軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1444.族長と大噴火

「これで敵の攻勢は止まったわね!」

「それでは、大噴火を止めに行きましょうっ!」

「「「「おおーっ!!」」」」

メイの掛け声に、大きく上がる歓声。

遺跡のような地下街の中央に置かれた、噴火用の魔宝石を伴う儀式場。

ダグラン族の厚い防衛線を突破した一団は、族長の降りていった階段を下っていく。

レンは装備を整えながら、肩のパラス・アテネの頭を撫でる。

包帯と眼帯を付けたレンが使い魔のフクロウの頭を撫でるという最高の景色を、もちろん樹氷の魔女はうれしそうにのぞき見る。

「使い魔も良いな……」

自分だけでなく、別の個体にも指示しながら戦うというのは意外と簡単ではない。

どちらかの回避が疎かになったり、攻撃が緩慢になることもしばしば。

そのため思ったよりは多くはない、使い魔の利用者。

だがレンが使っているとなれば、話は別だ。

同じフクロウ類にすれば、そこから話題が生まれるかもしれない。

そんなことを考えて、うっかり頬を緩める樹氷の魔女。

「いよいよだね!」

「いよいよぽよーっ!」

跳ねるように進むメイと跳ねるスライムの姿に、自然とツバメの足取りも勢いづく。

長く狭い道を進むと、その先にあったのは紋様によって飾られた最後の渡り廊下。

「この先にボスがいる時の特有演出は、何度見てもドキドキするよな」

「今回はメイちゃんたちと一緒だから、ワクワクもすごいけどね」

RPG定番のボス前ストロークは、実際に歩いてみるとたまらない。

たどり着いた最奥の壁に刻まれた紋様に触れると、まばゆい輝きが走り出し、分厚い岩の扉がゆっくりと開いていく。

「き、来ましたね」

「ここが決戦の場ですか」

その先には全面に巨大な魔法陣が刻まれた、大きな空洞が広がっていた。

壮大な魔法を動かすための回路のような紋様が、天井から足元までびっしりと描かれ、中心の魔法陣へと集合している。

自然現象を手繰るための魔法装置が生み出す、圧巻の光景だ。

何重にも張られた魔法陣の中心には、クエスト用の噴火を起こしていた魔宝石を、はるかに上回る巨大な赤い宝石塊が刺さっていた。

灯した輝きは、危険を感じさせる嫌な赤色。

まだぼんやりとした光り方を見るに、完全起動まではもう少しといったところか。

どうやらここでも、時間に制限がありそうだ。

「……ほう、ここまでたどり着くか」

増援含めて、数百に迫ろうかという仲間たちの打倒。

それでもダグラン族の族長は、慌てることもなくゆっくりと振り返る。

「どうやらアリ共を片づけてやってきたというのも、単なる偶然ではなさそうだ。人間にしてはよくやる」

そして、無数の魔法陣とつながった巨大魔法石に触れる。

「だが先ほど、大噴火の魔法回路を起動したところだ。こいつを止めるにはもう、この私を倒すしかない」

見せるのは、思わずゾッとするような邪な笑み。

「さもなくば……アイアスラントは溶岩に飲み込まれ、死の島となる」

島の動物や人間はもちろん、同胞の命ですら何とも思っていない狂気を感じさせる。

言葉は通じても、常識は通じない恐ろしさと残酷さが、確かにそこにある。

「このまま溶岩の噴出によって島の文明を消し、乗っ取った後は世界の各大陸で大規模な噴火を起こして大量のアリを派遣。クイーンに狂わせた人間の兵たちを用いて、地上を弱らせる……そして、地下から世界を掌握する」

「そんなこと、させませんっ!」

「やはり、その前に掃除が必要なようだな」

恐ろしい野望を語った族長は、その鋭く白い眼をメイに向けた。

「さあ来い人間たちよ! 我が名は族長ゴア・ダグラン! 地下を統べる我らは、新たな地上の覇者として世界に君臨する!」

「そうはいきません」

「や、約束もありますから」

「そういうこと。悪いけど、帰ってオーロラ見ながら温泉に入る予約がしてあるの」

「「「なにっ!?」」」

そんなレンの言葉に反応したのは、もちろん掲示板組。

「そんな話を聞いてしまったら、なおさら負けるわけにはいかないぽよっ!」

「メイちゃんとオーロラが見られる温泉行ったけど、何か質問ある? 最高だな!」

「今の発言で僕たちの勝率は、大きく上昇しました」

「忘れるな。我らが使徒長と共にある限り、敗北は常にお前たちと共にある」

構える掲示板組の面々を前に、族長ゴア・ダグランが笑う。

それに合わせて、この空間に描かれた魔法陣とそこにつながる『配線』たちがゆっくりと輝き出す。

響く重たい音と揺れは、魔法によって活性化させられている火山の動き。

終わりに向かう胎動だ。

「さあ来るがいい人間たちよ! 新たな世界の覇者が持つ力を、その身に刻み込んでやろう! これから始まる我ら地底人による支配。世界の行く末に恐怖しながら息絶えるがいい! 全ての人間を――――我らが駆逐する!」

確かに感じる、大地の鳴動。

最北の島の底に隠されていた世界の危機を、覆すための戦い。

それは人知れず、深い地の底で始まった。