軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1426.火山の国アイアスラントへ!

アイアスラントはブリテンの北西、ウェーデンの西に位置する島だ。

高原地帯の続くこの土地の特徴は、雪と氷河と火山。

中でも稀に起きる火山の噴火は大きなもので、この島のクエストの目玉となっている。

「わあーっ! この湖が全部温泉なのーっ!?」

ブリテンからポータルでやって来たメイは、その光景に思わず歓喜の声をあげた。

三角屋根の、明るい色使いの家が多く見られる雪の街。

高原へと続く一角には、湯気をあげる小さな湖がある。

『コバルトラグーン』と呼ばれる通り、その湯は淡いコバルトブルーで透き通ってはいない。

しかし、温かい。

「綺麗ねぇ」

「本当ですね。日本の温泉地とはまた違う良さがあります」

思わずその光景を眺める四人。

温泉システムはすでに、完成レベルに達している。

浅い湖が丸々温泉になっていて、装備品のまま突っ込んでも温かくて心地よいという変わった構成が、アイアスラントの特徴だ。

「ああー」

息をつきながら、【タオル】を兜の上に乗せる騎士が見える。

重装備のまま湯に浸かっている光景はとても面白いが、それが普通になってしまっている。

それはアイアスラントにはこのような場所が、そこら中にあるからだ。

「せっかくですし、浸かってみたいですね」

「いいと思いますっ!」

メイたちはここで装備品を外し、インナー姿に変更。

やはり装備品を付けたまま風呂に入るという、プロの感覚を楽しむのはまだ難しい。

猫耳メイのインナー姿という野生少女感に、思わずにっこりしながらの入湯。

踏み込んでみると、その足に溶けた粘土のような感覚がした。

「あったかーい」

「気持ち良いですね」

ヒヨコを頭に乗せたツバメが、息をつく。

そのまま四人は少し進んで、湯に浸かってみる。

「京の時もそうだったけど、温泉システムも画期的よねぇ」

「はいー」

思わず溶けそうになってしまう感覚。

並んで、大きく息をつく。

「そうだ! いーちゃん! りーちゃん!」

ここでも使い魔などの呼び出しは可能。

現れたいーちゃんはすぐにだらしなく伸びると、そのままプカプカと流れていく。

対してりーちゃんは鼻から上だけ出る高さで、ワニのようだ。

「あははははっ」

どうやらその個体によって楽しみ方が違うようで、メイが楽しそうに笑う。

一方パラス・アテネはレンの肩に留まっていたが、やがて石で作られた縁の部分で水浴びを始めた。

ぱちゃぱちゃと羽を洗うような動作は可愛らしく、ここでも動物たちの癒し効果は絶大だ。

「いいところだねぇ」

「本当ねぇ」

使い魔たちも、完全にくつろいでいる。そんな中。

「ん?」

まもりの肩に、何かがぶつかって振り返る。

振り返るとそこには、いーちゃんに負けないくらいだらしなく伸びた少女の姿。

どうやら浮かんでいたら、ここまで流れ着いてきたようだ。

「あっ、ごめんなさい」

「い、いえっ」

綺麗な長い黒髪を、マイペースにふわふわさせていた少女。

不意に、思いついたかのように視線を向けてきた。

「あれ……っ? もしかして、五月晴れの……?」

「は、はひっ」

まもりが答えた瞬間、少女は慌てて起き上がった。

「うえええっ!? 本当だ! みんな一緒にいるぅぅぅぅ――――っ!?」

そしてメイたちの姿も確認して、驚きの声を上げた。

「五月晴れがついに、アイアスラントに来てくれたのーっ!?」

どうやらアイアスラントが好きで、ここを拠点にしているプレイヤーのようだ。

「アイアスラントは本当にいいところなのっ! あ、あの子を見てっ!」

指差した先にいたのは、真っ白なキツネたち。

このマップ以外ではめったに見られない北極キツネは、メイを見つけて駆け寄って来た。

さっそくメイとレンが撫でに行く。

「ふわふわだーっ」

するとそんなメイの声に気づいたのか、アザラシがバインバインしながらやって来る。

「街の中にも、普通に入ってくるのね」

ペチペチとその身体を鳴らすと、厚い脂肪を誇るように伸びてみせる。

その姿が面白くて、くすくすと笑うレン。

ここでさらに、羊飼いの連れた子羊たちがメイに惹かれてトコトコとやって来た。

「……最高の光景です」

全体マップ最北部に当たる街で、温泉と共に可愛い動物たちが見られるというのは、何とも魅力的だ。

「あっ、実は私、ハウジングで雪渓を見られる温泉を作ってて、一面の雪と温泉の雰囲気がすっごく良いの……!」

「それは、とても良いですね」

「さらにそこからは……オーロラも眺められるのっ!」

「「「「っ!!」」」」

まさかの情報に、驚きメイたち。

現実ではなかなか思うように見させてもらえないオーロラが見られるというのは、あまりに魅力的だ。

しかもそれを温泉に浸かりながら楽しめるというのは、この世界ならではだろう。

「それは見に行ってみたいね!」

「あ、あの……いつでも遊びに来てっ!」

「いいのーっ!?」

「おいしいホットドッグとクリーミーなヨーグルトを用意しておくからっ! せっかく作ったんだけど……その、人を呼ぶ方法がなくて……」

「分かります! 良いネタを思いついても、それを見てくれる人に当てがない……とてもよく分かりますっ!」

ツバメは過去を思い出し、ブンブンとうなずく。

「クエストを達成できたら、遊びに行かせてもらおうよ!」

「それがいいですね」

「ごくり」

「オーロラ、ぜひとも見たいものね」

「はい! ぜひっ! お待ちしてますっ!」

うれしそうにうなずく少女と、そんな約束を結んだ五月晴れの四人。

「火山のクエストが面白いって聞いて来てみたんだけど、思わぬ魅力を発見できたわね」

「アイアスラントには、どんなクエストがあるのでしょうか」

ツバメの疑問に、少女が反応する。

「最近は、突然暴れ出す人を止めるっていうクエストが出てきたかも……簡単だけど、なぜ急に狂うのかは分からないっていう『細かいことは良いんだよ!』なクエストかな」

「初級者向けの街には似たようなクエストがあったわね。お酒を飲むと暴れちゃうNPC冒険者に、お仕置きするみたいな」

「その理由付けが、しっかりしていないバージョンですか」

「アイアスラントが好きな人たちの間では、【ブレニヴィン】という名産の蒸留酒の影響だろうって話をしてます……!」

「やっぱりお酒なのね」

「あとはやっぱり、バザールブンガ火山のクエストかな」

「なんだか、すごい名前ですね」

「どんなクエストなんですかっ?」

「昔ながらのアクションゲームのような、せり上がる溶岩から逃げながら宝を持ち出せるかといったチャレンジがあるの。とにかく地下に降りていって、そこから登る形のクエスト」

「……なるほどね」

容赦のない即死アクションならではの緊張感を思い出して、レンはちょっとワクワクする。

煌々と輝く溶岩がせり上がってくるあの圧迫感は、他になかなかないものだ。

「難易度もいろいろ違うけど、楽しいと思う……! まだ達成されていない難易度や、見つかっていないルートもあるんじゃないかって言われてて……!」

「おおーっ!」

少女は必死に、アイアスラントの魅力を説明する。

「い、移動が大事なクエストですか……」

「メイとまもりの協力体制は必須ね。その分を私とツバメで戦う感じになるかしら」

「メ、メイさん、いざとなったら私の肩を蹴って跳んでくださいっ!」

「ええっ!? そんなことしないよっ!」

自分を蹴っての二段ジャンプという、とんでもない方法を勧めるまもり。

一方ツバメは、サムズアップした手を上げたまま溶岩に沈んでいく自分を想像してうなずく。

やはりこのクエストのドキドキ感は、同時にワクワクするものもある。

「難易度はともかく、まずは行ってみましょうか」

「いいと思いますっ!」

「ド、ドキドキしてきましたっ」

「そういうことなら、クエスト受注のところまで案内するよ……そのっ、少し分かりにくい道になってるから……」

「よろしくおねがいしますっ!」

大きくうなずいてみせた少女と共に、メイたちはさっそく歩き出す。

「……なるほど。次のメイちゃんたちの行き先は、バザールブンガ火山ですか」

そんな四人と少女と見送りながら、ザバー! と湯の中から立ち上がった一人のお姉さん。

彼女はさっそく、掲示板にその動きを知らせに動くのだった。