作品タイトル不明
1445.地底の決戦Ⅰ
「我らが――――全ての人間を駆逐する」
地底人ダグラン族の長、ゴア・ダグランは宣言と共に動き出す。
「【ガイアバスター】」
「下がってくださーい!」
地面に一瞬で走るヒビ割れから、突き上がる岩刃の山。
「「「うおおおお――っ!?」」」
いきなりの範囲攻撃をド派手に決めて、まずは挨拶。
すぐに砕けて散っていく岩刃に驚かされるが、メイの早い声掛けで火山探索組も見事に対応した。
「いきなり力を見せつけてきやがったな!」
「まだだ! 来るぞ!」
だが初手での範囲攻撃は、回避されるのも予想済みか。
「【マグマ・ストライク】」
その口から放たれたのは、煌々と輝く球体のマグマ。
速度は速く、掲示板組前衛は無理せず防御態勢を取る。しかし。
「うおっ!?」
盾などを使わない防御では、そのダメージを軽微にしか軽減することができない。
「気を付けろ! 防御さえすれば終わりじゃないぞ!」
さらに飛び散った溶岩の飛沫を浴びても、侮れないダメージとなる。
思わぬ攻撃に、ざわつく掲示板組。
この隙を、ゴア・ダグランは逃さない。
飛び散る溶岩による、どよめきの隙を突く形で接近。
「速いぞっ!」
「【かばう】【地壁の盾】!」
とっさに、防御に割り込むまもり。
「【マシンガンクロー】」
放たれるのは、両爪による超高速の連続刺突。
「っ!」
爪は最速攻撃の二刀流。
恐ろしい速度で叩きつけられる爪の連射が、盾とぶつかり火花を上げる。
驚いたのは、【地壁の盾】の効果が切れた後の『削り』の大きさだ。
このスキルは、喰らい続けると防御をしていても死に戻りにまで追い込まれてしまう。
そのことに気付いたまもりは、隙間を突いてバックステップ。
「【スラッシュクロー】」
その瞬間、即座に放つけん制。
「「っ!」」
大きな斬撃を生み出すタイプの爪攻撃の連打がメイの足を止め、ツバメを止め、掲示板組前衛を急停止させた。
「【ファイアエッジ】!」
「【サンダーボルト】!」
「【風切りの矢】!」
三連続の攻撃で前衛の接近を止めた後は、後衛組の攻撃を【スラッシュクロー】で斬り払う。
「この速度でこの火力、これだけで強敵確定だな……!」
「両手の連続攻撃で、遠距離攻撃も無効化するのかよ!」
メイたちの足を止めたゴア・ダグランは、再び攻勢に入る。
踏み込んだ足は、前衛組の間。
「【スラッシュクロー】」
対象を見つけては振り払う爪の一撃は、付近のプレイヤーたちもまとめてその範囲に含んでしまう。
「「っ!!」」
慌てて防御する騎士と戦士。
必死の回避を見せる忍者と武闘家。
踊るような連続攻撃は、斬撃の嵐を生み出していく。
「この削りもバカにできないぞ!」
「何より反撃の隙がねえっ!」
前衛組の分布を見ながら進める足は、必ず一度に複数人を巻き込む攻撃へとつながる。
「くっ!」
「この威力の攻撃を、こんだけ連続できるのかっ!」
そのため続く怒涛の攻勢に、すっかり防戦一方だ。
「どうした人間ども? もっと兵として役に立てると示してみせろ! 【マグマ・ストライク】!」
「「「っ!?」」」
いきなり目前へ迫ってきたかと思うと、攻撃方法を変更。
放たれた溶岩弾は、盾などを使わない防御では大きなダメージを受けることになる。
「【かばう】【天雲の盾】! 【魔神の大剣】!」
「っ!」
飛び散る溶岩の飛沫。
全力で振り下ろしたまもりの剣を、ゴア・ダグランは大きく下がって回避する。
この瞬間を狙って、動き出すのはメイたちだ。
「【バンビステップ】!」
柔軟かつ速い足の運びで、一気に距離を詰める。
「【スラッシュクロー】」
即座に横の払いで応戦すると、メイはなんと斬撃の隙間を【アクロバット】で潜って着地。
続く縦の斬撃を、横っ飛びで回避する。
同時に動き出していたスライムにも、続けて【スラッシュクロー】で対応。
これを縦長になり、平べったくなることでかわせば――。
「【加速】【リブースト】!」
そこに突っ込んでいくのはツバメだ。
「【スライディング】【回転跳躍】!」
払いの一撃を地を滑ってかわし、そのまま頭上へと跳躍。
「【アクアエッジ】【四連剣舞】!」
頭上を通り抜けながら放たれる水刃。
三人での接近を止めることは、このレベルのボスでも難しい。
どうにか肩口を二度斬られるに留めたゴア・ダグランは、慌てて下がる。
「【アイスエッジ】!」
「【超高速魔法】【フリーズボルト】!」
そこに飛来速度の違う氷弾が別角度から迫り、さらに腕を斬っていった。
ダメージを受けはしたが、危機を少ない被弾で切り抜けたゴア・ダグラン。
すぐさま強烈な反撃を開始する。
「【クラックメイカー】!」
「範囲が、長い……っ!」
二十五メートルほどの斬撃エフェクトが、天井から足元へ向かって斜めに放たれる。
大慌てでの回避。
刻み込まれた深過ぎる傷に、思わず皆息を飲む。
「あ、危なかったです……!」
その一撃は先頭のまもりが受け止めていなければ、後衛の多くが一撃で窮地に追い込まれていただろう。
同時に、直撃を受けてもいないのにもう2割以上HPを削られていることに驚く。
「ククク、まだまだこちらは準備運動だ。この程度で終わってくれるなよ」
静かに腕を開き、爪を閃かせてみせる族長ゴア・ダグラン。
「速度と火力で一気に攻める。その勢いに飲まれれば瞬殺されてしまうタイプの敵ですね」
「それなら……っ!」
その強さを見せつけた、悪しき地底人たちの長。
メイの言葉一つで、ツバメとスライムが横に並ぶ。
「行きます! 【装備変更】【バンビステップ】!」
メイは頭装備を【鹿角】に変えて、ゴア・ダグランに接近。
「【スラッシュクロー】」
放たれる左手による爪斬撃の隙間を、メイは角を付けているにもかかわらず普通にすり抜ける。
「【飛び跳ね】ぽよっ!」
続けざまに右手による一撃を放たせて、スライムも跳ねることでこれを回避。
「【三連射】【アイスエッジ】!」
「高速【連続魔法】【誘導弾】【フレアアロー】!」
すると後衛の両翼から、時間差の魔法攻撃が放たれた。
ゴア・ダグランは【スラッシュクロー】でレンの炎矢を斬り、樹氷の魔女の氷刃をかわす。
「【加速】【リブースト】【回転跳躍】!」
完全に回避態勢に入っていたゴア・ダグラン。
特攻してきたツバメに対して大きく爪を引くが、それは頭上をそのまま飛んでいくオトリの行動。
思いっきり、注意を取られる形になった。
「【アクアストライク】!」
「【炸裂の矢】!」
そこに攻撃をかけるのは掲示板組。
まずは後衛組の攻撃でダメージを与えたところで、続くのは前衛組だ。
「【雷光正拳突き】!」
「【下弦烈刀】!」
見事に攻撃が決まったところで、さらに道を開く。
「【バンビステップ】!」
「【飛び跳ね】!」
そこに再び駆け込んできたのは、メイとスライム。
「【フルスイング】!」
大きな振り払いを、ゴア・ダグランは必死のバックステップでスレスレの回避。
しかしメイは背中を見せるようにして、そのまま回転。
「【材質変化・鋼】【可変・大槍】!」
「【裸足の女神】!」
その姿を破城槌のような槍に変えたスライムを両手持ちして加速し、猛烈な突きを放つ。
「【クローディフェンス】!」
これを硬質な爪で、どうにか受けたゴア・ダグラン。
「まだまだっぽよ! 【連続可変】【可変・剣】!」
「おおっ!」
メイはさらに踏み込み一回転。
新スキルによって連続で姿を変え、剣の形になったスライムで豪快な振り降ろしを放つ。
「【クローディフェンス】!」
だがゴア・ダグランも、続けざまに防御を成功させる。
それは見事な対応だった。しかし。
「まだまだまだぽよーっ! 【連続可変】【可変・大槌】ぽよーっ!」
メイはさらに踏み込み、もう一回転。
スライムが三連続の変身で姿を変えた、大型ハンマーを握る。
「【フルスイング】だああああ――――っ!!」
まさかの三連続回転攻撃。
巨大なハンマーになったスライムを、そのまま全力で振り払う。
「なにィッ!?」
オブジェクト扱いとはいえ容赦のない重撃は、ゴア・ダグランを問答無用で弾き飛ばす。
猛烈な勢いで砂煙を上げた地底の王は、そのまま壁にめり込むほどの勢いで激突した。
「スライムちゃん、ないすーっ!」
「決まったぽよ!」
メイは元の姿に戻ったスライムを、誇らしげに掲げてみせる。
「悪いけど、全力を出してないのはこっちも同じなの」
「そういうことだ」
レンに続いて、余裕の笑みを見せる樹氷の魔女。
「……ほう。ならば狙い通りクイーンアントは使えそうだな。貴様たちが兵になれば、地上の掌握は早くなりそうだ」
メイたちは先ほど直撃まで行かなかった連携を、今度はしっかりと決めてみせた。
それでもゴア・ダグランは、冷静に状況を分析。
「――――来い、古き世界の支配者たちよ」
その手を掲げて、魔法陣を展開する。
「地下世界には、木々の生える場所もある。そしてそこには、地上で絶命したとされている種も生存する」
そして二体の古代生物を、手下として召喚した。
「さあ、兵役試験を続けよう。お前たち人間は……どこまで耐えられるかな?」