まらず、逃げ遅れた武闘家をかばったメイまでをも弾き飛ばした。
「気をつけてください! ボスが姿を消しています!」
そしてゴア・ダグランの姿は、巻き起こった砂ぼこりと共に消滅していた。
「っ!?」
次の瞬間、地面から伸びた手にツバメの足がつかまれた。
するとモーゼサウルスとアンキロメイルが、同時に狙いをツバメに変える。
「足をつかまれました!」
それでもツバメは諦めず、【投擲】【雷ブレイド】でアンキロメイルを攻撃して【弾丸特攻】に入るのを止めた。
「ああっ!」
しかしモーゼサウルスの【ヒレ斬り抜け】には間に合わず、斬撃を受けて弾き飛ばされた。
ここで地上に戻ったゴア・ダグランは、さらに攻める。
「やれ! 【圧し掛かり】だ!」
「逃げろッ!」
前衛組がモーゼサウルスの【圧し掛かり】を必死にかわすと、そこに猛然と駆け込んでくるアンキロメイル。
慌てて防御態勢を取るが、長い尾を振り回しての【テールロッド】も防御は不可能。
「「「うわああああっ!?」」」
受けたプレイヤーたちが、まとめて転倒させられた。
「ま、また地面の下から来ますっ!」
そこに迫るのはまたも、ダグラン族の部下も使っていた【進地撃】による掘削接近。
「ここは俺がっ!」
あえて前に出ることでオトリを買って出たのは、先ほどメイに守られた武闘家。
足をつかむなら、地面が割れる。
その瞬間に跳んで隙を作るのが狙いだ。しかし。
「……違う! 足つかみじゃないっ!」
今回ゴア・ダグランが選んだのは、足元から突然飛び出して斬り掛かる一撃だった。
「【クラックメイカー】!」
「ッ!?」
放つのは、二十五メートルほどの斬撃を生み出す必殺スキル。
しかも正面からではなく、まさかの左方からの攻撃。
描かれる豪快なエフェクトに、息を飲む掲示板組。
すでに溶岩などでHPが減っている状況では、一撃死もあり得る。しかし。
「足つかみではない」という武闘家の早い報告は、レンに『飛び掛かり攻撃』を予期させていた。
「伏せて! 【悪魔の腕】っ!」
武闘家を左方から狙うゴア・ダグランの真横に、現れた魔法陣。
伸び出した剛腕は、ギリギリでその身体を横から弾き飛ばした。
「うまくいった!」
武闘家が伏せたため、一人弾き飛ばされたゴア・ダグランはそのまま地を跳ね転がる。
結果として武闘家は見事なオトリを演じ、生み出した好機。
「ここ、チャンスですっ! 皆さんっ、分断して恐竜を一気に攻撃しましょうっ!」
「了解ィィィィ!!」
メイの声に、最初に反応したのはマウント氏。
「お前たちには薄暗い地下がお似合いだぜ! 【挑発】ゥゥゥゥ!!」
アンキロメイルは、これに怒り心頭。
凄まじい勢いで、マウント氏目がけて走り出す。
「【氷のイバラ】!」
地を駆けるアンキロメイルの足元に、樹氷の魔女が氷結の刃を放って動きを鈍化させれば、続くのはレン。
「【挑発】の使い方、完璧ね! 【滅多打ち】【フレアストライク】【フリーズストライク】【フレアバースト】【フリーズブラスト】!」
放たれる魔法の連打でも、怒りの特攻を止め切ることはできないが、狂った特攻は強みと弱みを重ね持っている。
進攻が一直線ゆえに魔法が避けられず防御もできないため、ダメージはかさむ一方だ。
「使徒長殿っ!」
あがった声は、樹氷の魔女のもの。
足を止めたまま魔法を連射してたレンを狙い、モーゼサウルスが高速で飛来してきていた。
「【三連射】【アイシクルエッジ】!」
放たれた樹氷の魔女の牽制をかわして、狙うは必殺の【喰らいつき】
「【かばう】【不動】【地壁の盾】!」
しかしその進路に割り込んだまもりが、盾を掲げて阻止に入る。
するとこの瞬間を狙って、起き上がったばかりのゴア・ダグランが離れた位置から【マグマ・ストライク】を発射。
斜め後方から迫る溶岩弾は、まもりに見えていない。
「まもりちゃん! 左後方に溶岩っ!」
「【天雲の盾】っ!」
メイの声にまもりは目視を諦め、左手に取った盾をおおよその位置で構えてスキルを発動。
直後、盾にぶつかった溶岩弾が弾けて盛大な飛沫を上げた。
「「「ノールック防御きたぁぁぁぁ!!」」」
右手の盾でモーゼサウルスの【喰らいつき】を止め、左の盾で溶岩弾を止めたまもりに、自然と上がる歓声。
流れは渡さない。
「【シールドバッシュ】!」
すぐさま衝撃波で、モーゼサウルスを吹き飛ばす。
「【影分身】【加速】!」
駆け出す、三体の分身。
ツバメたちはモーゼサウルスに追いつくと、そのまま三角の陣を取る。
そして最後に本人が到着し、ひし形の中央に敵を置いたところで――。
「「「「――――【斬鉄剣】」」」」
わずかな時間差で放たれる、四連続の斬鉄剣。
大きな斬撃の白刃弧が、次々にモーゼサウルスを捉える。
バサバサと吹く風が長い髪を揺らしていたが、ツバメたちが静かに【村雨】を鞘に収め出すと、ピタリと止まる。
そしてカチンと、鞘が音を鳴らすとの同時に、分身たちが霞のように消えていった。
「す、すごいです」
「すごーい!」
まもりが息を飲み、メイが目を見開く。
掲示板組も思わず目を奪われる中、粒子となって消えていくモーゼサウルス。
皆でつないだ流れはまだ、終わらない。